TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

日本文学(近現代)

「富岡日記」~日本の近代製糸業の立ち上げ期に全力で頑張った武家娘お英ちゃんの手記

明治から昭和にかけて 我が国の主要な輸出品であった生糸。 その生産の現場を描いたものといえば、まず思い浮かぶのが 「ああ野麦峠」 などで劣悪な環境下 過酷な労働に従事させられていた若い女工さん達の姿ですが 今回ご紹介いたしますのは 現場がそこまで…

吉報!!吉川英治記念館が2020年9月に再オープンする見通しとなりました!!

(※こちらは2019年12月11日の記事です) 2019年3月20日 多くのファンに惜しまれながら閉館した 吉川英治記念館が このたび青梅市営となって 2020年9月7日(吉川英治の命日)に 再びオープンされる 見通しと なりました!! 東京都青梅市にあるこちらの記念館(旧…

直木三十五「南国太平記」~幕末薩摩藩のお家騒動を描いたダイナミックな群像劇

今回は 戦前の大衆小説の花形作家 直木三十五の代表作 「南国太平記」 のご紹介をいたします。 ------- 内容 時は幕末 舞台は南国薩摩藩。 藩は目下 老藩主島津斉興(なりおき)とその愛室お由羅の方が率いる 保守派 と 40歳になっても家督を譲ってもら…

吉川英治と直木三十五~大衆小説花形作家同士のライバル心と友情!!

今回は 直木三十五と吉川英治の交流 について書こうと思います。 吉川英治の名作 「宮本武蔵」 が生み出されるきっかけには 直木三十五が唱えていた 「武蔵非名人説」 というものがありました。 剣道の歴史について非常に熱心に研究していた直木が 「宮本武…

大衆小説のレジェンド・直木三十五の墓所と旧宅跡をたずねに行きました。

先週末、横浜市内にある 直木三十五の住居跡とお墓のある長昌寺 をたずねてきました。 直木三十五といえば 芥川賞と並ぶ小説界のビッグタイトル 直木賞の由来となっている 戦前の人気小説家であり 私が尊敬している吉川英治とも 同じ大衆小説家同士として 盟…

彼岸花の咲く季節になると、北原白秋の「曼珠沙華」というちょっと怖い詩を思い出します。

彼岸花の美しい季節ですね。 秋のお彼岸の時期(9月半ば過ぎ頃)に咲く事から名づけられた「彼岸花」という名称には 毒草であるために 「これを食べたら彼岸(あの世)に行ってしまう」 ということに由来している ──── と言う説があります。 また この花が水田の…

「滝の白糸」で知られる泉鏡花「義血侠血」について~これは師匠・尾崎紅葉とのコラボ作品と言ってもいいかも~

今回は舞台の方でも有名な「滝の白糸」の原作 泉鏡花の「義血侠血」のご紹介をいたします。 明治27年に読売新聞紙上に掲載されたこの作品は 鏡花が21歳の時の作。 彼はこの前年 師匠である尾崎紅葉の斡旋によって 「冠弥左衛門」を京都日出新聞に連載し、作…

「遠野物語拾遺」から~芸達者な猫が逆上して取り返しがつかないほどブチ切れてしまう話の紹介

「遠野物語」に収めきれなかった話などをまとめて 昭和10年(1935) その続編のような形で出版されたのが 「遠野物語拾遺」です。 伝承の収集に多大な貢献をしてくれていた 協力者の佐々木喜善は その2年前 1933年に46歳の若さで病没してしまっていました。 「…

「遠野物語」の河童のお話~人間の娘と恋愛したり、悪さして村人に捕まったり。

「遠野物語」には幽霊だけではなく 天狗や座敷童、雪女なども語られているのですが 中でも有名なのが 河童の話です。 そこで今回は 「遠野物語」に語られている河童のお話 をご紹介しようと思います。 一般的に思われている河童の顔色は緑色ですが 遠野の河…

「遠野物語」とか「耳嚢」とか読むと幽霊って本当にいるんだろうなあって思います……。

今回は柳田国男(1875-1962)の名著 「遠野物語」と 江戸時代に書かれた巷話集 「耳嚢」とに ちょっと似通った幽霊譚 がありましたので それをご紹介いたします。 まずは「遠野物語」の概略と感想を ─── 民俗学者柳田国男が35歳(明治43年)の時に著したこの説話…

吉川英治「松のや露八」の紹介と感想~幕末期、幕臣から幇間になった武士がいた!

今回は 私が最も尊敬している小説家吉川英治の作品 「松のや露八」のご紹介 をいたします。 昭和9年にサンデー毎日誌上で連載されたこちらの作品 主人公は幕末から明治にかけて生きた 実在の人物となっております。 その人物とは 土肥(どひ)庄二郎(1834-1903…

大学生たちが手作りヨットで日本一周!!「ヤワイヤ号の冒険」のご紹介。

昭和36年6月30日 小さな一艘のヨットが福井県小浜の港を出港し 東へと漕ぎだしていきました ─── そこに乗り込んでいるのは 高校時代の友人達で作った 「冒険クラブ」のメンバーである大学生たち。 それまで主に登山を中心として活動していた彼らは前年の秋 …

谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」の感想~結局の所にゃんこの可愛さにはかなわない!

今回は 谷崎潤一郎が昭和11年に発表した長編小説 「猫と庄造と二人のおんな」 のご紹介をいたします。 ------ あらすじ 人柄は穏やかだが、ボンヤリとしていてほとんど生活能力が無い 荒物屋の一人息子庄造。 彼は前妻の品子を離縁して 従妹の金持ち娘…

新感覚派の感覚には、正直ついていけない部分がある~横光利一「上海」のご紹介。

今回は 大正時代末期から昭和20年代初頭にかけて活躍し 川端康成と共に新感覚派と呼ばれた作家 横光利一の「上海」 のご紹介をいたします。 内容はざっくり言うとこんな感じ。 -------- 時は1925年(大正14年) 舞台は日本や欧米列強の植民地となって…

簡潔で絶妙な文章で恐怖を表現!~「童話ってホントは残酷」という本のご紹介

今回は、文学博士三浦佑之先生監修 「童話ってホントは残酷」という本のご紹介をいたします。 グリム童話などを始めとして 「童話って本当はこんなに怖い話だったんだよ~」 というような事を紹介した本や漫画は 現在、いろんな出版社からわんさか出版されて…

島崎藤村の詩にうっとり

せわしない日々を送りながら 心が 「ふっ」 と、安らぎを求めるとき。 そんな時には 島崎藤村の詩をおすすめします。 まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり 「初恋」 「破戒」「夜明け前」などを書いた小説家…

難解?わけわからん? 泉鏡花について

今回は 明治時代後期から昭和の初期にかけて活躍し 幽玄華麗かつ いささか狂気な作風で今なお非常に人気の高い作家 泉鏡花(1873-1939) について語らせていただきます。 私が鏡花作品を読み始めたきっかけは 敬愛する吉川英治先生が 「忘れ残りの記」という自…

パイロット作家・内田幹樹さん

今回はパイロット小説家 内田幹樹さんのご紹介をいたします。 内田さんはANAでボーイング747-400の機長をされていたのですが 教官として下地島に赴任していた時に長編航空サスペンス小説 「パイロット・イン・コマンド」を書き上げ 1997年、作家デビュー…

心理描写の鬼神!尾崎紅葉について

今回は、私の好きな作家 尾崎紅葉について語らせていただきます。 尾崎紅葉と言えば かの有名な明治時代の大ベストセラー小説 「金色夜叉」の作者であり 文豪・泉鏡花が終生崇拝し続けていた お師匠様でもある人です。 幸田露伴と並んで 「紅露時代」と呼ば…

国民的大作家 吉川英治のもの凄さ

小説などを書いている人の中には 「心の師匠」のような先輩作家を胸に抱いている人は、結構多いんじゃないかな と思いますが 私が師と仰ぐお方は 国民的大作家吉川英治です。 芥川龍之介、谷崎潤一郎、太宰治などの純文学作家や 松本清張、司馬遼太郎、江戸…