TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

中国古代神話の聖帝たち「三皇五帝」について、わかりやすく解説いたします。

昔の本 ──

特に「論語」や「孟子」などの中国古典を読んでいると

「堯(ぎょう)」「舜(しゅん)」

なんていう

ほとんど神様に近いような聖君子の名前がいっぱい出てきますよね。

 

漢方薬の神様「神農(しんのう)」だとか

中国医学の祖黄帝だとか

 

イメージが被る部分もあったりして

ちょっと混乱しちゃいそう。

 

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どっちがどっちだったかな~……?」

 

ということで

 

今回はその

エライ神様と聖皇帝たち

いわゆる

三皇五帝

について

なるべく簡単にわかりやすくまとめてみました。

 

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「われら三皇五帝ジャー!」

 

 

三皇五帝(さんこうごてい)

と呼ばれる

古代中国神話世界の

8人の帝王たち。

 

このうち

三皇3柱の神様

五帝5人の聖人

という事になっています。

 

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まずは三皇からご紹介いたしましょう。


 【三皇】さんこう

 

三皇と称される神様やその組み合わせには諸説あるらしいのですが

ここでは代表的なものだけをご紹介させていただきます。<(_ _)>

 

まず最初にご紹介するのが

天皇(てんこう)

地皇(ちこう)

人皇(じんこう)

  という

三柱のメンバーから成る「三皇」です。

 

天皇(てんこう)

天地創造の神・盤古(ばんこ)が太元聖母と気を通じることによって生まれてきた神様です。

見た目は、体がウロコで覆われた髭のオジサン。

 

日本における「天皇(てんのう)」という称号の起源の一つと考えられている「天皇大帝」(北辰の神格化)とは全く別の神様です。(^^;)

 

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地皇(ちこう)

頭部だけが人間の(トサカが付いているけど……)鳥人といった格好の神様。

天皇から生まれ、人皇を生んだそうです。

 

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人皇(じんこう)

地皇から生まれました。

胴体は蛇、顔は牛馬のような雰囲気の獣の形をしています。

 

泰皇(たいこう)と呼ばれる事もあるのですが

人皇泰皇と言い切ってしまって良いのかどうかは、ちょっとあやふやな所があるみたいです。

 

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そして

お次にご紹介いたしますのが

伏羲(ふっき・ふくぎ)

女媧(じょか)

神農(しんのう)

 という神様たちから成る「三皇」です。

 

・伏羲(ふっき・ふくぎ)

上半身が人間、下半身が蛇の姿で描かれることの多い神様です。

 

古代世界において、さまざまな文化や文明(易とか文字とか琴とか婚姻制度とか、その他モロモロ)を作ってくれたんだそうですよ。

 

伏羲は後述する女媧とは兄妹であり、夫婦でもあります。

(エッ!?って感じですが……神話の世界には、こういうのって結構あるんですよ……)

 

むかーし昔、大洪水が起きた時

世界中でこの二人だけが瓢箪の中に入って生き延びたため、彼らが人類の始祖となった──そんな伝説が中国大陸のあちらこちらに伝わっているそうです。

 

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・女媧(じょか)

下半身は蛇の女神様。

伏羲の妹であり奥さんです。

泥をこねこねして人類を作ってくれました。

 

ある時のこと

天を支えていた柱が傾いて、地上が大混乱状態に陥ってしまいました。

 

その時、女媧は五色の石を錬って天を補修し(錬石補天)

大亀の足を切り取って柱にし、黒竜の体で土地をなおし、芦草の灰で洪水を抑えて、世界を平和に戻してくれたんだそうですよ。

 

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・神農(しんのう)

伏羲&女媧が亡きあとに皇位を継ぎ、この世を治めたという神様です。

 

体は人間、頭は牛、身長3メートル越えという姿。

竜神の父と人間の母の間に生れた子なんだそうです。

 

膨大な数にのぼる植物の効用を、自らを実験台にしながら試し

(何度も中毒にあたって酷い目に遭っています)

そうして発見した漢方薬の事などを

「神農本草という書物にまとめました。

 

人々に医療と農耕を教えたことから

「神農大帝」と尊称され

漢方薬関係、医療関係の人々の間で広く信仰されています。

 

姜(きょう)姓の人々の先祖と言われ「夏」や「炎」や「太陽」の神であるとも言われている炎帝(えんてい)と習合(合体)したことから

炎帝神農」と呼ばれたりもします。

 

後述する 黄帝とは異母兄弟だという伝説もあるのですが

その一方で

神農の子孫である炎帝神農氏黄帝と衝突し、バトルを繰り広げたなんていう話も伝わっています……。

 

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以上の3柱(伏羲・女媧・神農)

現状

一番よく語られている所の

スタンダード的な三皇なのですが

 

女媧の代わり

以下のメンバーがそれぞれ入ってくる

というパターンもあります。

 

・燧人(すいじん)

伝説上の帝王で、火のつけ方を発見しました。

 

祝融(しゅくゆう)

火の神様。

顔は人間、体は獣という説があります。

 

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黄帝(こうてい)

三皇の治世を継いで中国を統治した

「五帝」の最初の帝

なのですが

「三皇」のメンバーとして数えられることもあるようです。

 (彼は本来は雷神なんだそうで)

 

元来、「皇帝」と書きあらわされていたのですが、五行説の影響によって戦国末期から黄帝と表記されるようになりました。

(黄色は「真ん中」をあらわす一番偉い色だから)

 

 

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さて

お次はいよいよ

五帝のご説明とまいりましょう。

 

【五帝】ごてい

 ── 中国古代神話時代の

聖君主5人です。

 

ここに誰が入って来るのか?というのには、実は色々な説があるのですが

史記 五帝本紀」では

黄帝(こうてい)

顓頊(せんぎょく)

嚳(こく)

尭(ぎょう)

舜(しゅん)

と、なっており

今の所これが一番メジャー

といった扱いになっています。

 

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 黄帝(こうてい)

神農の後に皇帝になった人。

先ほどの「三皇」のところでも述べましたように、神農とは異母兄弟だという説があります。

 

反抗勢力を次々に平らげ「中国(※春秋戦国期の)」の領域をくまなく統治したといわれる開国の帝王といった存在です。

 

  現存している中国最古の医学書

黄帝内経素問」

黄帝内経霊枢」

これらが黄帝の著作だと信じられていることから

中国医学の始祖と言われ

また

漢民族のご先祖様だとも言われている、特別な存在です。

 

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・顓頊(せんぎょく)

黄帝の孫。

物事に通じ、物静かで、奥ゆかしい人柄だったそうです。

鬼神を信奉し、祭祀を執り行ったり暦を作ったりしました。

 

この当時

天と地の間には梯子が掛かっていて、神様達も人間も自由自在に行き来していたそうです。

そんな感じなので

中には悪〜い神様もいたりして、彼らが人間に悪事をそそのかしたりする、なんて事もあったようです。

そこで顓頊は

曾孫の重(ちょう)黎(れい)に命じて、天と地とを引き離し、梯子を取っ払わせ、自由な往来が出来ないようにしました。

そうして

重には神様を祀らせ、黎には民事を取り仕切らせた

という話が伝わっています。

 

現在の河北省にある高陽という所に国を建てたことから高陽氏とも呼ばれています。

 

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・嚳(こく)

黄帝の曾孫で顓頊の次の帝。

高辛氏(こうしんし)という名でも称されています。

 

聡明で、生まれながらにして、自分の名前を言うことができたほどの神童っぷりだったそうです。

 

非常に徳の高い人で

お天道様お月さまの照らすところ、雨風のあたるところ、天下の隅々まで

彼に従わない者は無かったそうですよ。

 

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・尭(ぎょう)

嚳の2番目の子供。

「その仁は天のごとく、その知は神のごとく」

などと讃えられているほどの聖人です。

 

刑罰や度量衡など、様々な制度を定めたり、天文観察をして暦を作らせたり、などといった業績があります。

 

暦が出来、人々が時間や季節の移り変わりを認識できるようになったおかげで、農業やその他多くの産業が発展しました。

 

大変に平和だった彼の治世ですが

実は

大変な事件も起こっています。

(・_・;)

 

ある時、空を見あげると

どういうわけだか太陽が10個も現れていました。

 

ジリジリと強烈に照らし続ける太陽のせいで

地上はたちまち灼熱地獄になってしまいました。

 

困り果てている堯の元に、天帝(天の神様)が弓の名人(神)后羿(こうげい)を遣わしてくれました。

 

──バシュッ!バシュッ!

 

后羿は次から次へと太陽を射落としていき

太陽は一つだけになりました。

めでたしめでたし。\(^o^)/

 

……だったはずなのですが (-_-;)

 

実はその後、弓の達人后羿は天女の奥さん共々、酷い災難に巻き込まれてしまいます。

 

── が

 

この話を続けると、どんどん堯の話題からは反れていってしまうので

 

それについてはどうぞ、コチラの記事をご覧ください。

todawara.hatenablog.com

 

堯は次の帝位を

自分の血縁の者ではなく

徳の高さに惚れ込んだに譲りました。

 

君主が血縁のない有徳者に位を譲る

禅譲(ぜんじょう)というのは

ここから始まったという事です。

 

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・舜(しゅん)

しばしば堯と並び称されることの多い

聖帝です。

 

大変な人格者だったため、舜のいる所には自然と人が群がって来て

3年後には都会になってしまう程だったそうです。

 

顓頊の6代目の子孫なのですが

生母を早くに亡くし、大変な苦労をしています。

 

── と言いますのも

 

彼は、実父と継母と連れ子の弟と共に暮らしていたのですが

継母ばかりか父親までもが弟ばかリを偏愛し

家族一同が隙あらば舜を殺そうと狙ってくる

などという

地獄のような家庭環境にあったのです!!

 

ところが

 

人格者である舜は

そんな親に対してもきちんと孝行を尽くしていたので

彼の良い評判がどんどん世間に広まって行きました。

 

その噂はいつしか

時の帝、の元にまで届くところとなりました。

 

堯は彼の人間性を見極めるため

自分の二人の娘を彼の元に嫁がせました。

 

──── しかし

 

依然として

彼の家族の極悪非道っぷりは止むことがありませんでした……。

 

彼らは相変わらず

舜を焼き殺そうとしたり

埋め殺そうとしたりしてきます。

(数々のピンチを、彼の妻となった姉妹が機転で助けてくれたりします)

 

そんな陰険なイビリにひたすら耐えて

孝行を尽くし抜く

舜の人徳の高さ

堯は改めて感動!(T∀T)

 

さっそく舜を登用し

天下を摂政させてみたところ

朝廷から悪人どもが一掃され

百官が良く治まるようになりました。

 

堯から帝位を譲り受けた舜は

安定した治世の後

自分の次の帝位を

黄河の治水事業を成功させた禹(う)禅譲しました。

 

この禹が

史記」に記された中国最古の伝説的王朝

夏(か)王朝の祖となっていきます。

 

(「夏」は考古学的にその存在が確認されている中国最古の王朝「殷」の直前にあったといわれている王朝です)

 

なお

鬼畜な外道だった舜の両親と弟ですが

 

最終的には彼の徳の高さに降参して

心を入れ替えたということですよ!

めでたし、めでたし。

 

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それぞれに素晴らしい名君揃いだった

五帝の時代

 

その中でも特に

人徳に溢れていた堯&舜の時代は

後世の儒家たちから

理想の治世

と讃えられています。

 

…………と言っても

 

ほとんど神話

なんですけどね…………(^^;)

 

 

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太陽を射落とした后羿の悲劇……

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麒麟とか朱雀とか青龍とか……伝説の霊獣「四霊」「四神」について 

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 十二支を使った昔の時刻や方位の表し方についてビジュアル的に解説します。

todawara.hatenablog.com

 




こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

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