TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

ドストエフスキー「白夜」~ 超空想癖青年の淡く切ない恋物語。

今回はロシアの文豪

フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)の短編小説

「白夜」をご紹介いたします。

 

 

こちら

 

罪と罰(1866年)

カラマーゾフの兄弟(1880年)

などの長編小説で知られる大作家ドストエフスキー

 

処女作発表から2年後の1848年

27歳の時に発表した作品なのですが

 

長さ的にも短編とあってコンパクトですし、内容的にも文章的にもかなり読みやすいので

 

ロシアの文豪の小説なんて重たそう!

───なんて気負う事も無く

 

気軽にエンタメ的に楽しめる作品だな!

という感想を抱きました。

 

 

この作品が発表された

1848年とは

どのような年かといいますと

 

日本は

幕末弘化5年───3月から嘉永元年改元されたという年であり

 

ヨーロッパでは

フランス、オーストリアハンガリーで相次いで革命が起こり

 

マルクスエンゲルス共産党宣言を発表した年でもあります。

 

───で

この「白夜」という作品はといいますと

 

そんな世界の情勢とは

ほとんど全く関係ない

 

市井の一青年に起こった

淡くほろ苦い恋の物語となっております。

 

 

内容をかいつまんで言いますと

以下のようになります

 

----------------

 

ペテルブルクに住んでいる、孤独で空想癖の強い青年が、ある白夜の晩に散歩に出ている時

運河の欄干の所で泣いている少女、ナースチェンカを見つけました。

 

彼は酔っ払いに絡まれそうになっている彼女を救い、そしてをしてしまいます。

 

─── けれども

 

彼女には、離れ離れになった恋人がいて

約束したこの時間、この場所で再会することを心待ちにしており

そのために夜も遅いこの時間、この場所(運河の欄干)に来ている、というのです。

 

その夜も、次の夜も

どういうわけか

彼女の恋人は、いつまで待っても、やっては来ませんでした。

 

「もしかして、もしかしてあの人はもう……私の事なんか……」

 

そんな風に不安になってしまう彼女を励まし、なんとか彼らの恋の仲立ちを務めようと思う主人公……。

 

─── 本当は、彼女のことが好きなのに……。

 

----------------

 

 

 

この「白夜」というお話には

「感傷的ロマン」

「ある夢想家の思い出より」

という二つの副題が付けられています。

 

たしかに

話の筋としてはロマンチックなので、あらすじだけを見ると

「ありがちな恋愛モノかな?」

なんて思われてしまいそうなのですが

 

そこはドストエフスキー

 

実は、主人公の空想癖がちょっと度を超えておりまして

相当に変わり者という印象を受けます。

 

また

ナースチェンカが一緒に暮らしているというモラハラ気味の祖母

過干渉振りがちょっと尋常じゃない感じ

 

そんな、やや不穏な空気を孕みつつ展開していく恋物語なんです。

 

 


ドストエフスキー1846年

25歳の時に中編小説「貧しき人々」小説家としてデビューしました。

 

この処女作は各所で絶賛されたものの

その後相次いで発表された

「白夜」「二重人格」などの作品は

酷評されてしまっていたそうです。

 

……厳しいですねぇ。

 

なにがどう「悪い」って言われたんでしょう……?

 

私の感想としては

結構面白かったですよ?

 

 

「白夜」は、かなり頻繁に

映画化もされているようです。

 

 

1957年 ルキノ・ヴィスコンティ監督の「白夜」

ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞

 

1971年 ロベール・ブレッソン監督の「白夜」

 

2008年 ジェームズ・グレイ監督の「トゥー・ラバーズ」も「白夜」をモチーフにしています。

 

その他にも

ソビエトやイランやインドなどなどで

たくさんの「白夜」映画が作られています。

 

 

作品が発表されてから100年以上も経っているのに

こんなにたくさん映画化されている ───

 

───そのこと自体が

この小説の魅力を物語っているんじゃないかな、と思いますよ。(^_^)

 

 



 

 

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