TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「魯山人陶説」~北大路魯山人の美意識や芸術観が窺える名著!

今回は

美食の芸術家・北大路魯山人(1883-1959)の

陶器にまつわる講演や随筆などを

彼に師事していた平野雅章さん(1931-2008)がとりまとめた本

魯山人陶説」のご紹介をいたします。

 

 

大変な美食家で自らも料理を良く手掛けた芸術家(書家・画家・篆刻家・陶芸家)の北大路魯山人

料理を引き立たせるために欠かせないにも、並々ならぬこだわりがあり

 

昭和2(1927)年

44歳にして、ついには自らそれを作り出すようになりました。

 

手本としたのは

彼自身が

「これが好きだ!」

と惚れ込んでいる

安土桃山~江戸時代初期古陶や自然の風物。

 

そうして作り出された彼の作品が、この本の冒頭に写真で紹介されているのですが

 

魯山人が作った陶器は

天真爛漫で無造作でノビノビとした風情があって

「ああ、良いなあ……」

と感じるところがありました。

 

 

それにしても

この本を読んで驚いてしまったのが

彼の自信満々っぷりですよ……。

 

自分の美的感覚、良い物を見出す目に

絶対的な自信があるんでしょうね。

 

自分が「好きだ」「良い」と思う古陶の

「これの、この部分の、こういう所にグッとくるんだ」

と感じる

自分のそのセンスには揺らぎが無い。

だから

自分の作品はそれに近づけて行けば間違いない。

 

 

彼の陶器製作はその後、終生続いていくのですが

 

まだまだキャリアの浅い時分から

自分よりよっぽど長く作陶を続けている陶芸家を

遠慮無しにズバズバ辛口批評しまくっているのには

「うわぁぁ…………」

いささか、たじろいでしまう所がありました。

 

後年、人間国宝にも推挙され、辞退したほどのすごい陶芸家である

河井寛次郎(1890-1966)に対しても

彼はこんな事を言っています。

 

今年も高島屋であなたの陶器展を見せてもらいました。あなたは会場におられなかったようでした。

また例の病いを出して頭ごなしに言うわけではありませんが、あなたの作陶は土の仕事がまずいですね。高台などと来るとまるで成っていませんよ。

 

河井寛次郎氏の個展を観る」(昭和8年)より

 

おそらく

河井氏を認めているからこその「愛の鞭」だとは思いますが

それにしてもキツイ……。(+_+;))

 

それ以外にも

他の陶芸家連に対して、こんな辛口コメントを……。

 

芸術家ぶってはいるが、本当の芸術家と言える者が幾人あるだろうか。

殊にやきものの世界に、芸術みたいなものを作っているが、芸術作品は少ない。芸術というのは、いつも言うように人間の反映だ。

形以外のもの、肉眼では見えないものが作品に籠っていなければダメだ。これは並みの人では作られるものでないだろう。

今のように作家とは言えないような人が、一人前の顔をしているときには、なおさらのことだ。

作るものも鑑賞家も、もっと心眼鏡を研ぎすますことだ。いいものは直感でピーンとくる。人間を造ることが第一だね。

 

「愛陶語録」より

 

 

 

こんな事をズバズバと言ってしまって

根に持たれたり、嫌われたりしないんでしょうか!?

普通の人なら、心配になっちゃう所ですよね。(-_-;)

 

青山二郎『鎌倉文士骨董奇譚』の中にある

北大路魯山人」と題された随筆には

このように書かれておりました。

 

魯山人を嫌う人間は多い。

魯山人を識っている私の友達は、今までに大概喧嘩別れになっている。

 

やっぱり嫌われていたか~。

 

 

とはいうものの

 

魯山人、決して間違った事は言ってないと思います。

思った事を真っ正直に、ストレートに言っちゃってるだけで。

 

オブラートに包むような、婉曲的な言い方が出来ない人なんですね。

京都人なのに……。(^_^;)

 

 

日常生活に雅とか美とかを弁え、それを取り入れて楽しめる者は、たとえ貧乏暮らしであっても金持ち性と言えよう。その心の底にはゆとりがある。

金持ちであっても、貧乏性だと言われるたちの人柄に比ぶれば、随分幸福ものと言えよう。

能く言うところの心の富者である。

 

「雅美ということ」より

 

 

この魯山人陶説」という本には

小説などを書いている私にとっても

なるほどと納得できるような

勉強になる言葉が、非常にたくさん収録されておりました。

 

生前の彼の性格は、たいへんに付き合いづらかったようですが

魯山人の文章も陶器も

意外なほど親しみやすい印象で

 

それはあたかも

自分の姿を実際以上に良く見せよう──なんて事は一切考えない

彼の純粋性だとか

正直さの表れであるように、私には感じられました。

 

 



 

 

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こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。