ビーフシチューとハヤシライスとビーフストロガノフ
って
なんだかそっくりですよね。
一体、どこがどう違うの???
と思って調べてみたのですが
「名前が紛らわしい麺」御三家の
タンメンとタンタンメンとワンタンメン
以上に
ビーフシチューと
ハヤシライスと
ビーフストロガノフの違いは
非常に曖昧な物でした。
この3者を曖昧にさせている
大きな要因となるのが
調理の際に使われている
ブラウンルー
(小麦粉をバターで炒めて作ったもの)
および
そこからさらに手を加えて作る
エスパニョールソース
(ブラウンソースとも言う)
ひいては
さらにそこから手を加えた
デミグラスソース
(これが最終形態)
の存在です。
※エスパニョールソースとは
ブラウンルーに
焼いた牛骨、牛肉、野菜、ブイヨンなどを加えて煮込み
最後にトマトソースを加えて煮込んだもの
※デミグラスソースとは
エスパニョールソースに
さらに肉や野菜やワインを加えて煮込んだもの
(完全最終形態)
さて
まずは1番手の
ビーフシチューなのですが
この料理は
イギリスが発祥だそうです。
シチュー(stew)というのは
出汁やソースで野菜や肉などを煮込んだ
煮込み料理一般を指しています。
イギリス式のビーフシチューは
赤ワインやトマトをベースとして
牛肉、ジャガイモ、人参、セロリ、玉ネギなどをハーブと共に煮込んで作るのですが
日本では
デミグラスソースを使って作るのが一般的です。
下の写真のように
たっぷり熱々のソースが主役で
「フーフー」言いながら食べるタイプは
家庭で作るビーフシチューとしても大人気のメニューですよね。
また
レストランなどでは
この下の写真のように
ソースは少なめで、ゴロッと大きな牛肉が主役になっているものもあり
そこはかとなく高級感を漂わせています。
(タンシチューとかテールシチューとか)
明治24(1891)年頃にはすでに
日本の海軍において
ビーフシチューが作られていたそうです。
イギリスに留学していた東郷平八郎元帥が、当地で食べたビーフシチューをいたく気に入り
日本の海軍にそれを作らせようとしたところ
はからずも肉じゃがが誕生してしまった
という
肉じゃが誕生伝説がよく語られていますが
これは
都市伝説に過ぎん!
と言われています。
(東郷さんが「ビーフシチューを作れ」と命じたという設定の明治34年、海軍ではとっくの昔にビーフシチューが作られていたから)
お次は
ハヤシライスについてです。
ハヤシライスというのは
薄切りした牛肉と玉ネギを
デミグラスソースやトマトソースで煮込み
ご飯と一緒に食べる料理です。
近畿地方ではハイシライスと呼ばれている所もあるようですね。
ハヤシライスの起源に関しては
諸説乱れ咲きの様相を呈しております。
英語で「刻む」「切る」という意味の
「Hash」という言葉があり
それが
明治時代まで古語や各地の方言で使われていた
「切る」という意味の「はやす」と混同され
Hashed beef with Rice
Hashed and Rice
が
ハヤシライスになった
という説が一つ。
(ただし、イギリスにあったHashed beef という料理はハヤシライスとは別物で
デミグラスソースで煮込むハヤシライスは日本オリジナルの料理です)
そしてもう一つが
東京の老舗書店・丸善の創業者
早矢仕有的(はやしゆうてき)(1837-1901)
が作ったという説
さらに
上野精養軒(明治9年開業)のコックをしていた
林さんという人が
宮内省のコック秋山徳蔵から伝えられたグヤーシュ(東欧の料理)を元に作ったという説
さらに
銀座のレストラン煉瓦亭(明治28年創業)が
デミグラスソースで作るハヤシライスの元祖だという説
その他
明治の初め頃、横浜にいた林さんが
「カレー粉抜きのカレーライス作って」
と注文したから出来たという説
「流行りのライス」が転じて
「ハヤシライス」になったという説
明治時代に洋食に対して反感を持った人たちが
「あんなもん食べたら早死にする」
と言った所から
「早死にライス」→「ハヤシライス」になったなんていう説
(酷い……)
などなど
諸説が入り乱れ状態なのですが
明治40(1907)年にはすでに
神田の岡島商店が
「固形ハヤシライスの種」
などという商品を売っていたほど
ハヤシライスは人々に大変親しまれていたようです。
最後にご紹介する
ビーフストロガノフですが
こちらは
ロシアの代表的な料理です。
16世紀にウラル地方に栄えていた貴族
ストロガノフ家に伝えられていた一品が起源だとされています。
ロシア語で「~風」という意味の
「ビフ」です。
(ストロガノフ家風の料理ということ)
なので
ロシアでは鶏肉や豚肉で作られる場合も多いらしいのですが
日本で材料に使われているのはやはり
「ビーフ」が最多です。
(「ビーフストロガノフ」なんて名前してるのに、実は他の肉でも良かったなんて、普通は考えもしませんものねぇ……)
作り方は
肉の細切りと玉ネギやマッシュルームなどの野菜をバターで炒め
少量のスープで煮込んで
仕上げにサワークリームをたっぷりと入れます。
日本では
トマト缶やデミグラスソースを使って作る事が多いです。
その時点で、ほとんど
ハヤシライスと同じような状態になってしまうのですが
仕上げにサワークリームや生クリームを掛けることによって
違いが出てきます。
さて、ここで
ビーフシチューと
ハヤシライスと
ビーフストロガノフの違いについて
家庭における作り方で
おさらいしてみますと
以下のようになります。
ビーフシチュー
牛肉と玉ねぎと人参とジャガイモを炒めて
デミグラスソースで煮込む
ハヤシライス
薄切りにした牛肉と玉ねぎを炒めて
デミグラスソースで煮込む
ビーストロガノフ
薄切りにした牛肉と玉ねぎを炒めて
デミグラスソースで煮込んで
皿に盛った後に
クリームを掛ける
以上の事からおわかりいただけますように
この3つの料理は
材料も作り方も
そっくりです。
デミグラスソースは
フランス語で
半分(demi)と煮詰める(glace)の意味を持つ
洋食の基本的ソースの一つで
フランス料理のシェフが
宮廷料理を作る際に使っていたものが
フランス革命後に起こったレストランブームによって
大衆化していったものだそうです。
デミグラスソースが日本に広まったのは
明治30~40年代ごろと言われています。
(日本にやって来たデミグラスソースは、日本人の心と舌をすっかり虜にしてしまいました)
しかし
実は現在
フランスでは
デミグラスソースはほとんど使われていないんだそうです。
なんでも
ソースの味が濃厚すぎて素材の味が消えてしまう、ということで
フランスでは20世紀半ばには廃れてしまったんだそうですよ。
なので
デミグラスソースの活躍の場は
現在ではおもに
日本の洋食となっているんです。
ちなみに
世界で初めて
業務用デミグラスソースを
開発・発売した会社は
「ハインツ・日本」なんだそうですよ。
1970(昭和45)年の事でした。
私はその昔
友人から
「超簡単にできるハヤシライスの作り方」
というのを教わったことがあります。
それは
玉ネギの薄切りと牛こま切れ肉をフライパンで炒め
デミグラスソース1缶にコンソメを入れて
ちょこっと煮たら出来上がり
という
本当にびっくりするほど簡単に出来てしまうメニューなのですが
ちゃんとそれなりに仕上がりますので
みなさんも良かったら試してみてください。
ルーを使って作るのと
お手軽さでは、ほとんど変わりがないんですが
デミグラスソースを使って作ると
なんとなく「すげー」みたいに思われる所ありますよね。
(;・∀・)
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