TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

”SF小説の父”が空想した恐ろしき未来世界!~H.Gウェルズ「タイムマシン」のご紹介。

今回はSF小説の始祖とも称され

「タイムマシン」という言葉の生みの親でもあるイギリス人作家

ハーバート・ジョージ・ウェルズ(1866-1946)が29歳の時に発表した小説

「タイムマシン」(1895年)のご紹介をいたします。

 

 

ウェルズ本人が1931年度版「タイムマシン」の序で書いている所によりますと

 

ジャーナリストの端くれとして、その日ぐらしに追われていた若い頃。

突然、記事が全く売れなくなってしまい

新規撒き直しを期する気持ちで、この小説に取り掛かったのだそうです。

 

当時、暮らしていたケント州セヴンオークスの下宿で

真夏の夜更けに、窓を開け放ちながら

一心不乱で原稿に取り組んでいる、若き日のウェルズ────

 

そんな彼に向かって

下宿のおばさんがしばしば、こんな言葉を投げつけて来ました。

 

「いつまでランプつけてんのよ。明るくって寝られやしないわよ!!」

 

そんなうるさい小言を耳に

彼の筆は非常にはかどったそうです。

 

 

この物語が発表された1895年明治28年

日本では樋口一葉が雑誌「文学界」たけくらべを連載していた年です。

 

日本に翻訳・紹介されたのは1913年(大正2年)

黒岩涙香が自身の主宰する新聞「萬朝報」(よろずちょうほう)紙上で

「八十万年後の社会」

というタイトルで連載発表しました。

 

それでは以下に

内容をざっくりとご紹介いたします。

 

 

時は19世紀末、場所はロンドン郊外、リッチモンドにある邸宅。

 

一室に医師や心理学者など、知識人の仲間達を集め

主人公のタイムトラヴェラー

新発明の装置・タイムマシンの試作品を披露していた。

 

一同の前で実際にそれを試運転し、装置を時間の彼方に飛ばせてみせたりしたのだが

残念ながら、その時には

誰もそれを本当の事だとは思わなかった。

 

 

その後のある日。

 

主人公宅でいつもの食事会が行われ、知人たちが集まって来たものの

肝心の主人公は、どういうわけか

食事の時間になっても姿を現さない。

 

一同が待ちあぐねている所へ、ようやく姿を現した主人公。

 

ところが、一体どうした事か

彼は傷だらけの泥まみれ。げっそりやつれ果てたズタボロな姿で、ヨレヨレになっていた。

 

 

 

彼は自作のタイムマシンに乗り

遠い遠い未来を旅して来て

今、どうにかこうにか、ようやっとこの時代に戻って来れた所だと話した。

 

 

彼が語る所によると

彼のマシンが到着(落下)したところは

80万2000年未来のロンドンだった。

 

その時代の気候は、今より暖かく

未来人たちは総じて小柄で華奢で優美な姿をしていて、子供のように無邪気。

果物を食べて生きる、完全なる菜食主義者だった。

 

 

しかし

やがて、主人公は気が付くのである。

 

この未来人たちには

好奇心というものがまるでない。

 

人類が完全に自然の困難を克服し、何不自由なく安楽に暮らせるようになってから

さらに長い長い年月を経て

 

人々は、熱意知的好奇心といったものを、完全に喪失してしまっていたのだ。

 

ところが実は……

 

この時代には人類は

二種類に分かれて進化していたのである。

 

主人公が今まで見ていた、優美で可憐で柔弱な人々は

かつての支配階級層の子孫たちで

地上に暮らすイーロイ人

 

一方

 

かつての労働者階級の子孫たちは

地下深くに潜って

これまた独自の進化を遂げていた。

 

イーロイ人よりは、知性も勤勉性も持ち合わせてはいるものの

薄気味悪い生白さで、化け物のような醜怪な姿に進化した、彼らモーロック人たちは

 

夜な夜な地上に這いあがって来ては

イーロイ人達を捉えて喰らう

人喰い人種と化していたのである……

 

 

 

────と

こんな感じの話となっております。

 

 

平和で安楽な状態に適応し過ぎたことにより

すっかり腑抜けになってしまったイーロイ人ですが

 

情報技術の発展やAIの登場により

ものごとを深く考える習慣の無くなり始めた我々現代人は

すでに、彼らのようになる一歩を踏み出してしまっているのではないか

ちょっと怖くなってしまいますね……。

 

いや~、それにしても

明治時代に「タイムマシン」なんて言葉が生まれていたなんて、ビックリです。

 

人間が

「こんなものがあったらいいな」

と空想したものって

数年後、数十年後に実現されてる場合が多いですけれど

タイムマシンの実現性って、どうなんでしょう……?

 

私個人の空想的見解なんですが

こんにちUFOとして見られているものの中には

未来人が乗ったタイムマシンも混ざっているんじゃないのかな……?

 

 

さて

ところで。

 

時間旅行を可能にする装置に

「タイムマシン」

という名前を付けたのはウェルズなのですが

 

実は、時間旅行を可能にする装置自体

スペインの作家エンリケガスパール・イ・リンバウ(1842-1902)

「タイムマシン」に先立つこと8年前

小説アナクロノペテー」(1887年)

にて登場させたのが元祖となっております。(^^;)

 

(1887年は明治20年。日本ではそれまで観賞用とされていたトマトが食用として栽培されるようになった頃)

 


以下にご紹介しますのは

ウェルズが1933年「タイムマシン」を振り返って

自らの小説技法について語っている言葉です。

 

読者が空想譚を心おきなく楽しむ手助けに、作者はできる限り工夫を凝らして、読者が知らず知らずのうちに不可能な仮説を受容するように仕向けなくてはならない。

もっともらしい説明を重ねて、なるほどそんな事もあろうかという了解を取りつけ、その錯覚が持続している間に話を先へ運ぶのである。

私の作品に多少とも新味があると受け取られたのはそのせいだ。

従来、冒険小説は別として、ファンタジーの要素は魔法頼みが普通だったが、そこで私は考えた。

魔法に代えて科学の言葉を巧みに使ったら、もっと奥深く大仕掛けな話が出来るのではなかろうか……

 

小説ばかりではなく、漫画やドラマや映画など

物語を創る人全般にとって

非常に示唆に富んだ言葉なのではないでしょうか。(^_^)

 

 

 

 

 

 

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