今回は
平凡社から出版されている
小学生向け漢字解説本
「白川静博士の漢字の世界へ」
という本のご紹介をいたします。
白川静博士(1910-2006)の
古代漢字研究に基づき
小学校で習う漢字1006字
それぞれの成り立ちを解説した本になります。
福井県の小学校では
2008年からこの本を使った漢字教育が行われているそうで
(※現在発売されているのは2011年刊の改訂版)
福井の子供たちは漢字学習において
目覚ましい成果をあげているそうですよ。
─── と
そんな事が
この本の帯に書いてあったので
うちの子供が小学生の頃
夫が子供の学習用にと買ってきたのですが
子供自身は全く見向きもせず放置したまま
小学校時代を終えてしまったので
「もったいないなあ~」と
今、私がこれを読んで学習しているという次第です。
白川静博士の古代漢字研究における大きな発見は
「口」という字を含んでいる漢字の多くで
実は、それは顔の中にある、いわゆる口の意味で使われているのではなく
人が神様に願い事をする際に祝詞を入れるために使った器
「さい」
のことであった───という事です。
たとえば
「合」という字は
「さい」の上に蓋をしている形。
「さい(器)」と蓋がぴったり合う所からこの漢字が出来て「合う」という意味になった。
「和」という字は
軍門に立てる標識の木を表わした「禾」(か)と「さい」とを合わせた形で
器を置いた軍門の前で休戦協定を交わし、平和な状態に戻す約束をする事から
「やわらぐ、やわらげる、なごむ、なごやか」の意味に使われるようになった。
─── という見解です。
(※ただし「口」の字形の多くを「さい」と断定してしまう事には、他の学者さんからの異論もあるようです)
それ以外にも白川博士は
「阝」(こざとへん)を
神様が天と地上とを行ったり来たりする際に使った
「はしご」だと考えました。
たとえば
「隊」という字は
神様がのぼり降りするはしごの前に、いけにえの獣を置いた形から
天から神が降り立つところを示すようになり
やがて「群れ」「組」の意味にも使われるようになった
───ということです。
このような感じで
1年生から6年生までに習う漢字の成り立ちが
「甲骨文字」「金文」「篆(てん)文」などの古代文字と共に説明されているのですが……
…………実は
漢字の成り立ちって結構
怖いものが
多いんですよ。(*_*;))
たとえば
2年生で習う
「方」の字の説明は
このように書かれています。
「方」
横にわたした木に、死者をつるした形。
これをまじないとして他国との境界線に置き、悪霊を追い払った。
「遠くはなれた国、方位、かた、方法、てだて」の意味に使われる。
そして
3年生で習う「央」の字の説明は以下のとおり……。
「央」
首にかせ(刑罰の道具)を加えられている人を正面から見た形。
手や足でなく、体の中央に近い首にかせを加える刑罰なので、「まんなか」の意味となる。
そ、そ、そんな〜……
と若干うろたえながら
同じく3年生で習う
「幸」の字を
この字はさぞかし幸せな由来なんだろうな ♪
な~んて期待しながら見てみますと……
「幸」
手かせの形。
手かせとは、両手にはめる刑罰の道具である。
死刑などの重い刑罰に比べて、手かせをはめる刑罰は軽かったので、思いがけない幸せであったらしい。
それで、幸に「さいわい」の意味がある。
死刑よりはマシだから
「幸せ」だなんて……(T_T)
こんな感じの
ハード過ぎる由来が
小学校1年生でもちゃんと読めるように、すべてふりがな付きで書かれてあるのですが
その優しそうなイメージと
残酷すぎる由来とのギャップが
かえってジワジワと可笑しみを誘ってきます。
いや~~~……
漢字の成り立ちって
かなりエグイ由来の物が多いんですねえ……。
── と、まあ
そんなような事が
この本によって学習できるわけなのですが
最後に
6年生で習う「勤」という字の由来をご紹介して
締めとさせていただきます。
「勤」
音を表わすのは菫(きん)。
菫は凶作の時、頭の上に「さい」(神への祈りの文である祝詞を入れる器の形)をのせた神に仕える人が、
両手を前で交差してしばられ、火で焼き殺される形。
ききんの時、神に仕える人は、雨ごいをしても雨を降らせることができなかったら、こうして焼き殺された。
力は農具のすきの形。
農耕につとめてききんをのがれようと努力することを勤といい、「つとめる、つとまる、いそしむ」の意味に使う。
ああ、恐ろしや。
もしウッカリ古代中国に転生したとしても
神に仕える人にだけは絶対になりたくはないですね。(◎_◎;))
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