TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「六義」「六書」~漢字バージョン・漢詩バージョン・和歌バージョンと色々あってややこし過ぎるコレらについて整理してみました。

東京の小石川に六義園と言う庭園があります。

 

徳川5代将軍綱吉の側用人柳沢吉保によって造られた、大変見事な大名庭園ですが

 

この六義園という名前

詩経「六義」や和歌の「六義」にちなんで付けられたものだと言われてます。

 

 

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さて この

「六義(りくぎ)」

という言葉

 

辞書を引くと色々と説明が出て来るのですが

漢詩の六義」

「和歌の六義」

「漢字の六義」

あまりにも種類が多すぎ

頭が混乱してしまいそうになります。

 

さらには

「六義」「六書」と言うことがあったり

「六体」なんて言い方まで飛び出してきたりして

 

ややこしいったら

ありゃしません。

 

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もう、ぐちゃぐちゃ!!

 

 そこで今回は

「六義」をめぐる

そのあたりのグチャグチャ

スッキリと整理してみようと思いました。

 

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まずは第一に

 

漢詩の六義】

というものがあります。

 

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これは

孔子が編纂した中国最古の詩集

詩経で言われているところの

 

風・雅・頌・賦・比・興

という

漢詩の六つの形のことです。

 

これを個別に説明いたしますと

 

風(ふう) 

各地で歌われていた民謡

雅(が) 

儀式の際に用いられる音楽

頌(しょう) 

祖先をまつる祭祀の歌

賦(ふ) 

事柄をそのまま述べること

比(ひ) 

直接的な比喩

興(きょう) 

自然を象徴的に歌い、それによって事柄を連想させる方法

 

と、

このようになります。

 

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そしてこの漢詩の六義転用して

 

古今和歌集の仮名序で

紀貫之が述べた和歌の六種類の形

 

そえ歌・数え歌・なぞらえ歌

たとえ歌・ただこと歌・祝い歌

という

 

【和歌の六義】

が出来ました。

 

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その内容は

このようになっております。

 

そえ歌 

ほかの物事に事寄せて、自分の気持ちを詠んだ歌。

数え歌 

感じた事をそのまま詠んだもの。

物の名を詠みこんだもの。

漢詩の六義では(事柄をそのまま述べる)にあたる。

(なぜそれが数え歌なのかは謎)

なぞらえ歌 

漢詩の六義のにあたる、直接的な比喩を使った歌。

たとえ歌 

漢詩の六義のにあたる、自然を象徴的に歌い、それによって事柄を連想させる歌。

ただこと歌 

物にたとえないで、直接的に詠んだ歌。

紀貫之漢詩の六義のに相当すると言っている。

祝い歌 

「めでたい」と祝いことほぐ歌。頌歌

 

 

うーむ……

 

私は「数え歌」と「ただこと歌」の所に何だかモヤモヤしたものを感じてしまうのですが……

(どっちかと言うと「ただこと歌」の方がに近くないですか?)

 

とりあえず、こんな感じになっているんだそうです。(-_-;)

 

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そして

ややこしい事には

 それらの六義とは別に

 

漢字の成立とその使用法についての六つの区別を言う

象形・指事・会意

形声・転注・仮借

といった

 

【漢字の六義】

というものがあるんです。

 

これは六書(りくしょ)とも言い

どちらかというと、そちらの方が通りが良いような感じになっています。

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漢字の六義(六書) 、内容はこのようになっております。

 

象形(しょうけい) 

ものの形を表した漢字 など

指事(しじ) 

抽象概念的なものを点や線を使い表した漢字 など

会意(かいい) 

二つ以上の文字を合わせて意味を表した漢字 木と木を合わせてなど

形声(けいせい)

音を表す部分と意味を表す部分を組み合わせた漢字 

非(ヒという音)と心(こころという意味)を合わせて

さんずい(みずの意味)と工(コウという音)を合わせてなど

転注(てんちゅう) 

元の意味が次第に他の意味で使われるようになった漢字

音楽の(がく)が「音楽を聴くと楽しい」といった所から「たのしい」になっていった類 

※諸説あり未だ定説はない

仮借(かしゃ) 

ある言葉を表すときに、音が同じ(もしくは近い)漢字を、元の意味や形とは無関係に音だけを借りて使っているうち、借りた方の言葉として定着してしまったもの 

「まめ=荳(トウ)」を表わすために「豆(トウ)」(本来は高脚の食器である高坏の意味)を使っているうちに「まめ=豆」として定着してしまった類

 

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さらにややこしい事に

「漢字の六書(六義)」と言う場合

 

大篆・小篆・八分

隷書・行書・草書

という

漢字の六つの書体を表す

 

【漢字の六体(りくたい)】

だったりする事もあるので要注意です。

 

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漢字の六体は以下のようになっております。

 

大篆(だいてん)

東周時代に使われていた複雑な書体

小篆(しょうてん)

秦になってから作られた大篆を簡略化した書体

 

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「清」という字の大篆と小篆

八分(はっぷん) 

漢隷とも言われる装飾的な隷書の一種。横画の終筆を右に跳ね上げる

隷書(れいしょ)

小篆が簡略化されたもの。のち、ここから楷書が生まれる

 

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行書

楷書をやや崩した書体

草書

行書をさらに崩して点画を略し、曲線を多くしたもの ※別の説もあり

 

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漢字の六体にはこれ以外にも

別バージョンがあり

 

そちらは

古文・奇字・篆書

隷書・繆篆・虫書

と、なっております。

 

古文 

秦以前の儒家のテキストに使われていた書体

奇字

古文に似ているけれども違うもの

篆書

印章などに使われている、秦以前の書体

隷書

楷書に近いカッチリした書体

繆篆(びゅうてん)

四角い印章に合う四角い篆書

虫書

蟲篆・鳥蟲書とも言う、曲がりくねった装飾的な書体

 

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 そして

さらにややこしい事に

 

この「六体(りくたい)」という言葉を

「六体(ろくたい)」と読みかえて

 

長歌・短歌・旋頭歌

混本歌・折句・沓冠

など

和歌の形式のことを言う

 

【和歌の六体(ろくたい)】

なんてものまで

あったりします。

 

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和歌の六体

このようになっております。

 

長歌

五音・七音を3回以上くりかえし七音で終わる歌

短歌

五・七・五・七・七の歌

旋頭歌(せどうか)

五・七・七・五・七・七の歌

混本歌(こんぽんか) 

実態は不明 

旋頭歌に似たようなものだとか

五・七・五・七形式の歌だとかいう説がある

 

折句(おりく) 

各句の初めに1文字ずつ置いて物の名前などを詠みこんだもの。

(例)

らごろもつつ慣れにしましあれば

るばるきぬるびをしぞ思ふ

(五文字合わせてかきつばた)

 

沓冠(くつかぶり・くつかむり・くつこうぶり) 

折句の一種でもっと凝ったもの。

各句の上と下に字を置いて意味を持たせる技巧。

逢坂も(ふさか) 果ては行き来の(てはいきき) 関もゐず(きもゐ) 尋ねて訪ひ来(ずねてとひ) 来なば帰さじ(なばかえさ)

各句の上から一文字ずつ取って

あはせたき

各句の下から一文字ずつ取って

ものすこし

つまり、ここに現れたるメッセージは

合薫物(あわせたきもの)少し(持ってきてほしい)」

 

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な~るほど〜。

 

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 ところが

 

実は

先に述べた「和歌の六義(紀貫之が提唱したもの)も

「和歌の六体と言われることがあるんです……( ;∀;)

 

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「なにそれ!?」「ややこしいな~、もう」

 

ですから

これまでの所をまとめてみますと

このようになります。

 

六義(りくぎ)には

漢詩、和歌、漢字のものがある。

 

そのうち

和歌の六義というのは

六体(ろくたい)という場合もある紀貫之が提唱した和歌の六つの形式

     

漢字の六義というのは

六書(りくしょ)と言われることが多い漢字の六つの成り立ち

 

そして

漢字の六書という場合

前述した「漢字の六つの成り立ち」以外にも

六体(りくたい)と言われる漢字の六つの書体の意味がある。(※2パターンある)

 

そして

それとは別個にもう一つあるのが

 

和歌の六体(ろくたい)……和歌の六つの形式

 

という事になります。

 

 

 いかがでしょう……?

 

……おわかりいただけたでしょうか?

 

どうにかこうにか、整理してはみましたが

やっぱりもう、何が何やらグチャグチャで

 

私には到底、覚えられそうにもありません……。(-_-;)

 

 

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わーい!!



 

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