暦の上での月の名前と言えば
睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走
という呼び方が一般的に良く知られていますが
実はこれ以外にも
月の異名って沢山あるんですよ。
たとえば、1月をとってみましても
睦月の他に、祝月(いわいづき)とか歳初とか、その他にも正月、屠蘇などなど……
一つの月の別名が
和風の物や中国風の物を合わせると
何十個もあったりするんです。
そこで
今回はその中でも
「この呼び方って素敵!」
と私が感じた
月の異名を3つずつセレクトしてご紹介いたします。
※ここにある月名は陰暦(旧暦)に対応しているので
1月は今の2〜3月ごろ
2月は今の3〜4月ごろ
と
現代の感覚からすると1~2か月分
季節を先取りする感じになっています。
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1月(睦月)
初春月(はつはるつき)
祝月(いわいづき)
太郎月(たろうづき)
お正月にみんなで集まって睦み合うので「睦月」です。
「初春月」「祝月」という呼び名も新年おめでたい!って感じがしますねえ。
1月は12か月の長男坊という事で「太郎月」なんていう名前もつけられています。
ちなみに
「弟月」(おとづき)は12月の異名になっております。
2月(如月)
梅月(うめづき)
梅見月(うめみづき)
初花月(はつはなつき)
梅の花がちらほら咲きはじめる2月には「梅月」「梅見月」という名がつけられています。
とはいえ
まだまだ寒いのがこの時期。
たくさん重ね着しないと耐えられない!
という事で
衣を上から更に着る「衣更着」(きぬさらぎ)が変化して
「きさらぎ」になったんだそうですよ。
「初花月」は2月の異名になっていますが
1月の異名として使われる事もあります。
3月(弥生)
雛月(ひいなつき)
夢見月(ゆめみつき)
桜月(さくらづき)
草や木の芽がいよいよ生い茂りはじめる「弥生」は、お雛祭りの「雛月」(ひいなつき)
3月には、桜の花咲く「桜月」という呼び名もあります。
桜の花には
「夢のように儚く咲く美しい花」
という意味合いから
「夢見草」(ゆめみぐさ)という別名もあるそうですよ。
そのため3月は
「夢見月」というロマンチックな名前で呼ばれる事もあります。
4月(卯月)
卯花月(うのはなづき)
鳥待月(とりまちづき)
花残月(はなのこりづき)
桜の花の散り残る「花残月」(はなのこりつき)
昔の4月はもう初夏でした。
卯の花というのはウツギのこと。
清楚で爽やかなウツギの白い花は、昔から初夏の代名詞とされてきました。
「鳥待月」(とりまちづき)という名で待たれている鳥は
夏の訪れとともに
「キョッキョッ、キョキョキョ」
という初鳴きを響かせるホトトギスでしょうか。
5月(皐月)
菖蒲月(あやめづき)
早苗月(さなえづき)
五月雨月(さみだれづき)
菖蒲の花咲く
「菖蒲月」(あやめづき)──
「さつき」という呼び名は
田植えの時期である「早苗月(さなえづき)」が短縮された形だと言われています。
旧暦の5月は今の6月〜7月にあたるので
「五月雨」(さみだれ)というのは「梅雨」の事。
ですから
「五月晴れ」というのは本来
「梅雨の晴れ間」という意味でした。
でも、 新暦の5月は新緑の清々しい爽やかな季節なんですよねえ~……。
なので
現在では「五月晴れ」を
「5月のすがすがしい晴れ」の意味で使うのもアリ!
という事になっています。
6月(水無月)
風待月(かぜまちづき)
涼暮月(すずくれつき)
鳴雷月(なるかみつき)
「みなづき」の「な」は「の」という意味なので
「水無月」は水が無い月という事ではなく
田んぼに水を張る「水の月」を表わしてます。
夏になり、暑くなってきて、風が吹いてきてほしいから「風待月」(かぜまちづき)という名前もあります。
「風待月」って素敵な名前ですよねえ……。
真っ青な夏の空の下に翻る、真っ白いヨットの帆を思い浮かべてしまいます。
「涼暮月」(すずくれつき)という呼び名もロマンチックですねえ。
ゴロゴロと雷雨の多い「鳴雷月」(なるかみつき)の
雨上がりに涼しい夜風が吹いているような感じですね。
6月って、格別カッコイイ異名に恵まれてる気がします。
7月(文月)
七夕月(たなばたづき)
七夜月(ななよづき)
女郎花月(おみなえしづき)
7月と言えばやっぱり七夕。
7月には「七夕月」(たなばたづき)「七夜月」(ななよづき)という名前が付けられています。
「文月」の由来には
七夕の短冊に文字を書き、字や文章の上達を願ったから
という説や
稲穂が膨らんで来る「穂含月(ほふみづき)」が「ふみづき」に転じた
という説があります。
「女郎花月」(おみなえしづき)の異名もありますが
オミナエシの花が咲くのは6月〜10月。
見頃は9月の初秋頃となっております。
(秋の七草に数えられています)
8月(葉月)
紅染月(べにそめつき)
唐月(もろこしつき)
秋風月(あきかぜつき)
8月が「葉月」と呼ばれるのは
秋になり、木々の葉が落ち始めるからだそうです。
秋風が吹き始める頃ということで
「秋風月」(あきかぜつき)という名がつけられています。
でも、今の8月から「葉月」をイメージしたら
緑の濃い、真夏の鬱蒼とした葉っぱを思い浮かべちゃいますよねえ……。
(そこから降り注ぐ蝉しぐれ、とか)
「紅染月」(べにそめつき)というのも本来は
木々が紅葉し始めるから……という事なのですが
真夏の8月だと、ちょっと違う物を想像したくなってしまいますねぇ……。
(夜空を鮮やかに彩る赤い花火とか、イチゴ味のかき氷で真っ赤になった舌だとか……)
「もろこしづき」は「唐月」以外に「諸越月」とも書くらしいのですが
この呼び名の由来は不明となっています。
今の8月の感覚からすると
夜祭の屋台で買った、焼きトウモロコシなんかを想像しちゃいますよね。
(絶対にそんな由来ではないでしょうけど)
9月(長月)
色どり月(いろどりつき)
杪秋(こずえのあき)
寝覚月(ねざめつき)
「長月」は「夜長月」が転じたものだと言われています。
夜が長~くなったために、途中で寝覚めてしまいがちになるから「寝覚月」(ねざめつき)なんだそうです。
太陽が落ちると寝る生活……
(起床に関しては、平安貴族は朝の3時頃だったらしいですよ)
途中で寝覚めるくらい夜が長いって
さすがに睡眠時間を長く取りすぎているような気がするのですが……。
(逆に春は寝不足になりそう)
「色どり月」とか「杪秋」(こずえのあき)って良いですねぇ。
色の変わり始めた高原の木々や、涼しい秋風に揺れている秋の花々が思い浮かぶような気がします。
10月(神無月)
時雨月(しぐれづき)
紅葉月(もみじのつき)
初霜月(はつしもづき)
降ったりやんだりする晩秋の雨──
10月は時雨月(しぐれつき)と呼ばれています。
昔のこの時期はもう冬の入り口なので
初霜月(はつしもづき)という名もあります。
「神無月」の「無」は「水無月」の「無」と同じく「の」という意味なので
「神無月」は本来「神の月」という意味になります。
ところが
「神無月」という表記を受けて
全国の神様が出雲大社に出張して会議をするから、地元から神様がいなくなる
という説が生まれました。
そこで
島根県の出雲地方だけでは
10月を「神在り月」と呼んでいたりもするんだそうですよ。
「もみじのつき」と読む「紅葉月」は
9月の事を言うときもあります。
11月(霜月)
神楽月(かぐらづき)
露こもりの葉月(つゆこもりのはづき)
雪待月(ゆきまちづき)
寒くなり、霜が降りるので霜月です。
旧暦のこの時期は神楽が盛んにおこなわれる月だったので
「神楽月」(かぐらづき)という名前がつけられました。
露が凍って霜となり、姿を消してしまうということから
「露こもりの葉月」(つゆこもりのはづき)という呼び名も付けられています。
「雪待月」(ゆきまちづき)という呼び方も
雪を心待ちにしている子供たちの心象みたいで
なんだか可愛らしい感じがしますね。
12月(師走)
暮来月(くれこつき)
三冬月(みふゆつき)
春待月(はるまちつき)
暮れも押し迫った暮来月(くれこつき)12月。
「しわす」の語源には色々な説があり、未だ明らかにはなっていないのですが
「年が終わったよ」という意味の「とし果つ」が転じたという説や
「やり終えたよ」という意味の「しはつ」が転じたという説
「四季が果てる月」という意味の「四極(しはつ)」が転じたという説
などがあります。
「師走」という字が当てられるようになり
そこから生まれてきたのが
「お坊さん(師)が仏事に駆けまわるほど忙しい」という解釈です。
「三冬月」(みふゆつき)の「三冬」とは
初冬・仲冬・晩冬(陰暦の10・11・12月)のこと。
三番目の冬の月だから「三冬月」なんだそうです。
「春待月」(はるまちつき)という月名も可愛いですねえ。
「~待月」という月名には
可愛いかったり、ロマンチックなイメージがするものが多いですね。
(4月の「鳥待月」6月の「風待月」11月の「雪待月」……)
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