ひょんな話の成り行きから
「中国には四つの霊獣がいて……」
という話題が出た時などに
「あー、あの東西南北を護ってるっていう、あれねえ」
とは思うものの
「あれ?その場合の鳥のヤツって朱雀だっけ?鳳凰だっけ?」
とか
「そのメンバーの中に麒麟は入ってたっけ??」
などと
混乱してしまう事ってありますよね。
昔から伝わる
中国のスゴイ霊獣たち
great4といったグループには
四霊(しれい)
というのと
四神(ししん)
というのがあるんですが
これがゴッチャになってしまうんですよねえ~……。
なにせ、この二つのグループ
呼び名がお互いにチェンジする事があったり
(どちらとも「四霊」、「四神」と呼ばれる事がある)
また
時には双方とも
四獣(しじゅう)
なんて呼ばれる事もあったりするので
まったくもって
紛らわしいったら
ありゃしません。
そこで今回は
この二つのグループの違いを
なるべくわかりやすくお伝えしようかと思います。
まず
四霊(しれい)とは
良い事が起こる前触れに現れるという
四種類の霊獣で
四瑞(しずい)ともいわれている
とても
めでた〜く、ありがた〜い
メンバーたちです。
四霊を構成するメンバーは
以下のようになっています
・麒麟(きりん)
泰平の世に現れるという
けもの達のリーダー。
オスが「麒」(き)でメスが「麟」(りん)
竜を思わせる凛々しい顔つき
ウロコに覆われた体形は鹿のようで、黄金の毛が生えています。
尻尾は牛、蹄は馬。
非常に穏やかで優しい性格をしているので、虫や草さえ踏まないように気を遣って生活しているそうです。
こんなに優しい麒麟なので
万一これを傷つけたりしたら悪い事が起こってしまいます。
(死骸に出くわしたりした場合も同様)
中国では「麒麟送子」という言葉があり
子宝を授ける霊獣としても崇められています。
実は青・赤・白・黒の色違いもいるのですが
黄色いのが麒麟です。
1419年明の時代に
大航海の旅に出た鄭和(ていわ)がキリン(動物)を中国に連れ帰り、永楽帝に献上しました。
それから永楽帝は
動物のキリンを「麒麟」として珍重したと言われています。
日本でも朝鮮半島でも
キリン(動物)の漢字表記は
「麒麟」となっているのですが
現代の中国では
「長頸鹿」
と表記されているそうです。
・鳳凰(ほうおう)
泰平の世に現れる鳥類のリーダー。
聖天子が出現する時に現れるとされています。
梧桐(アオギリ)の木に住み、竹の実を食べているそうです。
五色の華麗な羽と長い尾を持つ大型の美しい鳥で
鳳(ほう)はオス、凰(おう)はメス。
体の各部分が何に似ているか?
というのは
時代によってさまざまに異なってくるのですが
今現在、一般的に言われている所としては
中国では
頭(金鶏)、嘴(オウム)、首(竜)、胴体の前の方(オシドリ)、胴体の後の方(麒麟)、足(鶴)、翼(燕)、尾(孔雀)
日本では
頭と嘴(ニワトリ)、首(蛇)、胴体の前の方(麒麟)、胴体の後の方(鹿)、背中(亀)、あご(燕)、尾(魚)
と
このようになっているようです。
(背中が亀……尾っぽが魚……?なんだか微妙だな~と、個人的には感じますが、空想上の物ですからね……)
鳳凰は、一万円札(福沢諭吉)の裏側にも描かれているんですよ。
2004年、新紙幣になった時から
それまでの雉に代わり、鳳凰のデザインになっています。
・霊亀(れいき)
非常に巨大な甲羅の上に
不老不死の仙人が住むという蓬莱山や桃源郷を載せて移動しているという亀
甲羅を持つ生き物たちのリーダーです。
頭は龍に似ていて、口には牙が生えています。
数万年以上という長生きの末に
予知能力などのパワーを得て霊獣へと進化したんだそうです。
「霊亀」の名は
(715年9月2日〜717年11月17日)
・応龍(おうりゅう)
鱗を持つ生き物たちのリーダーで
青・赤・白・黒といる龍たちのリーダーでもあります。
中国神話に出て来る
三本指の四本足で、コウモリや鷹を思わせる翼を持ち
天と地とを行き来して、雨を降らせます。
また
応龍は天馬を生んだりもするそうです。
年を取るとやがて金色になり
黄龍になるんだそうですよ。
以上が
天下泰平の
めでたい時に現れる霊獣
の面々です。
次にご紹介する
四神(ししん)は
中国の神話に出て来る
天の四方(東西南北)の方角を司る霊獣で
天球を28等分した星宿の
それぞれの方角に配当されています。
これは五行説に基づいて配置されているもので
方位を護るこの霊獣たちは
四象(ししょう)
と呼ばれる事もあります。
ちなみに
都市づくりをする際に吉相とされるのは
東に川 南に大きな湖や海
西に道 北に山
それらが揃っている
土地がベスト
なんだそうですよ。
(平安京や江戸もそれを踏まえて造られています)
東担当
・青龍(せいりゅう)
東は春を表わすので、本来は植物の色である緑でした。
体は大蛇、首は麒麟、鹿のような角があり、長いヒゲと長い舌を持っています。
指は五本で、勇壮で大迫力のルックスです。
生長、発展をうながす力を持っています。
道教で神様化(擬人化)すると
神君「孟章」になる、龍族の始祖だそうです。
名前は青龍帝君孟章
西担当
・白虎(びゃっこ)
胴体の細長い白い虎です。
虎は500年生きて霊力を得ると白虎になるそうです。
変化や移動をつかさどる神とも
月の女神の化身とも言われています。
道教で神様化した時の名前は
白虎帝君監兵
四神の中で一番高齢だとも
一番若いとも言われています。
ちなみに中国の福建省では
東西南北すべて虎が護っている事になっています。
(青虎・白虎・赤虎・黒虎)
南担当
・朱雀 (すざく)
長生きを司るという伝説上の神の鳥です。
形状は鳳凰に非常に似ているのですが
朱雀は赤い色(朱色)をしています。
道教で神様化した時の名は
朱雀帝君陵光
鳳凰と朱雀は
色以外の区別がつきにくいのですが
これに似た霊鳥として
これまたソックリな
鸞(らん)というのもいます。
なんでも
鳳凰が歳を経ると鸞になるとか……。
(;・∀・)
そしてこれまた
混同されがちなのが
西洋のフェニックス(不死鳥)
および
インドのガルーダ(迦楼羅)
です。
これらと朱雀・鳳凰は
実のところルーツも概念も違うものなのですが
同じように神秘的なイメージを持っている事から
重ね合わせて語られる事が多いようです。
(みんなカッコイイですものね)
北担当
・玄武(げんぶ)
脚の長い亀&それに巻き付く蛇のコンビです。
(主役は亀の方なのですが、蛇が巻いてくれないと玄武にならないそうです)
宋の時代には真武といわれました。
亀さんは長寿と不死
蛇さんは繁殖を司っています。
玄武はあの世とこの世を行き来して
あの世から亀甲占いの神託を持ち帰って来るそうです。
水の神でもある玄武は
道教で神様化すると
玄武帝君執明という名になります。
玄天上帝ともいう
黒服の男性だそうです。
ちなみに
この名前の由来は
江戸時代の文化4(1807)年
儒学者の柴野栗山(りつざん)が訪れました。
ここにある岩石の形や断面の模様から霊獣玄武を連想した彼は
ここを「玄武洞」と名付けました。
後年の明治17年(1884)
科学者の小藤文次郎がそれにちなみ
この種の岩を
「玄武岩」
と名付けました。
玄武洞は現在
「玄武洞公園」となり
山陰海岸ユネスコ世界ジオパークのうちの一つとなっております。
このように
東西南北は
四神(四象)である
青龍・白虎・朱雀・玄武
という面々が護っているのですが
ここに
中央(黄色)担当および
四神たちのリーダーとして
麒麟さん
または
応龍さん(or黄龍さん)
がやってきて
五神(ごしん)
または
五獣(ごじゅう)
と呼ばれる事もあります。
両者はしばしば置き換わったり
同一視されたりしていたそうです。
(彼らは霊獣の中でも格上の存在)
以上の事から
まとめてみますと
良い事が起こる前触れに現れるという
四種類の霊獣
四霊(または四瑞)
は
というメンバー
そして
方位を護る霊獣たち
四神(または四象)
は
青龍・白虎・朱雀・玄武
というメンバー
なおかつ
四神の真ん中に
五神(ごしん)
と言われる事もある。
──── と
このようになります。
しかーし!!!
冒頭にも述べましたが
この
四霊・四神
という呼び名は
しばしばお互いに
チェンジする事が
あったりもしますので
くれぐれも
気を付けましょうね。
(いやはや全く紛らわしい話ですね)
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