TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

後世に残るほどの作品を作ろうと思うのなら「独自の世界」の確立は不可欠だと思います。

先日、クリムトに行ってきました。

 

話題の展覧会とあって

平日だというのにも関わらずチケットを買うのに10分超の行列。

 

さらに入場するまでに30分も並びました。

 

« Au temps de Klimt » à la Pinacothèque de Paris

 

アールヌーボーとかユーゲントシュティールといった19世紀末から20世紀初頭にかけての美術は大好きなので、かなり興味深く堪能したのですが

 

この時、この賑わいを目にして一番強く感じたのは

 

芸術作品が

作者の死後

遥かな時代を超えてもなお

人を動かし続けている

という

その強烈な影響力です。

 

死後100年以上も経っているというのに

クリムトの残した作品たちは

今なお

遠い異国の老若男女を

連日これほどまでに駆り立てているのですから

 

本当にすごい事だと思います。

 

人はなぜ展覧会に行くのか?

 

移動の大変さ

人混みのわずらわしさ

チケット代の出費をも厭わず

わざわざ美術館に足を向けるという行為の源には

 

「生の絵を、この目でぜひ見てみたい!」

という

強い欲求がありますよね。

 

Gustav Klimt

 

お気に入りの絵を心静かに堪能するのなら

画集を眺めている方がよほど良い ───

 

そんな風に思う部分もあるけれど

 

質感とか筆触とか

 

生の作品を目の前にしているからこそ

直接的に伝わってくるものってありますからねえ。

 

 

クリムトもそうですけれど

モネ、ゴッホ葛飾北斎伊藤若冲など

 

今や巨匠と呼ばれるようになった絵描きたち。

 

彼らはすでに

この世にはいないにもかかわらず

 

彼らにとって遠い未来人である現代人の心を魅了し続け

展覧会ともなれば

連日大勢の人を招き寄せるほどの力を持っているんです。

 

それでは一体

人々は

 彼らの絵の

どこに惹きつけられているのでしょう?

 

私が思うに

 

それは彼らの描く

「独自の世界」なんだと思います。

 

Vincent Van Gogh - The Starry Night [1888]

 

Hokusai 3

 

あたりまえのようですが

 

歴史に名を残しているような芸術家はみんな

確固たる独自の世界確立しているんです。

 

それは

世間一般の人々が見ている、この世界とはどこか違う

 

芸術家の眼や心を通し

彼らの中で再構築された

彼ら特有の世界。

 

人々は

クリムトワールド」

北斎ワールド」を愛し

 

それを鑑賞することを通じて

その世界に自分の魂を遊ばせたい

と思うからこそ

 

わざわざ展覧会に足を運ぶのではないでしょうか。

 

これは

絵画だけではなく

 

芸術と言うもの全般に言える事なんじゃないかと思います。

 

 

「芸術」なんて言うと

何だか崇高で難しくて気取ったものみたいに取られてしまうかもしれませんね。(^^;)

 

でも

私が考えている「芸術」の定義は

 

「人間の魂から発せられた表現形態で、人間の魂に訴えかけて来るもの」

ですので

 

文章音楽漫画動画などなど

娯楽とされるようなものも広く含まれています。

 

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「純文学」は芸術だけど「大衆小説」ライトノベル芸術じゃないッ!

ですとか

「クラシック」は芸術だけど「歌謡曲違うッ!

ですとか

 

そんな風には全然思っておりません。

 

人間が作り

人間の心に訴えかけてくるもの

みーーーんな

芸術なんです。

 

だって

 

ロートレックミュシャが手掛けたポスターだって

東海道中膝栗毛」みたいな

おフザケだらけの戯作本だって

 

古典となった今では

芸術扱いされている事に

文句をつける人なんか誰もいないでしょ?

 

 

えーっと、それでですね……

 

そうそう

 

数十年、数百年もの時を超えてもなお

人を魅了し続けているような芸術作品には

 

みんな共通して

「確固たる独自の世界」

があるんです。

 

たとえば

 

井原西鶴松尾芭蕉はほぼ同時代の人ですけれど

 

軽妙洒脱な「西鶴ワールド」と

詫び寂びの「芭蕉ワールド」は

全然カラーが違いますよね。

 

明治時代の文豪だって

 

森鴎外夏目漱石では

その世界が描かれているタッチ

そこに漂う空気感がまるで違います。

 

彼らは

彼ら独自の世界をしっかり築いていて

 

さらにそれが味わい深いものだからこそ

 

作者自身が遥か昔にこの世を去っているにもかかわらず

今なお

新しいファンを着々と増やし続けているんです。

 

そんな風に考えてみると

 

作り手が

「後世に残るほどの作品を作りたい!」

と思うのならば

 

まずは

自らの内面世界をしっかりと作り上げる

ということが

不可欠であるように思えます。

 

その時々の流行とか

他人の言動などにふわふわと惑わされる事無く

 

自分の信念

「これが良い」

「これが好きだ」

という感覚を信じて

 

自分のワールドを確立していく

という事が重要なんじゃないかなと思います。

 

 

ひょっとして

ひょっとすると

 

それを追求していくことにより

「売れ線」とか

「ウケ」とかいった所からは

どんどん離れていってしまうことになるかもしれませんけど

 

一般受けばかり意識し過ぎていると

結局

他の人と似たり寄ったりの没個性に陥ってしまい

 

「無難なんだけれども、なんか印象が薄いね……」

ってものしか

作れなくなってしまいます。

 

(他の人も皆「売れたい」と思って二匹目三匹目のドジョウばかりを狙い、結果同じような物ばかりになってしまう。……そんなのつまんなくないですか?)

 

 

芸術にとって

「個性」とか

「独自の世界」というのは

 

一番大切な「肝」の部分

だと思うんですよね。

 

だから

 

他人からどうこう言われたって

誰からも顧みられなくったって

 

簡単に曲げたり

捨てたりしちゃぁいけません。

 

自信を持って

大切に磨いていくが善し!

 

 

 



 

 

 

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こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

台風スウェル

台風スウェル

 



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