TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

ちょっと気の毒なネーミングの花「サフランもどき」について。


先日、散歩の途中に

よその駐車場の片隅で

薄ピンク色をしたこんな花

咲いているのを見つけました。

 

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なんとなくニッコウキスゲにも似てるから

「萱草(カンゾウ)の仲間かな?」

と思って

ネットで名前を調べてみたのですが

なかなか正体が判明せず

 

「初夏の花」

とか

「ピンク」

とかのワードを入れてあれこれ検索しまくった末に

ようやくその素性が明らかになりました。

 

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どうやらこの花は

ヒガンバナ科 

タマスダレ(ゼフィランサス)属

サフランもどき

という植物らしいです。

 

原産地

メキシコ、グァテマラ、カリブ海の島々あたりとのこと。

 

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淡く優しげな薄桃色で

可愛らしく、清楚な印象を受けるこのお花

 

開花期6月から10月と結構長いらしいので

夏の間はしばらく楽しめそうです。

 

タマスダレ属(ゼフィランサス)の花たちは

暖かい日が続いた後に雨が降ると

茎をニョキニョキ伸ばして花を咲かせることから

 

英語で

レイン・リリー(Rain lily)

と総称されているそうです。

 

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ちなみに

こちらが属名ともなっている

タマスダレ(玉簾)」の花

 

涼やかな純白が、清楚なイメージです。

 

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タマスダレ」は明治時代の1870年ごろに日本に入って来ました。

 

サフランもどきが日本にやって来たのは

タマスダレよりも少し早く

江戸時代後期1845(弘化2)年

 

パイナップル(鳳梨)の栽培土の中に混ざり込んでやって来ました。

 

それを

野田青葭(せいか)という本草家(植物学者)が拾い上げて育てたそうです。

 

彼は長崎で

出島から輸入されてくる薬種の鑑定をする役人であるところの

「薬種目利」(やくしゅめきき)

という仕事についていました。

 

そうして育ちあがった

この植物

 

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これが

どういうわけか

 

漢方薬や香辛料として使われている

アヤメ科のサフラン

(オランダ名「saffraan」漢名「蕃紅花」)

勘違いされてしまいました。

 

※(医薬品として加工された状態のサフランはすでに伝わっていたようですが、その当時、ナマの状態を見た人はいませんでしたので……)

 

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そのため、この植物は

サフラン

と呼ばれるようになり

 

また

別の名として

蕃山慈姑(バンサンジコ)

とも呼ばれるようになりました。

 

なお

「蕃山」の部分には

「蛮産」という字を当てる表記もあったようです。

 

──── ところで

 

こちらが正真正銘

本家本元薬用サフランです。

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これが「薬」や「スパイス」になるアヤメ科のサフラン

 

薬用サフランの花には

真っ赤で長~い

雌しべがあるのですが

 

この雌しべこそが

薬や香料、着色料として

珍重されている部分でもあるのです。

 

薬用サフランというのは

実は

それほど育てるのが難しい植物、というわけではないのですが

 

雌しべの取れる量が非常~に少なく

採集したり加工したりするのにも大変な手間がかかるために希少価値があり

 

スパイス、生薬としてのサフラン

かなり高価なものとなっています。

(たった1グラムで500円~ 1,000円もするんだそうですよ!)

 

 

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薬やスパイスになるのはこの赤い「雌しべ」

 

これほど高価なものということで

やはり巷には

ニセモノも非常にたくさん出回っているようです。

 

たいへん嘆かわしい事ですが

こういうのって世の常ですよねぇ~……

(-_-;)

 

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「格安サフラン

として市場に出回っている物の中には

 

ベニバナだとか

トウモロコシのヒゲに色付けしたもの

など

 

サフランとは全く別の物がいっぱいあるみたいです。

(これぞまさにサフランもどき」……騙されないように気を付けましょうね!)

 

レストランで

サフランライス」

として提供されている黄色いご飯の中には

ターメリック(ウコン)で色付けしているものも多いとか。

 

まあ、個人的には

美味しければ別に構いませんけど……。(^^;)

 

 

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サフランで色と香りを付けたパエリア。美味しそう~♡

 

薬用サフラン

 江戸時代末期文久4(1864)年

球根(鱗茎)としてもたらされました。

 

明治に入り

各地で栽培されるようになってから

人々は

これまでサフランだと見なされていた例の植物に対し

「なんか違うじゃん!?」

ということに

ようやく気が付いたようです。

 

だって

肝心の赤い雌しべが

無いんですからねぇ……。

 

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 いや…………

全然

似てないじゃん!

 

そんなん

最初からわかってよ!

( ;`ー´)ノ

──── って感じですけどね。

 

今となっては

一体どうして間違えてしまったのやら

全然わかりませんけれども

 

きっと、その当時は

情報量が圧倒的に少なかったから

仕方がなかったんでしょうね……。

 

 「コイツ、サフランじゃなかったよ~!」

 

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 ということで

サフラン擬き(もどき)」

なんていう名前が付けられてしまいました。

 

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一方的に誤解されたあげく

こんな

「まがいもの」

みたいな名前が付けられてしまったなんて

なんだか可哀想……。(T_T)

 
そんなら

蕃山慈姑(バンサンジコ)でいいじゃんかよぅぅぅぅ。

 (ノД`)・゜・。

 

サフランもどきだなんて

がんもどきじゃあるまいし。

 

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雁の肉の味に似ているから「がんもどき」なんだそうですよ。

 

実は
この花がサフランもどきと呼ばれるよりも

 

もっと紛らわしい植物だってあるんですよ。

 

それが

 

薬用サフランに対して

「花サフランと呼ばれている

同じアヤメ科の植物で

観賞専用の花

クロッカスです。 

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クロッカス

 

花の形もソックリ

しかも双方ともサフランと呼ばれているので

こちらの方が、よほど紛らわしいと思うのですが……

 

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「あっちの方が、よっぽどサフランモドキって感じじゃん!」

 

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「いいえ!私はレッキとした《花サフラン》ですっ!」

 

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「な~んか、釈然としないなぁ……」

 

見分け方としましては

薬用サフランの開花時期が(10~11月ごろ)なのに対して

クロッカス(花サフラン)の花が咲くのは(2月〜4月)

 

そして

クロッカスには

あの赤い雌しべがありません。

 

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さて

このサフランもどきですが

 

現在では野生化して

群生している所もあちこちにあるみたいですね。

 

Wikipediaによると

長崎の天草で水田のあぜ道に群生して美観を呈しているそうですし

 

2020年06月18日の「紀伊民報」によると

世界遺産にも登録されている

和歌山県田辺市熊野古道

「長尾坂」のあたりにも群生しているらしいです。

 

一斉に咲きそろうピンク色の花

さぞかし綺麗でしょうねえ。

いいなぁ

見てみたい~。

 

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サフランもどきは

大変に可憐なお花なのですが

 

ヒガンバナ科ということで

 

「これを食べるとあの世(彼岸)に行っちゃうよ~」

というネーミングがされているヒガンバナ(彼岸花)と同様

 

アルカロイド系の

リコリンというを持っています。

(タマスダレも同様)

 

なので

ウッカリ食べたりすると

吐き気、嘔吐、痙攣などに襲われてしまいます。

 

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葉っぱや根っこなどが

ニラノビルなどに良く似ているので

 

間違って食べないように

くれぐれも注意しましょう。

 

万が一混同してしまうと大変に危険なので

それらの近くでは栽培しない方が良いですよ!

 

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そんな

サフランもどき花言葉

「清純な愛」

 

そのほかに

 

「予想」

「期待」

「便りがある」

「喜び」

「陽気」

 

などがあるそうです。

 

なんだか

一連に繋がってるみたいな感じのする

花言葉ですよね。(^_^)


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こちらは私の本になります。よろしくお願い致します。

 

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