今回は
「万葉集に収録されている変な歌」の第2弾
をお届しようと思います。
前回の歌に引き続き、今回もまた
かなりのお下品ネタとなってしまう事をご了承ください。
<(_ _)>
それではご紹介します。
万葉集 巻十六に収められている
No.3828のこちらの歌です。
香、塔、厠、屎、鮒、奴を詠める歌
香(こり)塗れる
塔にな寄りそ
川隈(かわくま)の
屎鮒(くそぶな)喫(は)める
痛き女奴(めやつこ)
ヒィ~~~
字面だけでもう
下品さが炸裂しとる~!!
実はこちらの歌
万葉集の中でもかなり目立つ
変な歌として有名です。
「香(こり)塗れる塔」というのは
供養のために仏塔に香を塗っている、ということ。
そして
「川隈(かわくま)」というのは
川の曲がり角とか、川の隅っこに板を渡し掛けて作った
厠(トイレ)のことです。
そこから落っこちて来たモノを餌として食べている鮒たちが
「屎鮒」(くそぶな)なんて呼ばれています。
「痛き」は
甚だしいとか、ひどいとか、臭いとか、汚いとかいう意味。
「女奴」(めやつこ)は下女の事です。
ですから、現代語訳はこうなります。
いい香りを塗りつけてある塔には
近づかないでくれ。
便所の下の川で取った糞フナを食っているような臭い下女よ。
こうして見ると何だか
ただ下品なだけではなく
鮒さんに対しても、下女さんに対してもイジワルっぽい感じがして
嫌~なイメージ!?
いえいえいえ(/・з・)/
それは誤解です~。
これは実際に下女さんに対して言った
イジワル言葉なんかではなく
宴会の席上
「香、塔、厠、屎、鮒、奴」の言葉を使って
歌を作ってみて!
と言われて
即興的に作り出した
おフザケ歌のようなものなんです。
作者の
長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)は
持統、文武天皇時代に宮廷に仕えていた下級官吏です。
彼は、ポンと出されたお題を、即興で歌に詠み込んで作り出すのを得意としていました。
(たぶん、ノリの良い人だったんでしょうね~)
忌寸(いみき)という姓(かばね)が付けられている事から
渡来系の人なのではないかと言われています。
日本のトイレが「かわや」と呼ばれるようになったのには
川の上にトイレを設置したからという
川屋(かわや)説
と
家の側に設置したからという
側屋(かわや)説
この2説があるのですが
長意吉麻呂の詠んだ「香(こり)塗れる」のオフザケ歌は
このうちの
川屋説を裏付けるものとしても
重要な意義があるんだそうですよ。
しかし
いくら「厠=川屋」説において重要な意義があるとはいえ
このままで終わってしまっては
長意吉麻呂さん、
オフザケ歌だけ作っている人かと誤解されてしまいそうですよね。
一応、彼のためにフォローを入れさせていただきますと
長意吉麻呂さんの歌は
万葉集の中に14首も入っていまして
その中には悲劇の皇子、有間皇子を偲んで作った
センチメンタルでシリアスな歌(巻の2のNo.143&144)もあるんですよ。
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