日々暮らしていると
どうにも憂鬱になってしまって
どうしようもない時ってありますよね。
あまりにもテンションの低下したそういう時って
「元気出しなよ!」(^O^)/
なんて励まされるのも
却って疲れが増してしまう感じで
むしろ
どっぷりブルーな気分に浸り尽くしたい
そんな気分になりませんか?
平安時代初期に編纂された
わが国最初の勅撰和歌集
「古今和歌集」の
「巻第十八 雑歌 下」には
「 世の中が嫌になった」
というような事を詠んだ
ブルーな歌がたくさん収録されています。
そこで今回は
その中からセレクトした
どっぷりブルーな気分に浸れる
4首の歌をご紹介いたします。
まずは
№989 よみ人しらずのこちらの歌から──
風の上に
ありか定めぬ塵の身は
行くへも知らず
なりぬべらなり
風に吹き上げられる塵みたいに
ふわふわと定まらない私
どこへ行くか
わからなくなってしまいそうだ……
エネルギーが極度に低下しているときって
こんな気分になりますよね。
飛ばされまい、流されまいと
踏ん張る気力も元気も出ない……
空を流れていく雲を
ひたすら
ぼーーーーっと眺めていたい
そんな気分……
お次は
№952 よみ人知らずの
「世間の雑音なんか
もう聞きたくない」
ということを詠んだ歌です。
いかならむ
巌(いわお)の中に
住まばかは
世の憂きことの
聞こえ来ざらむ
どれだけ深い岩山の中に住めば
世間の嫌な事が
聞こえてこなくなるんだろう……
世間の雑音って
目にするだけ、耳に入って来るだけでも疲れますよねえ……
自分の事をああだこうだ言われ
激しく心身が消耗させられるのも、もちろん最悪なのですが
自分とはほとんど関係のないような事であっても
見聞きするだけで、なんだかドッと疲れてきてしまう。
情報をたくさん浴び過ぎる事って
精神的な疲れを誘発するのかもしれませんね。
深い山奥に引っ込みたくなるその気持ち
とてもわかるような気がします。
(現代だったらさしずめ、テレビ断ちとか、ネット断ちって所ですね)
お次は
「世間の雑音を
シャットアウトしたい」
のはもちろんの事
「もう誰にも会いたくない」
という所にまで到ってしまった心境を読んだ歌(作者不詳)です。
№975
今さらに
とふべき人も思ほえず
八重葎(やえむぐら)して
門(かど)させりてへ
今さら私の所に訪ねて来る人なんか
あるとも思えない。
幾重にも生い茂ったつる草で
門を閉じていると言いなさい。
門(かど)させりてへ
の
「させり」は「鎖す(さす)」に助動詞の「り」が付いた形。
「てへ」は「といへ」の縮まった形です。
使用人に「言いなさい」と命じているのですね。
「鎖せり」って言葉に
ものすご~~く
シャットアウトしている感じがありますよね。
鎖国の「鎖」
ですからね~~(;・∀・)
最後は
世の中が辛い……
なんでこんなに辛いの……
という
こちらの歌(よみ人知らず)で
シメとさせていただきます。
世の中は
昔よりやは憂かりけむ
わが身一つの
ためになれるか
世の中って
昔から辛いものだったのかな……
いや
私一人にだけ
辛いものになってるんじゃないのかな……?
そういう気持ちって、たぶん
誰もが抱いているんでしょうね……
お互いに、辛い事は
まあ、色々とありますけど……
お茶でも飲んで一休みして
明日にはちょっと
元気になれるといいですね……
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