TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

感情のままに不機嫌を周囲に撒き散らすのは、他人を不愉快にし自らに不都合を招くだけ。

先日、友達のお家にお邪魔した時のこと

 

ふと、壁の方に目をやると

そこに掛けてあるカレンダーの、先週の日曜日の欄に

赤ペン

 

「もう二度と八宝菜はつくらない」

 

と書かれている事に気が付きました。

 

気になったので

「これどういう事?」

と友人に訊いてみましたところ

「ああ、それ?うちではもう二度と八宝菜は作らないって決めたの」

と彼女が苦笑しながら答えたので、私はさらにたずねました。

「どうして?」

 

「八宝菜には全く罪は無いんだけどねぇー。その日の晩御飯でウチの旦那があまりにも酷かったから、忌々しい記憶が八宝菜に重なっちゃってさあ。だからもう、八宝菜は作らないって決めたの」

「ええ~?どんな事があったの?」

「実はね……」

 

それから彼女は

先週の日曜日の夜、夕餉の食卓に起こった一波乱

および

八宝菜に降りかかった悲劇の一部始終

私に語ってくれたのでした。

 

彼女の話すところによりますと…………

 

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日曜日

 

その日の晩御飯は、旦那さんが

「もうお腹が空いちゃったから、早めに食べたい」

と要望してきたので

 

彼女は、いつもより若干早めの時間から食事作りに取り掛かり

八宝菜とその他の副菜少々を作り上げ

食卓に並べたのだそうです。

 

 

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無類のテレビ好きである旦那さんは

席に着くや否やテレビのリモコンを操作し

 

「おっ」

 

と、とある人気バラエティーの新春特別番組にチャンネルを固定し

興味深げに画面に見入っていました。

 

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彼が楽しげにテレビを見ながらビールを飲み始めた頃

 

二階から

この家の中学三年のお嬢さんが下りて来て、食卓に着きました。

 

お嬢さんは、賑やかに喋り続けているテレビに目を向けるやいなや

苦々しげに顔をしかめて言いました。

 

「食事時にこんなうるさい番組観たくないんだけど。

私、こういう番組大っ嫌い」

 

 

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旦那さんが喜んで観ていたそのバラエティー番組は

ほのぼのとしたファミリー向けの内容であり

世間からの評判も大変に良いものなのですが

 

多感な年ごろにある娘さんからしてみると

まさに、そのほのぼのとした雰囲気こそが

ぬるまっこ過ぎて耐え難いという所があるようです。

 

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「なんでだよ。面白いじゃないか」

「こんな下らない番組観るくらいだったら、いっそのことテレビなんか消して欲しい」

 

食事中、父と娘の間でこんな言い合いから、小競り合いが始まり

 

二人して席を立ち

テレビを消せ!

いや、消さない!

と言い合いながら

 

リモコンの争奪戦になったんだそうです。

 

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結局、旦那さんの方が折れて

別の番組(誰一人として興味を持っていないBSの教養番組)にチャンネルを変え

 

それから、父子共に

無言のまま黙々と食事をしていたらしいのですが

 

すっかりヘソを曲げてしまった旦那さん

まだ大皿の中に八宝菜がたくさん残っているにもかかわらず

 

「もう食べたくなくなったから御馳走様」

 

と言って

席を立ってしまったんだそうです。

 

 

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娘さんはさっさと食べ終えて

二階の自分の部屋に行ってしまうし

 

大量に残った八宝菜を前に

 

面白くないのは

それを作った奥さん(=私の友人)です。

 

何なの!?

このとばっちりは!!

 

当初父と娘の間で燃え盛っていた

不愉快の炎

 

今まさに

母にまで飛び火してしまった瞬間でした。

 

 

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そもそも

 

その日の夕方、お茶を飲みながらマッタリ過ごしていたところを

「お腹が空いたから早めに晩飯を作ってくれ」

急かされたにもかかわらず

 

こんなにおかずを食べ残されてしまった

という事も

奥さんとしてはかなり面白くなかったようですね。

 

 そこで

完全に腹を立ててしまった彼女は


「こんなに残されるのなら

八宝菜はもう二度とつくらない!」

 

という宣言をし

それを決して忘れる事のないように

カレンダーにまで書きつけた。

 

というわけらしいです。

 

そのようないきさつを私に語り聞かせるうちにも

 

彼女の怒りは

再燃してくるようでした。

 

「そもそも旦那は、娘のひねくれた言動のせいで食欲が無くなったなんて言うけれど

ああいう番組を娘が嫌っているのは、普段の言動からだってわかりそうなものなのに、それこそ子供か!って話よ。

そんなに見たい番組だっら録画して、後で一人で見ればいいじゃない。

とにかく、子供と旦那の二人だけでやり合っているだけならまだしも

そのとばっちりを私にまで食らわせて来るのが無性に腹立たしいわ」

 

私がうっかりいきさつを聞きだしてしまったことで

すっかり怒りが蘇ってしまった彼女は

憤然としてそう言いました。

 

実はこのご家庭

晩御飯時に、この種のいざこざが結構あるようで

 

カレンダーに

「〇〇はもう二度とつくらない」

と書き込みされている事

以前にも何度か見たことがあるんです。

 

おそらく

 

旦那さんも娘さんも

この時のイラ立ちは、その場限りのもので

今ではすっかり忘れてしまっている事でしょうが

 

せっかく作った料理を大量に残される虚しさって

本当にやるせないものですよ。

 

こんな事がしばしばあると

お母さんは

ゴハン作りが嫌になって来てしまいます。

 

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料理するモチベーションがなくなると

 

ゴハンのレパートリーがどんどん減り

作り方だって

果てしなく簡素になって行っちゃいますよ。

 

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今日のディナーは振りかけご飯。

 

 

 

 かつて読んだ

フランスの哲学者アランの「幸福論」に

 

不機嫌さをむき出しにしていると

周りの人にまで不機嫌が伝播して

不愉快さや不都合が蔓延してしまうから

そういうのは良くないんだよ

 

というようなことが

書かれていた事を思い出しました。

 

たとえ不愉快な目に遭ったとしても

不機嫌はむやみやたらと発散させるもんじゃないですね。

 

不機嫌が不都合となって

跳ね返ってくるのを防ぐためにも

 

不機嫌はなるべく抑えた方が良いと思いますよ。

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

こちらはアランの「幸福論」について。

todawara.hatenablog.com

 

 

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

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