TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

文学のこと

読売新聞連載小説 柴崎友香さん「遠くまで歩く」の感想。

読売新聞の夕刊紙上にて連載されていた 柴崎友香さんの 「遠くまで歩く」が先日完結しました。 毎日楽しく読んでいましたので、その感想を書こうと思います。 お話の内容を簡単にご紹介しますと 以下のようになります。 ------------------ 時は2020年から20…

小林一茶の猫の俳句と松浦佐用姫の悲恋伝説

岩波文庫の 「新訂 一茶俳句集」(丸山一彦校注)を読んでいたところ 可愛いらしい俳句を見つけましたので 今回はそれをご紹介しようと思います。 新訂 一茶俳句集 (岩波文庫) 作者:小林 一茶 岩波書店 Amazon その句は文化11(1814)年 小林一茶が52歳の時に詠…

読売新聞連載小説 木内昇さん「惣十郎浮世始末」の感想

読売新聞の朝刊で連載されていた 木内昇さんの時代小説 「惣十郎浮世始末」が完結しましたので 今回はそのご紹介と感想を書こうと思います。 毎日少しずつ進む小説欄を読むひとときが 「ずっとこのまま続けばよいのになぁ……」と 愛おしく思えてくるような と…

「忍法」という言葉の元祖は吉川英治!

「忍法」という言葉を初めて使ったのは吉川英治である ────という説は 今ではWikipediaをはじめ多くの所で語られ 広く知られている事ではありますが 今回は吉川英治大ファンの私がその辺のところを もうちょっと詳しくお伝えしたいと思います。 講談社刊の「…

藤原氏にまつわるエピソードが満載!平安時代の歴史物語「大鏡」のご紹介

今回は 藤原摂関家にまつわる権力闘争と栄華の歴史を 紀伝体で鮮やかに描き出した歴史文学作品 「大鏡」のご紹介をいたします。 大鏡 全現代語訳 (講談社学術文庫) 作者:保坂 弘司 講談社 Amazon 平安時代から室町時代にかけて成立した 「~鏡(かがみ)」とい…

”SF小説の父”が空想した恐ろしき未来世界!~H.Gウェルズ「タイムマシン」のご紹介。

今回はSF小説の始祖とも称され 「タイムマシン」という言葉の生みの親でもあるイギリス人作家 ハーバート・ジョージ・ウェルズ(1866-1946)が29歳の時に発表した小説 「タイムマシン」(1895年)のご紹介をいたします。 ウェルズ本人が1931年度版「タイムマシ…

トンデモなくぶっ飛んだ平安時代のお姫様!~敦道親王の奥様(藤原道隆三女)について。

「大鏡」(平安時代後期に成立したと思われる、藤原摂関家を中心とした歴史の記録)を読んでいた所 和泉式部の恋人として有名な 敦道親王(冷泉天皇の第四皇子)の最初の奥さま が出て来たんですが その方のキャラクターが余りにもぶっ飛んでいましたので ここに…

人の手による芸術は、今後AIに駆逐されてしまうのか!?

近頃、AIが飛躍的大発展を遂げ 一気に身近なものとなってまいりました。 以前から 「AIが発展・普及しすぎると、人間の様々な仕事がAIにとって代わられるようになるぞ!」 と言われてはきましたが 実際に良い感じの絵画や文章を書くAIが出現し、瞬く…

ダシール・ハメット「マルタの鷹」~ハードボイルドは男の美学!

今回は アメリカのハードボイルド・ミステリー作家 ダシール・ハメット(1894-1961)の1930年の作品 「マルタの鷹」 のご紹介をいたします。 マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:ダシール ハメット 早川書房 Amazon 内容をかいつまんでい…

「来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに……」藤原定家の歌に因まれた悲しい恋の物語。

先日、こちらの 「新版 百人一首」(島津忠夫訳注)という本を読んだ折 撰者・藤原定家の歌の解説で 「ほほぉ……」 と感じた所がありましたので 今回はそのことについて書いてみます。 新版 百人一首 (角川ソフィア文庫) KADOKAWA Amazon 権中納言 藤原定家(116…

「音にきく たかしの浜の あだ波は」~女流歌人・紀伊のビックリ話

先日 角川ソフィア文庫から出ている 「新版 百人一首」(島津忠夫訳注) という 百人一首の解説本を読んだのですが この中で ちょっとビックリしてしまうような話がありましたので 今回はそのことについて、書いてみようと思います。 新版 百人一首 (角川ソフ…

「ロビンソン漂流記」~この世をサバイバルするための知恵が満載!

今回は、イギリスの作家 ダニエル・デフォー(1660-1731) が59歳にして初めて書いた小説 「ロビンソン漂流記」(1719年刊) をご紹介いたします。 《内容》 中流家庭に生まれ、それなりの商才や経営の才に恵まれながらも 冒険心があまりにも強すぎて、安定した…

川上未映子さん「黄色い家」(読売新聞朝刊連載小説)の感想。

読売新聞朝刊紙上で連載されていた 川上未映子さんの「黄色い家」が先日、完結しました。 毎日、ハラハラドキドキ、固唾を飲みながら楽しみに読んでおりましたので 終わってしまった今、なんだか虚脱感のようなものがあります。 物語は 主人公である花の語り…

牛車の乗り心地は結構悪い~「今昔物語集」から頼光四天王の面々が牛車で酷い目に遭った話

平安時代の貴族などが使っていた 牛車(ぎっしゃ) という乗り物がありますよね。 なんとなく まったり・のんびりしたイメージがありますが 実際の所乗り心地はどうだったんでしょう? 現代のようにきちんと平らに舗装されているわけではない 平安時代のボコボ…

ハイネのロマンチックで素敵な詩のご紹介

今回は 愛と革命の抒情詩人 ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)の詩の中から 私が特に「素敵だな」と思うものをご紹介いたします。 ハイネと言いますと 「♪ 春を愛する人は ~」で知られる 『四季の歌』(作詞・作曲 荒木とよひさ) という歌の中で 「愛を語るハイ…

「作者の事情により作品の評価がそれまでと変わってしまう事」についての考察

モノ それ自体は変わらないのに ある事が判明した途端 それ以前と以後とでは 見る人の評価がガラッと変わってしまう。 そういうことって 結構ちょくちょく見かけますよね。 たとえば 一例を挙げてみますと ここに 一つの陶器があります。 これは とある巨匠…

ドストエフスキー「白夜」~ 超空想癖青年の淡く切ない恋物語。

今回はロシアの文豪 フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)の短編小説 「白夜」をご紹介いたします。 こちら 「罪と罰」(1866年) 「カラマーゾフの兄弟」(1880年) などの長編小説で知られる大作家ドストエフスキーが 処女作発表から2年後の1848年 27歳の…

吉川英治「剣の四君子」から御子神典膳と兄弟子・善鬼の対決の話。

吉川英治の 「剣の四君子」(昭和17年刊) という短編小説集の中で 私の心に非常に強く 印象に残っているエピソードがあります。 それは 柳生家と並んで徳川将軍家の剣術指南役となった 小野派一刀流の開祖 小野次郎右衛門忠明が まだ若き修行者で 御子神典膳(…

「ロビン・フッドの愉快な冒険」~民衆のヒーローは出世なんかしない方が幸せだったのかも……。

先日、アメリカの作家 ハワード・パイル(1853-1911)による 「ロビン・フッドの愉快な冒険」 を読んで久しぶりに 愉快・痛快・爽快な気分になりました! ロビン・フッドの愉快な冒険 (光文社古典新訳文庫) 作者:ハワード・パイル 光文社 Amazon ロビン・フッ…

怪談「鳥取の布団」のご紹介〜ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「知られぬ日本の面影」より。

ギリシャ生まれの作家 小泉八雲こと ラフカディオ・ハーン(1850-1904) 彼が1894(明治27)年に著した 「知られぬ日本の面影」(Glimpses of Unfamiliar Japan) という本の中には その当時、日本各地に伝えられていた さまざまな神話や伝説が収録されているので…

エッセイが好き!~私の好きなエッセイシリーズ5選

エッセイって良いですよねぇ。 自分以外の他人が 何について どんな風に感じているのか? とか どんな風に思考を巡らせているのか? って なかなか興味深いものがあるのですが そういう所を サラッと気楽に窺い知ることが出来るのがエッセイの良い所! 私は…

ケルトの妖精物語には日本の昔話にソックリなものがある!~W・B・イエイツ「ケルト妖精物語」

今回は アイルランドの詩人 ウィリアム・バトラー・イェィツ(1865-1939)が アイルランドの民間伝承を拾い集め、編纂した 「ケルト妖精物語」 という本をご紹介いたします。 ケルト(Celt)というのは 紀元前5世紀ごろからヨーロッパの中西部で繫栄していたもの…

"ロボット"という言葉はここから生まれた!〜カレル・チャペック「ロボット」の感想とご紹介。

今回は チェコ(旧チェコスロバキア)の作家 カレル・チャペック(1890-1938) が1920年に出版した戯曲 「ロボット」 のご紹介をいたします。 この戯曲は1920年 日本でいうところの大正9年に出版され 翌1921年に初演されています。 1920(大正9)年 と言いますと 5…

バルザック「谷間の百合」の感想とご紹介~恋のお相手は何故か人妻ばかり……。

今回はフランスの文豪 オノレ・ド・バルザック(1790-1850) の長編小説 「谷間の百合」(1835年) のご紹介をいたします。 「近代リアリズム(写実主義)小説の傑作!」 と謳われております本作 私が読んでみた感想といたしましては 冒頭から98%位のところまで、…

この晩秋旅立ちし愛猫に捧げる挽歌

愛猫のミータを腎不全で亡くしてしまってから、明日で一月になるのですが 悲しさや寂しさは、まだ一向に薄れることが無く 彼が使っていた首輪や、封を切って食べ掛けていたオヤツなどを目にしては、思わずボロ泣きしてしまう……という毎日です。 この苦しい気…

吉川英治「梅里先生行状記」~心優しい水戸のご老公様は、道を外れてしまった家老をどうしたか……!?

今回は 吉川英治が昭和16年に朝日新聞に連載した中編小説 「梅里先生行状記」(ばいりせんせいぎょうじょうき) のご紹介をいたします。 タイトルにある梅里先生とは 徳川家康の孫にして常陸水戸藩の2代目藩主でもある 徳川(水戸)光圀(1628-1701)のことです。 …

遣唐使の任務を「嫌だ!」と拒否した小野篁&頑張って遂行した藤原常嗣のお話

小倉百人一首の中に わたの原八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣り船 (現代語訳) 大海原にある幾多の島を目指し 私は船出したと 人々に伝えてくれ 海人の釣り船よ という歌があります。 これは平安時代初期の貴族 小野篁(おののたか…

「菜根譚」~400年の歳月に裏打ちされた処世の指南書は、ためになる言葉が目白押し!

無人島に一冊持っていくなら「歎異抄」 司馬遼太郎はそう言ったそうですが 私でしたらここで 「菜根譚」をぜひ推したい! 「菜根譚」(さいこんたん)というのは 今から400年近い昔 中国、明朝末期に生きた 洪自誠(こうじせい)という文人が著した 人生の教訓書…

ウィリアム・サローヤン「ヒューマン・コメディ」~珠玉のセリフが心に沁みる名作です。

今回はアメリカの作家 ウィリアム・サローヤン(1908-1981)の小説 「ヒューマン・コメディ」 の、ご紹介をいたします。 「人間喜劇」というタイトルでも知られているこの中編小説は 1943年 サローヤン35歳の時の作。 郷愁を感じさせる、しみじみと心暖まる物…

読売新聞朝刊連載小説・角田光代さん「タラント」の感想。

毎日楽しみに読んでいた朝刊連載小説 角田光代さんの「タラント」が、今日、遂に完結しました。 本当に素晴らしい物語で、読んでいる時には何度も心が震え、終章を読み終えた時には涙が滲んでいました。 この先書籍化されて、より多くの人の元に届けられるべ…