今回ご紹介いたします本
「缶詰ラベルコレクション」
は日本缶詰協会が所蔵する2500点あまりもの缶詰ラベルの中から
1877(明治10)年~昭和初期までに国内で製造された
550点分のラベルを選り抜いて掲載したものです。
この頃の日本にとって
缶詰は主要な輸出品だった
という事で
ラベルのデザインも海外向けという事を意識して
英語表記されたものも数多くあります。
一見したところ
海外の商品か?と見まごうようなものもあれば
純和風のものもあり
現代人の目には奇異にも斬新にも映る
和洋折衷のデザインもあり
大変に見ごたえのある一冊です。
マンダリンオレンジが描かれている隣に
白馬に乗った鎧武者がいる
「サムライ印のマンダリンオレンジ」
ザルに乗せられた三本の松茸が
リボンと花々に華麗に縁どられている
「〇若印(マルワカジルシ)の松茸」
などなど
海外受けを意識したこれらのラベルは
現代の目で見ると奇異な分
かえってポップな印象を与えます。
缶に詰められている食品の中には
え、そんなものまで?
と思ってしまうようなものもあります。
中でも
「えええっ!?」
と私の注意を引いたのが
なんと
雀の缶詰!!!!
「RORSTED LittleBirds
珍味小鳥すずめ焼」
と付けられた商品名に加えて
「本品は新鮮な小鳥のかば焼きであります
故にこのままにて召し上がれますが
少々火に焙っていただければ
一層美味しく召し上がれます」
と
説明書きが記されており
ラベルには
黄金色に実った稲田の上を飛び回る
三羽の雀が
描いてあります。
雀って食べられるの……?
しかもこんな缶詰があったということは
かつての日本では
雀は輸出できるほどのメジャー食材だった
───って事なのでしょうか……?
日常的に目にする
珍しくもなんともない存在である雀。
かつての日本人が
本当にそれを食べていたというのなら
今はどうして
その習慣がほとんど見られなくなってしまったのでしょうか?
気になったので、その辺の所をちょっと調べてみました。
─── すると
木下将太朗さんという方が2014年に発表された
「消えゆく雀食文化-なぜ、雀の焼鳥は消えるのか」
という論文の中に
その辺の事情が大変詳しく書かれてあるのを発見いたしました。
その論文によりますと
現在一般に親しまれている鶏肉は
昭和35(1960)年ごろまでは非常に貴重な存在で
なんと
牛肉以上の高級食材
だったんだそうです。
ですから
その頃の焼鳥といえば
雀などの小鳥が中心
かつ
一般的だったそうで
それは
江戸時代からずーーーっと続いている
庶民の伝統料理だったそうです。
雀を食べるのは
以前の日本では珍しい事でもなんでもなく
ごくごく普通のあたりまえの事
だったのですね。
ところが
昭和35年以後
鶏肉を大量かつ安定的に生産できる
ブロイラーのシステムが登場し
鶏肉が広く一般の食卓に普及するにつれ
焼き鳥肉の主役は
雀や小鳥から鶏肉に移り
小鳥焼きの店は激減していったのだそうです。
それに追い打ちを掛けるように
雀自体の生息数が減り
雀を獲る猟師もほとんどいなくなり
また
愛鳥精神の広まりとともに
人々の間に
「あんなに可愛い雀を食べるなんて可哀想だ」
という意識が芽生えたため
雀食はますます減って
今では
非常に希少なものとなってしまったそうです。
かつては広く一般に親しまれていたものの
今では完全に
スペシャル超珍味
という位置づけになってしまった雀肉。
気になるお味の方はどうかというと
色々な人がお書きになっているのを見てみると
かなり美味しいらしいですよ。
特に脳みそが
レバーみたいで美味しいんだそうです。
今でも探してみれば
一部の焼鳥屋さんや居酒屋さんでは
扱っている所もあるみたいです。
有名どころとしては
京都の伏見稲荷大社の参道でも
雀の丸焼きが名物として売られているそうですよ。
興味のある方はぜひ
チャレンジしてみてください。
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こちらは私の小説です。よろしくお願いします。