今回はパイロット小説家
内田幹樹さんのご紹介をいたします。
内田さんはANAでボーイング747-400の機長をされていたのですが
教官として下地島に赴任していた時に長編航空サスペンス小説
「パイロット・イン・コマンド」を書き上げ
1997年、作家デビューをされました。
パイロットでありながら作家!!
「星の王子様」で有名なサン・テグジュペリを始め
そういう方はチラホラとはいらっしゃいますけれど
パイロットという仕事の人並外れた大変さを思うと
私なんかからしたら
スーパーマンのように見えてしまいます。(◎_◎;)
しかも
小説もエッセイも
ものすごく面白いんですよ!!
プロフェッショナルな人がその視点から描く
まさに
その人でしか描けない世界!
実際にコックピットに座って操縦するパイロットでなければ、絶対に描けないような、技術面、心理面の描写が山盛りてんこもりですから
飛行機好きな人にはたまらないものがあるんじゃないかと思います。
ロンドンからの帰国便でエンジンが炎上し、二人の機長が相次いで倒れてしまったために、副操縦士とCAが悪戦苦闘する
「パイロット・イン・コマンド」
麻薬密輸組織の男たちによって下地島の訓練機がハイジャックされてしまう
「機体消失」
───などなど
内田さんの航空小説はどれも迫真のリアリティで読み応え十分なのですが
その中で唯一、ちょっと毛色の違うこちら
「査察機長」が私は一番好きです。
パイロットは二、三ヵ月に一回は何らかのチェックを受けている。それをパスした者だけが空を飛ぶ資格を持つ。チェックは航空事故の人的要因を除くための、重要なハードルの一つと言われている。
「査察機長」より
半年ごとの航空身体検査や技能審査などをクリアし続けなければいけない、機長という仕事ですが
この小説の主題になっているのは、その中でも
一年ごとに行われるという路線審査です。
ミスをすれば機長資格をはく奪され
副操縦士に降格させられかねない
という、このチェック。
受けるのは
この間機長になったばかりの村井機長
そして彼をチェックするのは
鋭すぎるとか冷血だとかと
若手パイロット達みんなから恐れられている氏原機長。
チェッカーが氏原機長だと聞かされた時から
村井機長は
プレッシャーで
ガッチガチに緊張しまくりです。
同乗する大ベテランの大隅機長が、お父さんのような優しい眼差しでぎこちない二人を見守る中
飛行機は成田からニューヨークへと飛んでいきます。
コックピットの中という特殊な環境下で展開される物語ですが
交錯するお互いの心情、それぞれが持つプロとしての職業意識などには、普遍的に訴えてくるものがあります。
読み終えた後には心がじんわり暖かくなり
もう一度このメンバーでフライトしたい!
と思うようなお話でした。(^_^)
また
内田さんはエッセイも出しておられます。
こちらの「機長からアナウンス」が大ヒットしたのち
その第二弾として
「機長からアナウンス 第2便」
パイロットとCAとのコミュニケーションって実際のところどうなの?
とか
などの気になる話題が
小説とは一味違う、リラックスした気さくな語り口で語られています。
中でも
私が一番衝撃を受けたのはこのくだり───
よく「UFOを見たことがありますか」と聞かれる。
これを未確認無飛行物体を見たか、と理解すれば、じつは多くのパイロットは見ているんじゃないかと思う。
ただ、「見た」「見た」とあんまり騒ぐと、チェックのときに眼科か精神科……で引っかかりそうでみんな黙っているのかもしれない。
僕自身は、二度ほど見たことがある。
中略
ほかにも紀伊半島の上空を並んで飛んだとか、瀬戸内海でよく見るとか、いくつかの話を聞いたが、パイロット同士であまりこのような話題は出ない。言ったところで結論が出る問題でもない、という感覚なのだろう。
でも、「俺はUFOを信じない。あれはきっとなにかの物理現象だ」という気持ちよりも「なんかあるよね」と考えるパイロットは、少なくないと思う。
「機長からアナウンス」より
UFOを見ているパイロットは
実は多いという
衝撃の事実!!
私自身は
UFOは未来から過去を見物しに来た旅行者なんじゃないか……?
なんて思っているのですが
本当の所、あれは一体、何なのでしょうね???
───さて
このように数々の小説やエッセイをお書きになっていた内田さんなのですが
実は2006年に
64歳の若さでお亡くなりになっています……。
残念ながら「査察機長」以後の新作を読むことは、もう叶いませんが
ページを開けば今なお
ダンディな内田機長が、どこかの大空を飛び続けているような……
そんな気がします───
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