昨日、近所を自転車で走っていたら
一瞬、ふわりと
バナナの甘い香りに包まれました。
カラタネオガタマの花咲く季節がきたようです。
カラタネオガタマ(唐種招霊)は
中国原産で、比較的暖かい所を好む
日本に渡来したのは
江戸時代中期から明治時代初期の間だと言われています。
初夏に咲く花は
バナナのような甘~い香りを漂わせるので
「バナナブッシュ」
「バナナツリー」
などとも呼ばれているそうですよ。
私が初めてこの花を見たのは
10年以上も前の初夏の頃
鎌倉の長谷にある小さなお寺を訪れた時でした。
お寺の庭先に、やや場違いに感じられるほどの甘いバナナの香りが漂っていて
その香りの発生源がこの花だと知った時には
見た目の素朴さと香りとのギャップに、ちょっと驚いてしまいました。
たしかにバナナの香りなんですけど
バナナそのもの
っていうよりは
「バナナ味」と称して売られているお菓子みたいな
どっちかって言うと
バナナ風味の香料に近いような感じなんですよね。
その昔、子供の頃に良く食べた
メレンゲを固くさせた感じの
バナナの形をしたバナナ味のお菓子───
カラタネオガタマの香りって
そんな感じがするんです……。
ところで
あのお菓子って
なんて名前だったっけ……?
調べて見ましたところ
あれは
「フローレット」という名の
マシュマロと同じ材料を、カリッと乾燥させて作るお菓子だということがわかりました。
昭和の頃には良く見かけたのに、最近はあんまり見なくなったなあ……
と思っていたのですが
このお菓子
実は、作るのに大変手間がかかるそうで
現在では大手の菓子メーカーとしては
竹下製菓さんでしか作られておらず
個人のお菓子屋さんでも
作っている所は非常に少なくなっているそうです。
そんな風に言われると
懐かしさに、また食べたくなってきちゃうなあ……。
あと
これは個人的な感覚なんですけど
カラタネオガタマの花って
玉子みたいにつるっとした感じが
なんだかレモンケーキに似ていませんか?
甘い香りといい
その形といい
なんだか美味しそうで
おなかが空いてきてしまいそうになるお花です。
「甘い誘惑」
なんだかピッタリな感じですね。(^^;)
カラタネオガタマを漢字で書くと
唐種招霊になるのですが
この「招霊」という部分……
ここが、なにやらオカルト的な印象で
怖い!と思われてしまう向きもあるかもしれません。
しかし
ご安心ください。
これは神道で言う所の
「招霊」(おぎたま)の事でして
この木が招いているのは
幽霊とか悪霊みたいなものではなく
神様なんです。
ですから
この木はむしろ
とっても縁起の良い木なんですよ。(^^)
カラタネオガタマは先述した通り
近世以後に中国から輸入された植物なのですが
日本にはもともと
オガタマというモクレン科の木がありまして
ご神木として
神社などに良く植えられたりしています。
オガタマ(招霊)
別名
オガタマノキ(招霊木、小賀玉木)、トキワコブシ
花言葉「畏敬の念」
一説によるとオガタマには
天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸に隠れてしまった時
天鈿女命(アメノウズメノミコト)がこの木を手にして舞った
という伝承もあるそうです。
また、榊が生えない地方では
榊の代わりに神前に供える玉串として使われたりする事も多いそうですよ。
こちらがオガタマの花 ↓
カラタネオガタマよりも、もっとモクレンに近い感じがしますね。
ところで
このオガタマノキに関しては
「一円玉に描かれた木はオガタマである」
というような話が良く語られています。
一円玉の図案は
1954(昭和29)年に一般公募によって決められたのですが
あの「若木」の図案は
当時京都府に在住していた中村雅美さん
「1」の部分は
当時大阪府在住だった高島登二雄さん
のデザインによるものとなっています。
で
実際の所は
「若木」の木には
特定のモデルは無い!
って話なのですが
世間ではずっと
オガタマノキが似ている!
と言われ続けているようです。
神楽など神事の時に使われている「神楽鈴」(かぐらすず)という鈴なども
オガタマの木や花や実の形との類似性が語られたりしていますし
オガタマの木って
日本人にとっては
どこか神々しいものを感じさせる、特別なものがあるんでしょうね……。
今では
このオガタマと同じように
神社やお寺に植えられていることの多い
カラタネオガタマの木ですが
園芸品種のカラタネオガタマの中では
赤い花をつける
ポートワインという品種が人気だそうですよ。
ポートワインと言うと
日本では甘味果実酒に分類されている甘〜いワインのことですが
このネーミングなんかも
まさに
「甘い誘惑」っていう花言葉にピッタリな感じですよねぇ。
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