私の「心のお師匠様」吉川英治の作品に
「神州天馬俠」
という少年向けの冒険時代小説があります。
舞台は安土桃山時代。
超人的な武勇を誇る七人の仲間(家臣)達に支えられながら
怪しげな魔術などを使って襲い来る敵方の怪人達や織田、徳川勢などと戦って
武田家のお家再興を目指す ──── という物語です。
味方にも敵にも
尋常でない能力を持った強烈な個性の人物たちが次から次へと登場して
非常に面白い伝奇小説なのですが
味方の主要キャラクターの一人に
大鷲の背に乗って空を飛び回る
竹童(ちくどう)と言う少年がいます。
ちょっとした幻術も使える彼には
鞍馬の山奥に住む
果心居士(かしんこじ)
という仙人みたいなお師匠様がいます。
この果心居士
瞬間移動はするわ
変身はするわと
ほとんど反則レベルに何でもできてしまう人で
私は
「こんなキャラクターを考え出すとは、さすがは吉川先生!」
ずっとそんな風に思っていたのですが
先日
私はこの本を読んで
なんと!
果心居士は実在の人物だったらしい!
と知り
どビックリしてしまったのでした。
高野山で修行をして
幻術を体得した果心居士は
京都の洛北に住んで
人々に地獄絵を見せながら説法をしたり
占いなどをして生計を立てる傍ら
幻術を使って敵を攪乱させたりしていたそうです。
ある時
笹の葉を水面に散らして魚に変身させてみせた果心居士に対し
「そんなのイカサマだろ」
とイチャモンをつけてきた人がいました。
果心居士は楊枝を一本手にすると
その人の歯を、楊枝で右から左へ軽~く一撫でしました。
すると途端に
その人の歯はグラグラになって抜け落ちそうになり
彼はオロオロしてしまいました。
そこで今度は左から右へサッと一撫で。
すると
歯は無事元通りに。
────果心居士は
そんな術を人々に気軽に見せていたそうです。
彼は織田信長に屋敷に呼ばれ
地獄絵を披露した事もありました。
地獄絵が欲しくなってしまった信長に
「それを買い上げてやろう」
と言われたのですが、
果心居士はそれを拒絶します。
帰り道
町はずれに差し掛かった彼は
信長の家臣に襲われ
斬り殺されてしまいました。
家臣は果心居士の遺骸から地獄絵を奪い取り
信長に届けたのですが
それは
ただの白紙に変わってしまっていたのでした。
それから数日後のこと
殺されたはずの果心居士は
何食わぬ顔をして
北野天神で地獄絵を開き、いつものように人々に説法をしていたということです。
また
彼は豊臣秀吉に招かれて幻術を披露した事もあります。
その時には、ついつい調子に乗り過ぎて
大広間のど真ん中に
秀吉にとって隠しておきたい黒歴史になっていた
過去の女性の亡霊を出してしまったために
逆上した秀吉によって
磔の刑に処せられてしまいました。
いよいよ刑が執行されるという
その時
果心居士は
パッ!とネズミに変身し
空から飛んできたトンビにくわえられ
大空に飛び去っていったということです。
果心居士
凄っっ!!!
今日では
彼はおそらく手品師のようなものだったのではないかと言われているようですが
そうだったにしても
戦国時代ほどの昔の日本に
こんなイリュージョニストがいたなんてビックリしちゃいますね!
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