TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

秋海棠の別名は「断腸花」~ベゴニアの仲間でベゴニアそっくりだけどベゴニア扱いはされません。

夏から秋にかけて花を咲かせる

秋海棠(シュウカイドウ)という植物があります。

 

たいへんに可憐で美しい花なのですが

この植物

断腸花(ダンチョウカ)なんていう別名を持っているんですよ。

 

 

断腸って……。(*_*)

 

字面だけ見ると

なんだか切腹みたいな感じがして

ちょっとグロ恐ろしいイメージすらしますよね……。

 

こんなにカワイイお花に

どうしてこんな名前が付けられているのでしょう?

実は、断腸という言葉には

ハラワタを断ち切ること。

という意味の他に

ハラワタが断ち切れるくらいに、悲しく辛いこと。

という意味があるんです。

 

「断腸」語源には

こんなエピソードが伝えられております。

 

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むかしむかし

中国の晋という国に桓温(かんおん)という武将がおりました。

 

彼が三峡の川を渡って旅をしていた時

家来が一匹の子猿をつかまえてきました。

 

子猿を奪われた母猿

えんえん百里余りも、一行を追いかけ続け

ついに船に飛び移ってきたものの

そのまま力尽きて、死んでしまいました……。

 

その母猿の腹を割いてみたところ

辛さ、悲しさのあまり

腸がずたずたに断ち切れていたんだそうですよ……。

 

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我が子を突然奪われてしまった母猿が、どんなに悲しく辛い思いをしながら追いかけて来たか……。

あまりに可哀想すぎて、胸が痛くなるようなエピソードですよね……。(T_T)

 

 

切なさ、辛さを表す「断腸」という言葉のとおり

断腸花という秋海棠の別名にも

実は

悲しい恋の物語が秘められています。

 

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むかしむかし

中国のあるところに、大変に美しい女の人がおりました。

 

彼女には大大大好きな男の人がいまして

毎日、彼に逢う事が何よりも楽しみだったのですが

ある時

この彼によんどころない事情が出来て

しばらくの間、彼女の元に来られなくなってしまいました。

 

そんな事情を全く知らない女の人。

「どうしてあの人は来てくれなくなったのかしら。もしかして……いや、でも……きっと明日こそは……」

と、毎日毎日、辛く悲しい思いをしながら、ずっと彼を待っておりました。

 

やがて──

彼女がポロポロと涙をこぼした地面から、草が生えてきました。

それは、紅色の美しい花を咲かせる秋海棠となりました。

 

秋海棠の花のように美しい女性が流した、切ない涙から生まれた花────

 

そんなことから

秋海棠には「断腸花」という別名が付けられたんだそうですよ。

 

 

 

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あいたくてもあえない悲恋の物語ですが

美人の涙から生まれた花、なんて

甘やかでロマンチックな感じがしますねえ……。

 

秋海棠にはこの他にも

「相思草(そうしそう)

とか

「瓔珞草(ようらくそう)

などといった素敵な別名があります。

※瓔珞というのは仏具などで飾られている飾りの事。

 

 

────ところで。

 

秋海棠のこのお花。

 

シュウカイドウ

お花屋さんでよく売られている

ベゴニアにそっくりだと思う方も多いのではないでしょうか。

 

ベゴニア

良~く見てみると

葉っぱの形や質感など

違う所も多々見えてくるのですが

花の形なんかはソックリですよねえ。

 

それもそのはず

 

秋海棠の学名Begonia grandis

 

秋海棠は

ベゴニア(シュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物の総称)の中の一種なんです。

(シュウカイドウ属はベゴニア属といわれる時もあります)

 

ただ

秋海棠は江戸時代に中国から入って来てから

日本に定着して、長い間親しまれているので

 

近年になってから入ってきたベゴニアとは、なんとなく区別されているそうです。

(一般的には「ベゴニア扱い」されない)

 

 

作家 永井荷風の雅号「断腸亭」なども

秋海棠から来ているそうですよ。

 

新宿余丁町にあった彼の家の庭には

秋海棠の花が咲いていたそうです。

 

 

そんな秋海棠の花言葉


「片思い」

「恋の悩み」

「未熟」

「自然を愛す」

 

なんとなく

「断腸花」のエピソードを思わせるような花言葉ですね。      

 

 

 

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