今回は、アメリカの女性作家
ジーン・ウェブスター(1876-1916)の名作小説
「あしながおじさん」(1912年刊)をご紹介いたします。
生後間もなく両親に捨てられ
孤児院で育った17歳の女の子ジュディは
孤児院の評議員をしている一人の紳士に見いだされ
孤児院を出て
上流家庭の子女が通う大学に
行かせてもらう事になりました。
条件は
学費も生活費もお小遣いも出してもらう代わりに
定期的に手紙を書くこと。
ただし
紳士からの返事は期待しないこと。
顔も知らない彼は
本名すら教えてくれなかったため
ちらりと見かけたその後ろ姿から
ジュディは彼を
「あしながおじ様」と呼ぶことにしたのでした ───
言わずと知れた古典的名作で
「あしなが育英会」とか
「あしなが学生基金」とか
青少年を助けるための慈善事業には
この話にちなんだ名前が多く付けられているほど、有名なお話です。
このお話
夢のあるロマンチックなストーリーといい
深みのあるセリフといい
ことごとく私のツボに嵌りまくっておりまして
もう~~~
本当大好きっ!(>∀<)
とにかく
主人公のジュディが可愛すぎるんですよ。
語り口こそ
「ですもの」「ですわ」と
おしとやかなのですが
その実
かなりズケズケと「おじ様」に対してものを言ったり
「おじ様の肖像画を描いてみましたわ♡」
とか言いながら
棒人間みたいなヘンチクリンな「おじ様想像図」を描いてみせたり
おじ様が一向に返事をくれないことに
拗ねて悪口を言ってみたり ───
やりたいと思ったことは
たとえおじ様から秘書経由で反対されたとしても
断固としてやっちゃう。
ジュディって、そんな
明るくて活発な女の子なんです。
孤児院の外の世界に初めて触れた彼女がつづる学園生活は
見るものすべてが驚きと喜びに溢れていて、生き生きとしています。
めぐまれた環境に生きてきた人には
当たり前すぎて見えなくなっていた
身近な世界にある楽しさや美しさを
ジュディは改めて気づかせてくれるんです。
この小説は
孤児院時代を描いた冒頭以外
全てジュディが出す手紙のみから構成されているのですが
物語中、全く姿を現していないはずの
「あしながおじさん」の気持ちが
話が進むにつれ
ほのかに浮かび上がってみえてくるところに
作者ジーン・ウェブスターの
並々ならぬ卓越した手腕が窺えます。
私が読んだ新潮文庫版の文庫本のカバー裏には
映画の写真みたいのが載っていましたので
調べてみたところ
1955年にミュージカル映画が作られていました。
おじさま役はフレッド・アステア
ジュディ役はレスリー・キャメロンです。
幸せな気分になれるロマンチックな話だから
確かにミュージカル向きかもしれませんね。
ジュディの手紙の中に
随所にとても素敵な言葉があったので
ご紹介しますね。
私は勝手に自分の好きなように
神様をつくりあげることができます。
私のは親切で思いやりがあって
想像力に富み、罪はゆるして下さるし、
理解があって、
その上ユーモアを解する神様です。
まァ、私が院長になる孤児院を
ごらんになってみてくださいまし!
これは私が毎晩眠る前にやる、
一番好きな遊戯ですのよ。
私は細部にわたるまで計画をたてています。
食事、着物、娯楽それから罰のことまで
───どんな善良な孤児だって
時にはいたずらをしますからね。
でも、とにかく子供たちは皆幸福にしてやります。
たとえ大人になってからどんなに苦労をするとしても、
せめて子供時代をふり返ったときに
幸福だったという思い出を
持たせてやらなきゃなりませんからね。
何より大切なのは、
大きなすばらしい喜びではなく、
ささやかな喜びを見出していくことです
───おじ様、私は幸福になるほんとうの秘訣を発見しました。
それは現在に生きることです
いつまでも過去のことを悔やんだり、未来を思いわずらったりしていないで、
今のこの瞬間から最大限度の喜びを探し出すことです。
作者のジーン・ウェブスターは
「トム・ソーヤの冒険」で知られる
マーク・トウェインの姪でもあります。
彼女は
「続・あしながおじさん」
が出版された1915年に結婚したのですが
翌1916年
娘を生んだ時の産褥熱のため
亡くなってしまったんだそうです 。
享年39歳 ───
あまりにも若すぎますよね……。
- 作者: ジーンウェブスター,Jean Webster,松本恵子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1954/12/28
- メディア: 文庫
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「おじさま」マーク・トゥエインについて。
こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。