まだまだ寒さの残る早春ですが
街なかではちらほらと、ミモザの可愛い花が現れはじめています。
ところでこの花
「……ミモザだよね?」
────と思うのですが
「アカシアだよ?」
「アカシアって、白い花じゃない?」
「いやでも、ミモザって本当はピンクでは…?」
「ミモザサラダは黄色なんだから、ミモザは黄色に決まってるでしょ」
などと
ちょっとした議論を巻き起こしがちだったりします。
この花が本当にミモザなのかアカシアなのか
いまいち良くわからない。
「これがミモザの花ですッ」
「これがアカシアの花ですッ」
とキッパリ言い切るほどの自信が持てない。
そこには、これらの名称にまつわる
ヤヤコシイ事情があるからなんです。
ミモザというのは
実のところ本来的には
オジギソウ(マメ科 オジギソウ属)の事です。
その学名が
「Mimosa pudica」
ですから
本来的には
「オジギソウ」こそが「ミモザ」なのですが
昔々イギリスにおいて
フランスから輸入されたアカシアの切花がなぜか
「ミモザ」と呼ばれてしまい
その呼び名が広まってしまったことから
「ミモザ」はいつの間にか
アカシアの通名として定着してしまいました。
オジギソウもアカシアも
葉っぱの形や、丸いポンポンした花の形がソックリですからねえ……。
ちなみにアカシアは
学名はAcacia Millといいます。
ところが今度は
アカシアといった場合
「えっ?アカシアって、この黄色い花じゃなくて」
「こっちの白い花なんじゃない?」
といった声も、ちらほら聞こえてこようかと思いますが
こちら実は
マメ科 ハリエンジュ属の
ハリエンジュ(ニセアカシア)
という植物なんです。
学名は
Robinia pseudoacacia
そう。
日本ではちょっと昔まで
こちらの白い花が
アカシアと呼ばれていたんです。
中国の大連を舞台にした歌や物語などで
アカシアの大連
なんて、よく聞かれますが
大連で名物となっているのも
実はこちらのハリエンジュ。
どうしてこんなことになっているかと言うと
明治時代
ハリエンジュ(ニセアカシア)が日本に輸入されて来た時
当時の日本人はこれを
「アカシア」だと思い込んでしまい
結構な長い期間、そのように呼び慣わしていたため
本物のアカシアが輸入されてもなお
混同され続けている……というのが実情なんです。
ということで
まとめますと
「ミモザ」というのは
本来はオジギソウの学名
しかしながら今では
「アカシア」の通名としても
広く一般化している。
アカシアというのは
この黄色いポンポンの花をつける植物の事。
昔から「アカシア」と呼ばれていた
白い藤みたいな花は
実は
ハリエンジュ(ニセアカシア)
なお
ハリエンジュを「アカシア」と呼ぶ風習は
今でも一部では続いているようで
「アカシア蜂蜜」
として販売されているのも
実際はハリエンジュの蜂蜜なんだそうです。
黄色いポンポン花のアカシアからは、蜂蜜は採れず
ハリエンジュから採れる蜂蜜は
非常に美味なんだそうですよ。
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