TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

アベ・プレヴォー「マノン・レスコー」~少年騎士グリュウの愛と転落の物語

今回は18世紀フランス文学の名作

アベ・プレヴォ(1697-1763)の

マノン・レスコーをご紹介いたします。

 

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僧院から何度も脱走したり

軍に入隊したり

外国に逃亡したりと

いささか血の気の多すぎるカソリックのお坊様

 

アントワーヌ・フランソワ・プレヴォ・デグジル

通称

アベ(僧)・プレヴォ

 

彼によって書かれ

1731年に出版されたこちらの小説は

 

オペラなどでも有名な

デュマ・フィス

「椿姫」

 

マゾヒズムという言葉の語源ともなった

ザッヘル・マゾッホ

「毛皮を着たヴィーナス」

などといった作品の中でも

 

男性主人公が愛する女性に

この本を贈ったり、物語を読んで聞かせたりしているくらい

 

ロマンチック♥

ということで

大変人気を博していた恋愛小説であります。

 

 

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あらすじ

 

故郷を離れて学問にいそしんでいた

少年騎士のリュウ

実家に帰省しようとしている矢先に美少女と出会います。

 

 

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一目逢ったその日から、フォーリンラブ

 

彼女の名は

マノン・レスコー

 

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綺麗な薔薇には棘がある……

 

マノンは、持って生まれた性格が余りに奔放で享楽的過ぎるために

両親の言いつけで修道女にさせられそうになっている所でした。

 

リュウはたちまち彼女に夢中になってしまい

「君を両親の暴圧から救い出し、幸せにして見せる!」

駆け落ち同然に彼女を連れ出し

同棲生活を始めるのです。

 

今まで優等生として順調な人生を歩んできたグリュウですが

ここから彼の

転落人生が始まってしまいます。

 

勉強は良くできるものの

世間知らずのお坊ちゃまで

すぐに頭に血がのぼる性格リュウ

 

自分の美貌の威力というものを充分に知り抜いている上に

贅沢が大好き。

おまけに

貞操観念なんてものは

ひとっ欠片も持ち合わせていない

マノン

 

お金が乏しくなれば

お金持ちのオジサマに接近して愛人になる

なんて事も

マノンにとっては

全くへっちゃらです。

 

「お金は天下の回り物よ」

 

二人がそこそこ贅沢な生活を楽しめていたのが

彼女が金持ちの愛人になっていたお蔭だったことを知り

 

さすがにショックを受けてしまったグリュウ

彼女との別れを決意し

いったんは

神学校に入って僧侶を志すのですが

 

ひょんな事から再びマノンと再会してしまい

 

「マノンのうそつき!

ああ!うそつきめ!うそつきめ!」

などと

一応、罵ってはみたものの

彼女への執着は断ちがたく

 

結局、神学校を脱走して

 また彼女と同棲生活を始めてしまうのです。

 

(グリュウという人は頭に血がのぼると、すぐに駆け落ちとか脱走とか、そういう行動に出てしまうんです。

年齢はグリュウの方がマノンより少しだけ年上だけれども、精神年齢はマノンの方がお姉さんな気がします)

 

そんなところに

マノンの兄貴が登場!

 

ところが

これがまた

とんでもないロクデナシ。

 

美貌の妹を金持ちのオジサン連中に斡旋してお金を稼ぐことなど

「当然」みたいに考えるほどの不良少年です。

 

贅沢しないと生きていけない性格のマノン。

 

彼女自身は兄の言うようにする事もたいして嫌じゃないのだけれども

リュウは彼女にそんな事をしてほしくない!

 

そこで

 

彼女の贅沢な生活を維持させるため

リュウはこの兄のアドバイスを受けて

イカサマ賭博に手を染めてしまうのです。

 

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そうこうしているうちに

さらに彼は

 

マノン

二人の口車に乗せられるようにして

 

大金持ちの老人をマノンの色仕掛けで誘惑し

大金をせしめるという

 

詐欺的な犯罪にまで手を染めることになっていくのです。

 

そんな悪事が

ついに当の老人にバレ

彼らは少年院に送られてしまったのですが

 

リュウ君、全く反省するどころか

かえって老人を逆恨みする始末。

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一足先に少年院から解放された彼は

 

マノンの兄や不良少年仲間と協力し

少女用の少年院に監禁されていたマノンを

脱走させる事に成功。

 

………で

 

この後も色々とあった後に

マノンは再び逮捕されて

 

「こんな不良少女をフランスに置いておくわけにはいかない」

という事で

アメリカに追放され

 

リュウもそれにくっ付いてアメリカに渡り

 

新天地で

「ぼくたちは夫婦です!」

と言って暮らす事になるのですが…………

 

この先は

 

一番の泣かせどころをネタバレしてしまう事になってしまうので

ここでストップさせていただきます。

 

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物語を読み終えた私は正直

 

うーーーん……。

 

この話って

そんなにロマンチックか?

 

と、首を傾げてしまいました。

 

確かに

終わり方は

泣かせる感じにはなっているのですが

 

主人公であるグリュウとマノンが

どうにも

思慮の浅い不良少年少女としか思えないせいで

 

不良グループの一員が

美人局とかの犯罪をして

挙句

「自分たちが逮捕されたり辛い目に遭うのも、全部被害者や運命が悪いんだ」

って逆切れしてるだけのようにも、感じられちゃうんですよねぇ……。

 

リュウ君本人の視点からしてみたら

「これ全て愛のため」

なんでしょうけど

 

被害者にしてみたら

「知らんがな!」

って言いたいところなんじゃないでしょうか。

 

「悪いのは、みーーんなお前らじゃぞ!!」

 

この小説は

 

 彼の「愛」に共感してどっぷり感情移入できるのなら

悲恋の物語として泣けるのかもしれないけれど

 

私は、そこの所には

どうにも嵌り込めなかったので

 

不良少年少女の

悪漢小説みたいな印象を受けてしまいました。

(それはそれで嫌いじゃないですよ)

 

なので

ロマンチック方面に期待していた感じとはちょっと違ったのですが

 

物語としては

ありありと起伏に富んでいて

かなり面白かったですよ!

 

マノン・レスコー (新潮文庫)

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こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

台風スウェル

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