TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「作者の事情により作品の評価がそれまでと変わってしまう事」についての考察

モノ

それ自体は変わらないのに

ある事が判明した途端

それ以前と以後とでは

見る人の評価がガラッと変わってしまう。

そういうことって

結構ちょくちょく見かけますよね。

 

 

たとえば

一例を挙げてみますと

 

 

ここに

一つの陶器があります。

 

 

これは

とある巨匠が作った芸術作品であると言われていて

莫大な値段が付けられています。

 

 

「さすがは巨匠の作品!」

「素晴らしい!」

「写真撮らせて」

「私も見たい」

みんなが口々に褒めちぎり、一目見ようとワンサカ押しかけてきます。

 

 

ところが

実はそれは、巨匠の名を騙った

素人が作ったニセモノであることが判明。

 

 

陶器は

途端にゴミ扱いされ

誰にも見向きもされなくなりましたとさ……。

 

 

───この問題

 

以前、下の記事を書いた時以来

ずーっと考え続けていたんです。

 

「芸術とは何か?」を考えた記事。

todawara.hatenablog.com

 

なかなか容易には答えが出なかったんですけど、最近になって

「もしかして、こういう事なのかな……?」

という考えが浮かびましたので

 

ちょっと、そのことについて書いてみようと思います。

 

 

モノ自体には変化がない

にもかかわらず

「素晴らしい」から「ゴミ扱い」へと

評価がガクッと下がってしまう

───となると

 

人々が当初誉めそやしていたのは一体だったのか?

というところが

疑問に思えてきてしまいますよね……。

 

彼らが見て評価していたものは

作品自体の純粋な価値では無かったのか?

 

巨匠が作った物なら何でも素晴らしいって

盲目的にそう思ってるだけで

 

作品自体の善し悪しを見分ける審美眼なんて、最初から持ち合わせてないんじゃないの?

 

───そんな風にも思えてきてしまいます。

 

 

でもですね

 

考えて見たら、これって

ある意味当然の事だとも言えるんです。

 

なぜかというと

 

人って

モノを見て判断を下す時

 

そのモノになにか背景があったとしたら

そういう情報をすべて込み

総合的に「好き嫌い」を判断するところがある

───そう思いません?

 

たとえば、こういう綺麗な指輪があったとしても、もしこれが「肥溜めの中から見つかったモノ」だとしたら、「なんかちょっと嫌だな……」って思う───みたいな。

 

先ほどの話の場合

 

人々は元々

その作品の背後にある

巨匠の人生人間性というものを大いに評価していて

 

作品の価値はそれぐるみで

総合的に評価されていたんです。

つまり

「あの巨匠の作品」という理由で

かなりの評価の底上げがあったという事。

 

それが

「別人の作品だった」となった場合

 

評価がガクーンと下がってしまうのは

まあ

致し方ない話なんです。

 

 

 

人間は

モノそのものを

単独のモノとしてでなく

その背後にある情報全てをひっくるめて

好きだとか嫌いだとか

総合的に評価している ───

 

─── どうも、そんな風に思えてならないんですよね。

 

またひとつ

違う例えをあげてみますと

 

こういう形の

年代も材質もデザインも

全く同じ2本あったとしますよね。

 

 

一方は

伝説の英雄が神から授かり、巨悪を倒した時に使っていた

といういわれがあり

ヨーロッパの王室に代々伝わっている

 

そして

もう一方は

ごく最近になって、どこかの骨董品屋の蔵から見つけ出されてきた剣です。

 

 

この場合

 

英雄が使っていたという伝説がある剣の方が、最近見つかった剣より

「なんかスゴっ!」

って思われるのは当然だと思いませんか?

 

モノの評価には

その背後にある情報というものが

どうしても

かなりの割合で関わってくると思うんですよ。

 

作者が誰か?

とか

作者はどんな人か?

なんて情報も、その一つ。

 

 

ですから

 

全く同じように見えるモノでも

作者が誰か、という所によって

まるで違う評価になる

 

───というのは

大いにありうることでして。

 

同様に

 

これまで好評だった作品群が

作者の不祥事によって

マイナスイメージが付いてしまい

すっかり顧みられなくなってしまう

 

なんて事も

これまた良くある事でして……(^^;)

 

「作者は関係ないだろう。作品だけを純粋に評価してくれ!

 

そんな声もよく聞きますし

その心情はよくわかるんですけど

 

実際のところ

付帯情報を完全に排除して

モノ単体を純粋に評価する

というのは

結構難しい事なのかもしれません……。

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

 

「芸術とは何か!?」プラトンアリストテレスが議論します。

todawara.hatenablog.com

 

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。