夏から初秋にかけて
街角や道端でこんな花を見かける事がありますよね。
可愛い花にヒドイ名前が付けられているケースって、実はけっこうあるんですけど(オオイヌノフグリとか…ママコノシリヌグイとか…)
とっても可憐なこのお花も
実は
とんでもなく気の毒な名前が付けられています。
その名も
「屁糞(ヘクソ)かずら」
アカネ科ヘクソカズラ属のつる性多年生植物
日本全土と東アジアに分布
花期は7~9月
実は丸く直径5mmほど。はじめは緑色、熟すと黄褐色に変わる。
この実や葉っぱを傷つけると、ひどい悪臭を放つことから
屁屎葛(ヘクソカズラ)と名づけられている。
※屁屎は元々「屁臭(へくさ)」だったものが転訛したともいわれている。
別名 ヤイトバナ(灸花)サオトメバナ(早乙女花)サオトメカズラ(早乙女蔓)ウマクワズ(馬くわず)
「馬食わず」は
センニンソウの別名でもありますが
ヘクソカズラの別名でもあるんですね。
(馬酔木の別名でもあるらしい)
まあ~そんなに臭いんじゃ
お馬さんの食欲も、あんまりそそられるものでは無いでしょうねぇ……(^^;)
このお花がこんな酷い名前で呼ばれるようになったのには、かなり長い歴史があるようで
かの「万葉集」にもの中でも
「屎葛(くそかずら)」
として詠まれた、こんな歌があります。
そう莢(けふ)に 延(は)ひおほとれる 屎葛(くそかずら)
絶ゆることなく 宮仕へせむ
(清浄なサイカチの木にまとわりついている臭いヘソカズラみたいに、私もずうーっと絶えることなく、宮仕えしたいものですねえ~)
万葉集巻第16 No.3855
作者 高宮王(たかみやのおおきみ:伝未詳 たぶん皇族出身)
ヘクソカズラのこの悪臭は
葉っぱを虫に食べられないようにする
防御策らしいのですが
実の所
ホシホウジャクという蛾の幼虫には
むしゃむしゃ食べられ
ヘクソカズラヒゲナガアブラムシという虫には
汁をチューチュー吸われまくっているそうです。
何でも
彼らはそうすることによって
体内に悪臭を取り込んで
天敵に食べられないようにしているんだそうな。
ヘクソカズラは英語の名前は
skunkvine (スカンクつる草)
英語圏の人々にもやはり
その悪臭は知れ渡っていました……。
しかし
スカンクもまた
「姿は可愛いのに臭い」
という点では同じですよね。
ヘクソカズラには
「屁糞葛も花盛り」
ということわざもあるんですよ。
地味で不器量な娘でも、年頃になればそれなりに魅力的になる
という意味で
鬼も十八番茶(ばんちや)も出花
と同じような使われ方をすることわざなんですが
いやいやいや
ヘクソカズラって見た目には
充分カワイイお花ですよねえ!
「人嫌い」
「誤解を解きたい」
「意外性のある」
だそうです。
う~~~ん……
何だかやっぱり
ちょっと不遇で、いじらしく、可哀想な感じがしますよね……
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