TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「ロビン・フッドの愉快な冒険」~民衆のヒーローは出世なんかしない方が幸せだったのかも……。

先日、アメリカの作家

ハワード・パイル(1853-1911)による

ロビン・フッドの愉快な冒険」

を読んで久しぶりに

愉快・痛快・爽快な気分になりました!

 

 

 

ロビン・フッドといえば ────

その名前こそ非常に有名ですが

 

なにせ遠〜い外国(中世イングランド)の

しかも伝説上の人ですから

 

彼の物語の内容までを知る人は

実際の所、あまり多くはないのではないでしょうか。

 

「弓の達人」

「権力に屈しない義賊」

というイメージ的に

 

同じく中世に活躍したという

スイスの英雄ウィリアム・テルと被ってしまい

 

どっちがどっちだか

わかんなくなっちゃったりしますよね。(^^;)

 

 

ロビン・フッドの物語──ざっくりいうとこんな内容

 

自慢の腕を披露すべく、弓試合に向かおうとしている途中で

ひょんなことから人を殺めてしまい

天下のお尋ね者となってしまった若者ロビン・フッド(18歳)。

 

やむなくシャーウッドの森の中に隠れ住んでいるうちに

やがて彼は、そこを拠点とした

盗賊団の首領みたいな感じになって行きました。

 

彼をはじめ

彼のもとに集まった仲間達も

腕っぷしはベラボウに強いが

人情には篤いイイ奴ばかり!

 

 

大貴族や修道院長が

庶民からお金や土地を奪ったら

それをすぐさま奪い返してあげる。

 

貧しい人々が困っていたら

お金や食べ物を恵んであげる。

 

強きをくじき

弱きを助ける

 

そんな彼らは、たちどころに

近隣住民たちのヒーロー的な存在となっていきました。

 

陽気で愉快で

ちょっとオッチョコチョイな所もある

ロビン・フッドとその仲間達。

(ノッポのリトル・ジョンや剽軽なタック修道僧、美男子ウィル・スカーレットなどなどの面々)

 

彼らは

「何か楽しい事しようぜ〜!」と言いながら

 

意地の悪い陰険な

ノッティンガムの長官(打倒ロビンに燃える男)を

おちょくり倒したり

 

欲深くて腹黒い

エメット修道院(ロビンを目の敵にしている男)に

一泡吹かせたりして

 

面白おかしくも

スリルあふれる毎日を送っているのでありました───

 

 

 

14世紀の後半ごろからイングランドで語り伝えられてきたという

義賊ロビン・フッドの伝説 ───

 

ロビン・フッドの研究者として知られている

J.C.ホウルト(1922-2014)

そのモデルとなった人物として

 

13世紀初め頃の裁判記録に記されていた

ロバート・フットという人物なのではないか

と、目しています。

 

しかしながら、その説も

現在の所、確たる証拠はなく

 

ロビン・フッドは架空の人物なのではないか?

はたまた

妖精や植物の神なのではないか?

などという意見もあったりして

 

その実在性は、いまのところ

に包まれているそうです。

 

 

長い年月の間に、様々なバリエーションで語られてきたロビンフッドの伝説。

 

その個別のエピソードを

アメリカの挿絵画家ハワード・パイル

1883年(明治16年)

 

楽しい一続きの物語として

きちんとつじつまが合うようにまとめあげたのが

 

本書ロビン・フッドの愉快な冒険」になります。

 

 

子供たちのために

愉快冒険

というところに重点を置いてまとめあげられたものですので

 

わくわくするような面白エピソードが満載!

 

────その反面

 

子供受けの悪そうな

恋人マリアンとの恋愛エピソードなどは

バッサリカットされております。(^^;)

 

 

ロビンが、腕っぷしの強いメンバーを

一人一人仲間に加えてゆく過程としては

 

散歩途中のロビン(喧嘩好き)と

相手(喧嘩好き)とがバッタリ出くわし

 

双方の意地の張り合いから

棒っきれを打ち合う勝負になって

 

お互いの余りの強さに

双方一目置き合う仲となる────

 

───というパターンが多いのですが

 

 

私はここに、なんとなく

中国の水滸伝(北宋末期、お尋ね者たち108人のアウトロー梁山泊という自然要塞に大集結し、悪徳役人を打倒し国を救おうとする話)と通じるものを感じました。

 

他に行く所のないお尋ね者たちが続々と集まってくる

シャーウッドの森

そして「水滸伝」の

梁山泊

 

洋の東西は違えども

なんか、共通するものありますよね……。(^^;)

 

 

盗賊だとか山賊とかの事を指す

「緑林の徒」

という言葉があります。

 

まるで

森に住んでグリーンをシンボルカラーにしている

ロビン・フッドのイメージそのものなんですけど

 

この「緑林」というのも

 

中国、前漢時代の末期

王莽(おうもう)が建国した王朝の失政に反乱を起こした

民間武装勢力緑林軍が語源になっているんですよ。

 

(湖北省緑林山に立てこもった事から緑林軍といいます)

 

 

ロビン・フッドと仲間達は

 

日々、腕っぷしの強さを比べあうために

棒っきれを振り回してバトルし合ったり

殴り合いの試合をしたりして

 

そんな合間にも

 

エール(ビール)をがぶがぶ飲んで

チーズや肉をたらふく喰らって

 

なんか面白い事があったりすると

涙を流しながら

ギャハギャハ笑って暮らしています。

 

実に楽しそうで

うらやましくなってくるほど。

 

気心の知れた、性格の良い仲間達と

こんな風に毎日楽しく暮らせたら

きっと幸せでしょうね……

 

 

 

この先はネタバレになってしまうのですが ────

 

 

ロビン・フッドはやがて

リチャード王(獅子心王)に見出されて、そのお気に入りとなり

 

シャーウッドの森を離れ

ハンティングドン伯爵の地位を賜ることとなります。

 

何年もの間、リチャード王に従って国内外の数々の戦いに参加し、活躍するのですが

 

王が戦いに倒れた後

彼はふたたび

懐かしいシャーウッドの森に帰ってきます。

 

────しかし

 

リチャード王の次に王位を継いだジョン王(失地王と呼ばれた愚王)は

勝手に森に戻ってしまったロビン・フッドを許しませんでした。

 

王は怒り狂い

森に追っ手を差し向けてきたのです。

 

 

以前の、陽気で素朴で気のいい兄ちゃんのままのロビンだったら

 

こんな時にも臨機応変

飄々と王の怒りをかわすことが出来たんでしょうが

 

いったん獅子心王のおそばに仕え

伯爵の称号まで得てしまった彼は

 

ガチバトルで応ずる以外

もうプライドが許さなくなっていました……。

 

その結果

戦いで、多くの仲間が死んでいきました……。

 

やがて、ロビンは病に倒れ

修道院で悲しい最期を遂げることになります……。

 

 

「リトル・ジョンよ、わが友よ、どうかこの矢が落ちた所に、俺の墓を作ってくれ……」病床のロビンはそう言って、修道院の窓の外へ向かって矢を放つのです。

 

 

昔話などではよく

主人公が最終的に金持ちになったり偉くなったりして

「めでたしめでたし」

で終わったりしますけど

 

それが本当に

「めでたし」だったかどうかなんて

 

その後を見てみないと、わかりませんよねえ……。

(牛若丸とか……)

 

ロビン・フッドにとっては

獅子心王に見出される以前の、まだ若い時代

 

気の良い仲間達と、森でわちゃわちゃ過ごしていた時

一番幸せだったんじゃないでしょうか……。

 

きっと、彼自身もそう感じたからこそ

再び森へと帰って来たんだと思います。

 

そんなことを思うと

 

この本のほとんどを占めている

愉快で楽しいエピソードの数々も

 

二度とは戻ることの出来ない若き日の輝き

 

って感じがして

 

なんだかちょっと

切ないような気分になってきますね……。

 

 

 

 

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