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戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「戦国策」~乱世を泳ぐ縦横家たちの口八丁手八丁!(蘇秦の合従策VS張儀の連衡策)

中国前漢 成帝の時代(BC33~BC7)

学者の劉向(りゅうきょう)が帝の命を受けて編纂した多くの歴史書の中の一つに

「戦国策」(全33巻)

があります。

 

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ここに描かれているのは

戦国時代

 

紀元前403年

大国であったが家老達の下克上によって

魏、趙、韓の三国(三晋)に分かれてから

 

戦国七雄と言われる

斉、燕、楚、魏、韓、趙、秦

抗争時代に突入し

 

紀元前221年

始皇帝(成王)によって

全土統一されるまで

二世紀たらずの期間です。

 

弱肉強食、権謀術数

疑心暗鬼、盛者必衰

 

ごく些細な判断ミスが

地獄への片道切符となりかねないこの時代。

 

生き残りに必死な各国に対し

 

「お任せください!」

と名乗りを上げたのが

 

口八丁手八丁

いずれも説得上手な策士たち。

 

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この「戦国策」には

現代で言うコンサルタントのような彼ら

縦横家(じゅうおうか)達が

 

外交を舞台として知略を巡らせ

時に豪胆に

時に腹黒く

活躍する姿が生き生きと描かれています。

 

 

PHP文庫から出ている

「中国古典百言百話」シリーズのこちらは

 

その長大な歴史書

キモとなるような

百の言葉、百のエピソードを紹介した

濃縮還元サプリメントのような本です。(おすすめ!)

 

 

今回はこの「戦国策」から

蘇秦張儀という

二人の有名な縦横家にまつわるエピソードをご紹介いたします。

 

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西の強国の恵王に対して

 

「諸国と個別に同盟を組んで彼らの仲を裂き、しかる後に一国ずつ撃破していきましょう!」

 

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十数回も上申書を出し
そう訴えたものの

 

まるっきり相手にしてもらえなかった

蘇秦(そしん)

 

お金も尽きてしまった彼は

着ていた服はボロボロに擦り切れ

書物を背負いながら

見るからに貧相になって故郷に帰っていきました。

 

しかし

 

我が家に帰った彼はそこで

家族からひどく冷たいあしらいを受けてしまいます。

 

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妻は織機から離れず、兄嫁はご飯の支度をしてくれず、父母はこえもかけない。

 

「妻は我を以て夫と為さず

嫂(兄嫁)は我を以て叔(義弟)と為さず

父母は我を以て子と為さず。

是れ皆

秦の罪なり!

(妻は俺を夫と見なさない、兄嫁も義弟と思っちゃくれない、父母すら俺を我が子扱いしてくれない──それもこれもみんな秦のせいだ!!)

 

あまりと言えばあまりの悔しさに蘇秦

発奮して猛勉強!

猛烈な勢いで書物を読みまくりました。

 

眠気を催せば錐で自分の股を刺し

「太公陰符之謀」

という書を暗唱して、その精髄を研究し

説得術を身に着け

 

一年間の寝食を忘れた精進の果て

ついに

「これで行ける!」

という策を編み出します。

 

 

そうして彼は

再び旅に出たのです。

 

まず接触

ついで

趙王に華屋山のふもとで会って

 

「諸国で連合して強国秦に対抗しましょう!」

 

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───と

合従(がっしょうさく)

を訴えます。

 

趙王はこれをことのほか喜び

蘇秦武安君にし 宰相の印を授けました。

 

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蘇秦は王から潤沢な資金を授けられ

 

それから諸国を説得して回り

 

ついに

合従を固めることに

成功したのです!

 

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 元をたどってみれば

 

からてんで相手にされず

その上

家族からも冷たくされてしまった蘇秦

私怨から発したようなものでしたが

 

こうして

は西から出られなくなり、

 

結果として世の中には

つかの間の平和が訪れたのでした。

 

  

─── さて

 

一転、富貴の身となった蘇秦に対して

 

家族たちはコロッと手のひらを返し

非常に丁寧に接するようになったそうですよ。

 

父母は彼を迎えるために家と道を掃除して

楽隊とごちそうを用意して迎え

 

妻は彼の顔をまともに見ることが出来ず

兄嫁は這いつくばって詫びたといいます。

 

「義姉さん、前はあんなにいばってたのに」

「それはあなたが高い位について、お金をたくさん持っているからよ」

 

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 蘇秦はつくづく思うのでした。

 

「なるほど、権力金力というものは

あながち馬鹿にできないものだなあ……」

 

(嗚呼、貧窮なれば則ち父母も子とせず

富貴なれば則ち親戚も畏懼す。

人の世上に生くる

勢威富貴

けだしゆるがせにすべけんや)

 

 

この蘇秦「合従策」に対抗したのが

 

張儀(ちょうぎ)

連衡(れんこう)

です。

 

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張儀秦の恵王に向かって言いました。

 

がこんなに強大なのに他の国々を圧倒できないのは

王様の政策が間違っていたからです!

私が勧める政策を採用すれば、秦は絶対に天下取れますから!

もし私の政策を実行しても合従策が破られなかったら、

私は斬られ、不忠義者呼ばわりされたって全く構いません!!!

 

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張儀の熱い言葉に心打たれた恵王は

彼の案を採用することに決めました。

 

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そんなある日のこと

が結託してを攻めてきました。

 

恵王「どうしよう……」

張儀「お任せください!!」

 

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張儀に赴き

王に謁見して言いました。

 

秦王の王様には大変敬意を払っているのですが、実はの事は非常に憎んでるんですよ。

それで、本当はを討ちたいと思ってるんですが、こちらのお国がと結んでおられるので討つことが出来ないんですよね~。

もし、王様がと断交してくだされば、からお国に対し、百里四方の土地を献上しますよ

 

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「土地600里四方……いかがですか?悪い話じゃないでしょう?」

 

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「ほほお……600里四方の土地か……」

 

 欲に目のくらんだ楚の懐王

 

さっさと

断交の使者を送ってしまいました。

 

 

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一方、張儀に使者を出し

 

との

秘密同盟を結びます……。

 

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から張儀の所へ催促の使者がやってきました。

 

「あのう……、土地をくれるって話はどうなりました……?」

 

けれども張儀

 

すみませ~ん、今、病気中だから会えませ~ん

 

と言って会ってあげません。

 

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それを聞いたの懐王は

 

ちゃんとと断交したよ!?

というのをアピールするため

 

わざわざに使者を送り

 

斉王を罵らせたのでした。

 

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これでとの仲は

 

もはやガッタガタ。

 

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そこでやっと

張儀は楚の使者に会ってあげたのです。

 

「で、百里四方の土地をくれるって話は……」

「あぁ、それ? 六里四方ね」

 

「えっ!!何それ

どういう事!!

ふた桁も違うじゃないですか……」

 

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「いや~私みたいな小物のペーペーが、六百里四方だなんて、そんな大きな土地あげられるワケないじゃないですか」

 

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使者の報告に激怒したの懐王は

兵を出してを攻撃したのですが、

 

と同盟を組み

さらにはまで味方につけた

 

 

コテンパンにやっつけられ

領土を削られてしまったのでした……。

 

 

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 戦国乱世は王様だってウカウカしてられない。

平和な時代でマッタリするのが一番ですねぇ……。

 

 

 このあたりの事は

何ぶん古い話なので

史記「戦国縦横家書」など

史料によって伝えられ方はまちまちであるようです。

 

 

 

 

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台風スウェル

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