「えび反り」
という言葉がありますよね。
漢字で書くと
「海老反り」「蝦反り」
意味は
・歌舞伎において、相手の強さに圧倒される様を表わす演技で、片手または両手をかざしながら、エビのように体を後ろに大きく反らすこと。
・体を後ろに大きく反らした姿勢のこと。
────と、なっております。
さて
ここで気になってしまうのが
「エビのように体を後ろに大きく反らす」
とされている所です。
エビのカタチって
反ってなんかいない
っていうか
むしろ
猫背って言っても良いくらい
丸まってますよね!?
なのに
一体全体どこがどうして
「海老のように」「反る」
だなんて
真逆のイメージが出て来てくるのでしょう???
聞くところによりますと
プロレスなどの格闘技では
「逆エビ反り」
なんていう名前の技があるそうです。
「エビ反り」の「逆」だから
さぞかしダンゴムシみたいにギューギュー丸めこむ技なんだろうな、と思っていたら
こちらも
腹ばいになった相手の両脚を持ちあげて、反らしていました。
これって
普通に「エビ反り」じゃん……。(^^;)
うーーーーん、それにしても
全然
納得がいかないっ!
エビは反らない
それどころか
背中が丸まっているくらいなのに
どうして
「エビのように」「反る」
なんて言われているのか?
実を言えば
エビさん達は
生きている時には
こんなに丸まった背中をしているわけではありません。
こちらのエビさん達をご覧ください。
みなさん背筋は
スラーッと真っすぐに伸びてますよねえ……。
実は
エビのお腹側には筋が通っているのですが
加熱された時の、筋の縮み具合が、肉のそれよりも大きいために
茹でたり焼かれたりすると
それに引っ張られる形で、身が丸まってしまうんです。
ですから
エビフライや天ぷらなどを
まっすぐな形で仕上げたい場合には
生のうちに
お腹側に何か所か切れ目を入れてから
背中側を上にして
押し伸ばすようにして置き
両端を持って筋が切れるまで
それこそ
エビ反らすようにしながら伸ばすと良いそうですよ!(^_-)
──── ということで
加熱される前のエビは
特に猫背というわけでもないんですが
だからと言ってこれを
「反っている!」
とまで言ってしまうのには
いささか無理があるように思います。
この程度の姿勢で「反っている」なんて言われちゃうとしたら
ニワトリだって
「反ってる」って事になっちゃいますものねえ。
じゃあ
「エビ反り」という言葉は
一体どこから生まれて来たんだ?
と言いますと
それは伊勢海老!
それも
お正月に、しめ飾りや鏡餅などに飾られている
「飾り海老」の形から来ているんです。
エビは古来より
曲がった腰や長いヒゲが老人を連想させるということで
・長寿
目が飛び出しているので
・めでたい
成長するごとに脱皮を繰り返すところから
・新たに生まれ変わる
という、大変にポジティブな
縁起の良いイメージを持たれています。
その中でも
体が大きく、立派な触覚を備えている伊勢エビは
勇ましくもカッコイイ鎧武者の姿をイメージさせる上に
「威勢がいい」という語呂合わせ的な要素もある事から
武士階級に大変好まれておりました。
そのため
江戸時代から今日まで
伊勢エビは正月飾りとしても好んで用いられているのですが
その際
より豪華に
より威勢良く見せるために
ガーーーーッと
背中を反らせるポーズで固定されているのです。
つまりこれが
「エビ反り」の由来だった
というわけです。
この「飾り伊勢海老」
現在使用されているのはほとんどがプラスチック製なのですが
「いずみや鮮魚店」さんでは
全国で唯一
江戸時代から伝わる伝統技術で
本物の伊勢エビを使った
飾り伊勢海老を作っているんだそうですよ。
鴨川は、全国屈指の伊勢海老の産地ですものね! (^^)
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