TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

日本文学(近現代)

菊池寛「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」の感想~文豪と呼ばれる人の作品はやっぱりズバ抜けています。

本屋さんだけではなく、いまやネット上の世界でも たくさんの小説に出会える時代となりましたが 小説の良し悪しの判断って、 正直ちょっと良くわからない所ありますよね。 さすがに てにをはが滅茶苦茶だとか、誤字や言葉の間違いが多すぎる、なんてレベルだ…

超ハイセンスでリッチな高等遊民〜青山二郎のエッセイ集「鎌倉文士骨董奇譚」

今回は 装丁家、陶器の鑑定家として知られた 青山二郎(1901-1979)の随筆集 講談社文芸文庫刊の 「鎌倉文士骨董奇譚」 という本のご紹介をいたします。 鎌倉文士骨董奇譚 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:青山 二郎 発売日: 1992/12/03 メディア: …

色づいた木の葉舞い散るこの季節、北原白秋の詩を想います。

師走も半ばになり、黄色や赤に色づいた木の葉が、風に吹かれて散っています。 自転車に乗っていたら、その光景があまりにも綺麗だったので 「あかしやの 金と赤とが ちるぞえな……」 という 北原白秋の詩が心に浮かんできました。 片恋 あかしやの金と赤とが…

お十夜孫兵衛「縮緬ぞッき」の謎!〜吉川英治の名作伝奇小説「鳴門秘帖」について。

上下黒ぞっきの着流しに 顔を覆ったお十夜頭巾 チャラリチャラリと雪駄で歩く 剣の達人にして女好きの辻斬り浪人 お十夜孫兵衛 ──── 吉川英治の出世作 「鳴門秘帖」に出て来る ダークヒーロー お十夜孫兵衛ですが 彼の服装の描写でよく出てくる 「黒ぞっき」…

幸田露伴「魔法修行者」のご紹介〜室町から戦国期にかけて実在した「飯綱使い」の魔術師たち!!

先日、岩波文庫から出ている幸田露伴の 「幻談・観画談」を読みました。 幸田露伴(1867-1947)と言えば 「風流仏」(明治22年) 「五重塔」(明治24年) などを書いていた青年期には 尾崎紅葉と並ぶ人気作家で 「紅露時代」と呼ばれたほどの一時代を築いたお人。 …

岡倉天心「茶の本」のご紹介〜茶の湯の美は老荘思想と禅にあり。

今回は 日本画家岡倉天心が1906年に英文で著し 「The Book of Tea」 として出版された名著 「茶の本」(村岡博訳)の ご紹介をさせていただきます。 「茶の本」というタイトルではありますが こちらの本は、茶道の細かい作法を記したものではなく 茶道というも…

吉川英治「剣難女難」~娯楽小説のお手本とも言うべき面白さ!

今回は 私が一番好きな小説家であり 心のお師匠様でもあります 吉川英治の大正14年の作品 「剣難女難」の ご紹介をさせていただきます。 小学生の頃から文学好きで 自作の文章や俳句などを熱心に投稿していた吉川英治が 初めて小説を書いて送り、当選を果た…

「幸せって…」などと考えていたら、立原道造の詩「夢みたものは…」が胸に沁みてきました。

人はだれしも 幸せになりたいと願っているのでしょうが みなさんは「幸せ」って、どういう状態だと思いますか? 私は今のところ 幸せって 心が穏やかで、満ち足りている状態 なんじゃないかな~、と 漠然とですが思っています。 でも、この 「心が満ち足りる…

織田作之助「夫婦善哉」のレビュー~やっぱり恋は「惚れた方が負け」なんですかねえ。。。

今回は 終戦直後に「無頼派」として一躍脚光を浴び 流行作家として活躍中に、34歳の若さで亡くなってしまった 織田作之助(1913-1947)が 戦前に発表した出世作 「夫婦善哉」(めおとぜんざい)(1940年発表)の ご紹介をさせていただきます。 金遣いの荒いボンボ…

大正時代に幼児の服装として定番だった着物&エプロンスタイルの元祖は、文豪吉川英治かもしれない説。

大正から昭和の始めくらいに撮られた写真を見ると 着物の上に、エプロン風の前掛けをしている幼児が映っていることがありますよね。 大変に愛らしいこのスタイル 大正から昭和の初めごろまで広く愛用されていたもので 「西洋前掛け」というそうです。 小学校…

直木賞のルーツ作家・直木三十五が「ウケる小説」の秘訣を惜しげもなく伝授!~「大衆文芸作法」

先日、 私は直木三十五が書いた 「大衆文芸作法」 という論文を読みました。 直木三十五と言えば エンターテインメント小説に贈られるビッグタイトル 直木賞の由来ともなっている 戦前の花形大衆小説家。 いわば エンタメ小説の レジェンド 的存在です。 こ…

飽くことなき冒険魂!~植村直己「青春を山に賭けて」のレビューと感想

冒険家の植村直己さんが 犬ぞりによる北極点到達を世界で初めて成し遂げ さらに、犬ぞりによる単独でのグリーンランド縦断を成し遂げた1978年 私はまだ子供だったため 植村さんに対するイメージは 「犬ぞりの人」 として心に焼き付いていました。 実際の植村…

吉川英治には小説以外にも、素敵な詩歌がたくさんあるんですよ。

今回は 私が最も尊敬している小説家 吉川英治の作った 詩歌をご紹介させていただきます。 吉川英治と言えば 「宮本武蔵」や 「三国志」 「新・平家物語」などの 大河小説を書いた作家として有名ですが 彼の文芸創作への入口となったのは 幼い頃から親しんで…

ルーズヴェルト大統領を動かした日露戦争終結の影の立役者!~新渡戸稲造著「武士道」について

今回は 明治32(1899)年にアメリカで出版され 世界中の人々に日本人の精神性を理解させる一助となった 新渡戸稲造(1862-1933)の名著 「武士道」の 感想とご紹介を書かせていただきます。 新渡戸(にとべ)稲造 と言いますと 1984(昭和59)年から2007(平成19)年ま…

徳冨蘆花「不如帰」の薄幸のヒロイン、浪子さんの面影を求め、逗子を歩いてきました。

明治時代の大ベストセラー小説として、幾度となく舞台化、映画化されてきた、切ない悲恋の物語 徳冨蘆花(1868-1927)の 「不如帰」(ほととぎす) 「もう、もう、二度と女なんかに生れはしない……」 先日それを読み、案の定 「浪子さん、可哀想だぁ。。。」(´;ω…

甥御さんが書き記した文豪・直木三十五の素顔とその生涯~「直木三十五伝」の感想とご紹介

今回は、戦前のスター作家 直木三十五の生涯を 甥御さんにあたる 元㈱テレビ東京社長 植村鞆音さんが綴られた 「直木三十五伝」の 感想、およびご紹介を書かせていただきます。 直木三十五伝 (文春文庫) 作者:植村 鞆音 発売日: 2008/06/10 メディア: 文庫 …

島崎藤村の「若菜集」から、「鶏」という詩をご紹介いたします。

以前、島崎藤村の詩のご紹介記事を書いた時に 「この詩が、ものすごくドラマチックで良いんですよぉぉ~!」 と言っておススメしたものの ブログに引用して載せるにはちょっと長すぎるかなあ? と思ったため タイトルだけのご紹介になってしまっていた 「鶏…

与謝野晶子自選「与謝野晶子歌集」のご紹介~散る時も開く初めのときめきを失はぬなり雛罌粟の花

今回は 与謝野晶子(1878-1942)が自らの歌を選び 昭和13年(60歳の時)に刊行した 「与謝野晶子歌集」 のご紹介と感想を書かせていただきます。 本名は「志よう」。大阪の和菓子屋「鳳」家の三女として生まれました。 与謝野晶子と言えば 「みだれ髪」 での情熱…

「富岡日記」~日本の近代製糸業の立ち上げ期に全力で頑張った武家娘お英ちゃんの手記

明治から昭和にかけて 我が国の主要な輸出品であった生糸。 その生産の現場を描いたものといえば、まず思い浮かぶのが 「ああ野麦峠」 などで劣悪な環境下、過酷な労働に従事させられていた若い女工さん達の姿ですが 今回ご紹介いたしますのは 現場がそこま…

吉報!!吉川英治記念館が2020年9月に再オープンする見通しとなりました!!

(※こちらは2019年12月11日の記事です) 2019年3月20日 多くのファンに惜しまれながら閉館した 吉川英治記念館が このたび青梅市営となって 2020年9月7日 (吉川英治の命日)に 再び オープンされる 見通しと なりました!! 東京都青梅市にあるこちらの記念館(…

直木三十五「南国太平記」~幕末薩摩藩のお家騒動を描いたダイナミックな群像劇

今回は 戦前の大衆小説の花形作家 直木三十五の代表作 「南国太平記」 について書かせていただきます。 ------- 内容 時は幕末 舞台は南国薩摩藩。 藩は目下 老藩主島津斉興(なりおき)とその愛室お由羅の方が率いる 保守派 と 40歳になっても家督を譲…

吉川英治と直木三十五~大衆小説花形作家同士のライバル心と友情!!

今回は 直木三十五と吉川英治の交流について書こうと思います。 吉川英治の名作 「宮本武蔵」 が生み出されるきっかけには 直木三十五が唱えていた 「武蔵非名人説」というものがありました。 剣道の歴史について非常に熱心に研究していた直木が 「宮本武蔵…

大衆小説のレジェンド・直木三十五の墓所と旧宅跡をたずねに行きました。

先週末、横浜市内にある 直木三十五の住居跡と お墓のある長昌寺をたずねてきました。 直木三十五といえば 芥川賞と並ぶ小説界のビッグタイトル 直木賞の由来となっている 戦前の人気小説家であり 私が尊敬している吉川英治とも 同じ大衆小説家同士として 盟…

彼岸花の咲く季節になると、北原白秋の「曼珠沙華」というちょっと怖い詩を思い出します。

彼岸花の美しい季節ですね。 秋のお彼岸の時期(9月半ば過ぎ頃)に咲く事から名づけられた「彼岸花」という名称には 毒草であるために 「これを食べたら彼岸(あの世)に行ってしまう」 ということに由来している と言う説もあるそうです。 この花が水田の畔や墓…

「滝の白糸」で知られる泉鏡花「義血侠血」について~これは師匠・尾崎紅葉とのコラボ作品と言ってもいいかも~

今回は舞台の方でも有名な「滝の白糸」の原作 泉鏡花の「義血侠血」のご紹介をさせていただきます。 明治27年に読売新聞紙上に掲載されたこの作品は 鏡花が21歳の時の作。 彼はこの前年 師匠である尾崎紅葉の斡旋によって 「冠弥左衛門」を京都日出新聞に連…

「遠野物語拾遺」から~芸達者な猫が逆上して取り返しがつかないほどブチ切れてしまう話の紹介

「遠野物語」に収めきれなかった話などをまとめて 昭和十年(1935) その続編のような形で出版されたのが 「遠野物語拾遺」です。 伝承の収集に多大な貢献をしてくれていた 協力者の佐々木喜善は その2年前 1933年に46歳の若さで病没してしまっていました。 「…

「遠野物語」の河童のお話~人間の娘と恋愛したり、悪さして村人に捕まったり。

「遠野物語」には幽霊だけではなく 天狗や座敷童、雪女なども語られているのですが 中でも有名なのが 河童の話です。 そこで今回は 「遠野物語」に語られている 河童のお話をご紹介させていただきたいと思います。 一般的に思われている河童の顔色は緑色です…

「遠野物語」とか「耳袋」とか読むと幽霊って本当にいるんだろうなあって思います。。。

今回は柳田国男(1875-1962)の名著 「遠野物語」と 江戸時代に書かれた 「耳袋」とに ちょっと似通った幽霊譚がありましたので それをご紹介させていただきます。 まずは「遠野物語」の概略と感想を。 民俗学者柳田国男が35歳(明治43年)の時に著したこの説話…

吉川英治「松のや露八」の紹介と感想~幕末期、幕臣から幇間になった武士がいた!

今回は 私が最も尊敬している小説家吉川英治の 「松のや露八」の ご紹介と感想を書かせていただきます。 昭和9年にサンデー毎日誌上で連載されたこちらの作品は 幕末から明治にかけて生きた、実在の人物を主人公にしています。 その人物は 土肥(どひ)庄二郎 …

大学生たちが手作りヨットで日本一周!!「ヤワイヤ号の冒険」の感想

昭和36年6月30日 小さな一艘のヨットが福井県小浜の港を出港し 東へと漕ぎだしていきました。 そこに乗り込んでいるのは 高校時代の友人達で作った 「冒険クラブ」のメンバーである大学生たち。 それまで主に登山を中心として活動していた彼らは前年の秋 「…