TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

「大正時代の身の上相談」のご紹介&新聞の人生相談コーナーについて語ります。

先日、ちくま文庫から刊行されている

「大正時代の身の上相談」

(カタログハウス編)

という本を読みましたので

今回はそのご紹介を兼ねて

新聞の人生相談コーナーについて書こうと思います。

 

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インターネットの

掲示お悩み相談サイト

amazonレビュー食べログの口コミなどなど

 

自分以外の人が

何をどう感じ、どう思っているのかって

興味深いものがありますよね。

 

たとえば

 

今の世相がどうも納得いかず、すっごくモヤモヤするんだけど

こんな事を感じているのは自分だけなの?

 

とか

 

テレビや新聞では「○○が大人気!」ってしきりに言われているけれど、自分にはどうもピンと来ない。

本当の所は、みんなどう思ってるの?

 

─── とか。

 

マスコミ人や利害関係者ではなくて

なるべくフツーの一般人

ナマの声が聞きたい!

そして

私も発したい!

 

そういう欲求は自然なもの。

 

他の人の生の言葉を知ることが出来るインターネットツールSNSなどは

現在ではもう、私たちの暮らしの上で

必要不可欠なものになりつつありますよね。

 

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ところで

 

インターネットの無い、少し前の時代(1995年以前くらい)までは

一般人が広く世間に向けて声を発する手段は、ほとんどありませんでした。

 

普通の人々の意見やお気持ち表明は

せいぜい雑誌新聞投書欄人生相談コーナーなどで窺い知れるくらい。

 

そのため、これらのコーナーは

新聞においては貴重&人気の存在であり続け

今なお、欠かすことの出来ないものとなっています。

 

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ちなみに

 

2021年10月17日現在

4大全国紙で掲載されている

人生相談コーナーの名称

および

回答者の方々は以下の通り。(敬称略)

 

 

読売新聞「人生案内」

 

いしいしんじ 増田明美 最相葉月 

久田恵 山田晶弘 大日向雅美 

海原純子 出口治明 野村総一郎 

樋口恵子 佐貫葉子 出久根達郎

 

朝日新聞「悩みのるつぼ」

 

美輪明宏 上野千鶴子 姜尚中 清田隆之

 

産経新聞「人生相談」

 

川村妙慶 柴門ふみ 橘ジュン 

山本一力 熊木徹夫

 

毎日新聞「人生相談」

 

立川談四楼 渡辺えり 高橋源一郎 

ヤマザキマリ ジェーン・スー

 

 

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人生相談の回答者ってスゴイですよねぇ……。

 

どんな相談者にも、親身になって寄り添い

ありとあらゆる悩みに対し

現実的に実現可能そうな落としどころを提示してあげる。

 

決して

冷たく突き放したり

傷つけるような事を言ったりしない。

 

人生相談の回答者って

常識知性

優しさ包容力みたいなものと

人格的な安定が不可欠なんじゃないでしょうか。

 

我が家では現在、読売新聞をとっているんですけど

増田明美さんやいしいしんじさんの回答には

思わずジ~ンとなって、涙が出てしまうことがあります。

 

ほんと、優しいんですよねえ……。

きっと良い方なんだろうな~、というのが文面から滲み出ている感じです。

 

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朝日新聞の人生相談では

 

その昔(1984年~1995年)、故中島らもさんが担当していた

「明るい悩み相談室」というのが大好きでした。

 

いわゆる普通の人生相談ではなく

かなりオフザケ的なコーナーだったんですが

 

読者が投稿するネタ的な相談に

らもさんが面白回答していたのが、めちゃめちゃ笑えた記憶───

 

 

この「明るい悩み相談室」

 

下記のカタログハウスさんのサイト

そのベストセレクションが見られるようになっています。(^_^)

 

8時だよ!通販生活®明るい悩み相談室|【公式】カタログハウスの通販サイト (cataloghouse.co.jp)

 

 

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日本の新聞における

人生相談の元祖

 

1914(大正3)年5月2日

読売新聞紙上にて開始された

「身の上相談」です。

 

読者から寄せられた悩みに各界著名人が答える、という形式で

婦人家庭欄「よみうり婦人附録」に掲載されました。

 

当時の予告文には、このようにありました。

 

「一身上の出来事、たとえば結婚、離婚、家庭のわずらい、及び精神上の煩悶、婦人の職業問題等につき、男女に関わらずすべて思案にあまることのご相談相手となり、及ぶかぎりの力をいたしたいと存じます」

 

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大正時代の人々の悩みってどんなもの?

 

本書「大正時代の身の上相談」から、二つほどご紹介いたします。

 

 

題「弱い者いじめの世間に復讐を」

 

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(相談者)

弱い者いじめの世の中に、どうにも怒りが収まらんです!

ここはひとつ、横暴な奴らに対し筆の力で痛快なる復讐をなしとげたいと思うのですが

私のごとき才能の無い物には無理でしょうか?

 

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(回答者)

あなたに文才があるかどうかは、あなたご自身にしかわかりません。

 

社会があなたをいじめるとおっしゃいますが、社会とは鏡のような物で、あなたがニコニコしていれば鏡もあなたを歓迎しているように見え、あなたが怒っていれば、鏡も怒っているように見えるものです。

 

社会に対して復讐するとは、自分に向かって復讐するのと同じこと。

 

あなたが修養して立派になれば、社会もあなたを歓迎するようになり、復讐する必要もなくなりますよ。

 

 

題「転職をくり返す人生」

 

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(相談者)

僕は22歳の男子です。

学校を卒業してから某工場で働いていたのですが、終日汚い空気の中で油臭い作業服で地味に働いているのがイヤになりました。

そこで、僕は工場を辞めて、某商店で働くことにしたんです。

 

でも、働いているうちに結構イヤな事が多いのに気が付いて

これなら工場勤めの方がまだマシだと思うようになりました。

 

で、今度は鍛冶職の見習いとして働き始めたんですけれど、

今度はまた店員生活が恋しくなってきてしまい、家を飛び出し、某商店に勤める事にしたんですよ。

 

でも、もともと駆け引きとかお世辞とかが大嫌いなので、……やっぱり工場勤めの方が向いてるのかなー……

なんて事を思ったりもして……

もう、どうしていいかわからなくなってきました。

 

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(回答者)

昔、あるところに石切り職人がいました。

毎日コツコツ地味に石を切っていると、立派な服を着た人がうらやましくなってきました。

そこで石切り職人はお殿様になる事にしました。

 

ある日、お殿様が猟に出ると、雷雲が出てきたために猟が出来なくなりました。

「お殿様よりも雲の方が偉いじゃないか」

 

そこで彼は今度は雲になり、自分の威力を示したのですが、雲は太陽には勝てません。

「それなら太陽になろう」

 

しかし、太陽は道に横たわっている石像にはかなわない……ということで、彼はついに石になることにしました。

 

けれども石は毎日石切り職人にコツコツ削られます。

 

という事で、彼は結局

もとの石切り職人に戻って真面目に暮らす事にしたそうな。

 

──これは千葉の田舎に伝わる伝説ですけれども

これを聞いてあなたはどう思いますか?

 

迷ってばかりいては世界中を彷徨っていても足りませんけれど、覚悟を決めれば今すぐにでも、自分の暮らしを見出すことが出来ますよ。

 

 

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この本を読んで私は

 

大正時代も現代も

人間の悩みには

あまり違いが無いんだなあ……

と言う印象を受けました。

 

言葉遣いや道具立ては違うんですけど

人ってあまり変わらない……。

 

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相談と回答(共に大正時代)に関しては

そんな感想を持ったのですが

 

その一つ一つに

コメントとして付けられている文章に

むしろ時代を感じる所がありました。

 

こちらの本はもともと

1994(平成6)年

カタログハウスから刊行されたものなのですが

 

さすがに30年近く経っていますので

 

昭和軽薄体的なコメントのカジュアルな文体に

「あのころの空気」

といった感じの懐かしさをおぼえてしまいます。

 

微かにバブルの余韻が残る

平成初期の匂いが懐かしいっ!

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人の相談に乗るって難しいですよね。

 

愚痴を聞いたりネガティブな事を聞いていると

聞き手の精神がダメージをこうむる時もありますから

 

精神的身体的に余裕が無いとちょっと難しい……。

 

だから逆に

 

自分が誰かに相談に乗ってもらいたい!

とか

誰かにこの心のウジャウジャを聞いてもらいたい!

とか思っても

 

そうそう都合よく

話を聞いてくれるような相手っていないんですよね……。

 

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そんなことを考えて見ると

 

将来的には

人それぞれの性格や好みを熟知した

 

優しくて知的で包容力のある

AIロボットが現れて

 

話し相手になったり

愚痴を聞いたり

相談に応じたりしてくれるようになるかもしれないな~……

と、思ったりします。

 

というか

 

今すぐにでも

そんなロボットが

側にいてくれてたらいいのになあ~!

切実に思ったりもしています。

 

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今回ご紹介した本はコチラ。

 

 

 

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こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

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