「今日はうららかに晴れていますが、明日になると雪が降り、ことによると吹雪になるおそれがあります」
という時に使われる
「おそれ」
という言葉 ───
これ、漢字にすると
正確には「恐れ」じゃなくて
「虞れ」
だって知ってました!?
(私は全く知りませんでした)
この「虞」という漢字
読みは「ぐ」「おそ(れ)」
部首は虍(とらがしら・とらかんむり)
高校生が習うレベルの漢字だという事です。
(高校時代習ったのかどうか自体、私はすっかり覚えていませんが……)
虞れ(おそれ)
という言葉の意味は
心配、懸念、気づかいです。
使用例は
「食べ過ぎて太る虞れ」
「ウィルスが蔓延する虞れ」
など。
一般的に良く使われている
「恐れ」
というのは
「恐怖」の「おそれ」なので
心配の意味で使う場合には、正確には
「虞れ」というのが正しいそうです。
ちなみに
同じように恐怖を表わす意味の
「怖れ」という言葉。
こちらも日常良く使われていますが
「おそれ」の読みとしては
常用漢字表には載せられていません。
(常用漢字表に載せられている「おそれ」は「恐れ」と「虞れ」だけ)
実は「おそれ」という言葉
「虞れ」「恐れ」「怖れ」以外にも
ものすごく沢山
あるんです。
「懼れ」(おそれ)は
「恐れ」「怖れ」と同じで
怖がる、あやぶんでオドオドするという意味。
「悸れ」(おそれ)は
恐怖で胸がドキドキするという意味。(動悸のキですね)
「惶れ」(おそれ)は
心が動揺してオドオドする。
「懾れ」(おそれ)は
身を縮ませて怖気づく。
「悚れ」(おそれ)は
ゾっとして身をすくませる。
「慄れ」(おそれ)は
恐ろしくて震える。(戦慄のリツですね)
「畏れ」(おそれ)は
自分よりはるかに力のあるものを怖い、尊いと思う気持ち。
しかし
これら諸々の「おそれ」は
常用漢字には載っておらず
「おそれ」を代表して常用漢字表に載せられているのは
「恐れ」と「虞れ」だけなのです。
(「虞」は日本国憲法の条文内という華々しい場にも使われているんですよ)
本来的には
恐怖の「おそれ」は「恐れ」
懸念・心配の「おそれ」は「虞れ」
と
書き分けられるべきなのでしょうが
実際の所、現在では
懸念・心配をあらわす「おそれ」にも
「恐れ」または仮名書きの「おそれ」が使われる事が一般的になっているようです。
さて
国語辞典を見ていますと
「虞れ」の項目のすぐ近くに
魘われる(おそわれる)
という言葉が出てきます。
(またまた見慣れない漢字が登場!!)
こちらは
夢で恐ろしいものに苦しめられる。
うなされる。
という意味で使われる言葉で
同様の意味で
魘される(うなされる)
という使われ方をする時もあります。
使用例はそのものズバリ
悪夢に魘われる(おそわれる)……
悪夢に魘される(うなされる)……
使用法があまりにも
限定的過ぎるだろ!
と
言いたくなるような言葉なのですが……(^^;)
こちらの漢字
音はエン、ヨウ
部首は鬼
漢検1級レベルだそうです。
恐ろしい夢にうなされる事として
「夢魘」(むえん)
という言葉があったりもします。
大人気漫画「鬼滅の刃」の作中にも
魘夢(えんむ)さんというキャラクターがいるそうですね。
部首は「鬼」だし
なんかピッタリって感じですね。
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