時代小説などを読んでいると
時間や方位のあらわし方で
「亥(い)の刻に ──」
とか
「巽(たつみ)の方角に ──」
とか出て来ますけど
資料などで説明を読んだりしても
日常的に使っていないものですから、どうも肌身に実感することができず
それは一体、何時ごろなのか?
どちらの方角なのか?
──ってところが
いまいちピンときませんよね。
そこで今回は
そこの所(十二時辰)をなるべくわかりやすく
ビジュアル的にご説明してみようと思います。
基本となるのは
午前0時を「子(ね)」として
1日を12等分して12刻とし
1刻(2時間)ごとに十二支をそれぞれ割り当てた
「定時法」
というものです。
1刻(2時間)は30分ごとに4等分され
「子一つ(ねひとつ)」から「子四つ(ねよっつ)」まで
というように番号付けられています。
人々に時刻を報せるために
深夜0時…子(ね)の刻と正午12時…午(うま)の刻には
9回太鼓を鳴らしたことから
この両時刻は
「九つ時」
と呼ばれています。
同様にして
その他の時刻も
以下のように呼ばれています。
深夜2時「丑(うし)の刻」
昼間2時「未(ひつじ)の刻」
「八つ時」
早朝4時「寅(とら)の刻」
夕方4時「申(さる)の刻」
「七つ時」
早朝6時「卯(う)の刻」
「明け六つ」
夕方6時「酉(とり)の刻」
「暮れ六つ」
朝8時「辰(たつの刻」
夜8時「戌(いぬ)の刻」
「五つ時」
午前10時「巳(み)の刻」
夜10時「亥(い)の刻」
「四つ時」
さらに
夜は夜で、五つに分けられ
「五更(ごこう)」と呼ばれていました。
夜の長さは季節によって変わるため
五更の時間も随時変わってしまうのですが
だいたい
午後7時〜8時くらいから
2時間ずつに区切ったかたちに相当しています。
初更(甲夜)
夜7時~8時から2時間くらいの間(戌の刻ごろ)
二更(乙夜)
夜9~10時から2時間くらいの間(亥の刻ごろ)
三更(丙夜)
夜11時~0時から2時間くらいの間(子の刻ごろ)
四更(丁夜)
深夜1時~2時から2時間くらいの間(丑の刻ごろ)
五更(戊夜ぼや)
深夜3~4時から2時間くらいの間(寅の刻ごろ)
そしてまた
この十二支たちは
方位にもあてられているんですよ。
360度を12等分して北を子とし、次のように割り振られています。
丑と寅の中間の北東は「艮」(うしとら)
辰と巳の間の南東は「巽」(たつみ)
未と申の間の南西は「坤」(ひつじさる)
戌と亥の間の北西は「乾」(いぬい)
と呼ばれているのですが
北東の「艮」(うしとら)は鬼門
南西の「坤」(ひつじさる)は裏鬼門
とされ
不吉な方角とされていました。(*_*)
(なんでも、鬼が出入りする所なんだそうで……)
これらは陰陽五行説に基づいていることから
北は黒(玄)で冬
南は朱(赤)で夏
東は青で春
西は秋で白を
それぞれ象徴しています。
ちなみに東西南北をそれぞれ守護している霊獣たち(玄武・青龍・白虎・朱雀の四神)は以下の通り。
それでは
十二時辰をひとつひとつ見てまいりましょう!
子(ね)の刻 現在の0時(23時~1時)
23:00~2330 子一つ
23:30~0:00 子二つ
0:00~0:30 子三つ
0:30~1:00 子四つ
別名
九つ時 夜九つ 丙夜 三更 夜半(やはん)
方角 北
丑(うし)の刻 現在の2時(1時~3時)
1:00~1:30 丑一つ
1:30~2:00 丑二つ
2:00~2:30 丑三つ
2:30~3:00 丑四つ
別名
八つ時 夜八つ 丁夜 四更 鶏鳴(けいめい)
方角 北北東
寅(とら)の刻 現在の4時(3時~5時)
3:00~3:30 寅一つ
3:30~4:00 寅二つ
4:00~4:30 寅三つ
4:30~5:00 寅四つ
別名
七つ時 暁七つ 戊夜 五更 平旦(へいたん)
方角 東北東
卯(う)の刻 現在の6時(5時~7時)
5:00~5:30 卯一つ
5:30~6:00 卯二つ
6:00~6:30 卯三つ
6:30~7:00 卯四つ
別名
六つ時 明け六つ 日出(にっしゅつ)
方角 東
辰(たつ)の刻 現在の8時(7時~9時)
7:00~7:30 辰一つ
7:30~8:00 辰二つ
8:00~8:30 辰三つ
8:30~9:00 辰四つ
別名
五つ時 朝五つ 食時(しょくじ)
方角 東南東
巳(み)の刻 現在の10時(9時~11時)
9:00~9:30 巳一つ
9:30~10:00 巳二つ
10:00~10:30 巳三つ
10:30~11:00 巳四つ
別名
四つ時 昼四つ 隅中(ぐうちゅう)
方角 南南東
午(うま)の刻 正午12時(11時~13時)
11:00~11:30 午一つ
11:30~12:00 午二つ
12:00~12:30 午三つ
12:30~13:00 午四つ
別名
九つ時 昼九つ 日中(にっちゅう)
方角 南
未(ひつじ)の刻 14時(13時~15時)
13:00~13:30 未一つ
13:30~14:00 未二つ
14:00~14:30 未三つ
14:30~15:00 未四つ
別名
八つ時 昼八つ 日昳(にってつ)
方角 南南西
申(さる)の刻 16時(15時~17時)
15:00~15:30 申一つ
15:30~16:00 申二つ
16:00~16:30 申三つ
16:30~17:00 申四つ
別名
七つ時 夕七つ 晡時(ほじ)
方角 西南西
酉(とり)の刻 18時(17時~19時)
17:00~17:30 酉一つ
17:30~18:00 酉二つ
18:00~18:30 酉三つ
18:30~19:00 酉四つ
別名
六つ時 暮れ六つ 日入(にちにゅう)
方角 西
戌(いぬ)の刻 20時(19時~21時)
19:00~19:30 戌一つ
19:30~20:00 戌二つ
20:00~20:30 戌三つ
20:30~21:00 戌四つ
別名
五つ時 宵五つ 甲夜 初更 黄昏(こうこん)
方角 西北西
亥(い)の刻 22時(21時~23時)
21:00~21:30 亥一つ
21:30~22:00 亥二つ
22:00~22:30 亥三つ
22:30~23:00 亥四つ
別名
四つ時 夜四つ 乙夜 二更 人定(にんじょう)
方角 北北西
基本的に以上にご紹介した定時法が使われていたのですが
鎌倉時代以降には
日の出(明け六つ)と日の入り(暮れ六つ)を境に昼と夜とを分け、それぞれを六等分する
不定時法
というものがしだいに多く使われ始め
江戸時代には主に
こちらの不定時法が使われるようになっていました。
(明治5年まで)
不定時法では
季節によって昼と夜との長さが違うので
一刻の長さも長くなったり短くなったりしてしまうのですが
当時の人々はそれで別にOKだったそうです。(^^;)
昔の人々は
お寺の鐘や、町なかに設置された時の鐘で時間をしらされていました。
関東では、埼玉県の川越にある時の鐘が有名ですよね!(^_^)
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