TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

気の毒なガネーシャさん~首を刎ねられ牙を折られ……

先日

「よくわかるヒンドゥー教(瓜生中著 角川ソフィア文庫刊)

という本を読みました。

 

 

ヒンドゥー教の成り立ちですとか

聖典(ヴェーダ)のこと

 

有名な叙事詩

マハーバーラタ

(パーンダヴァ5王子VS従兄弟のカウラヴァ悪玉王子100人との戦い)

ラーマーヤナ

(ラーマ王子が悪魔に攫われた妻シーター姫を奪還する話)

のことなどが

わかりやすく解説されていて、大変ためになる一冊でした。(^_^)

 

 

ここでは

世界創造神ブラフマー

世界維持の神ヴィシュヌを始めとして

 

愛の神カーマ神猿ハヌマーンなど

様々なヒンドゥー神様たちも紹介されているのですが

 

その中でも

知恵の神ガネーシャさんの、いささか気の毒過ぎるエピソード

が非常に印象に残りましたので

 

今回はその辺を絡めながら

ガネーシャさんのご紹介をしたいと思います。

 

 

ガネーシャ

シヴァ神とその妃パールヴァティーの間に生まれた子供です。

 

お父さんのシヴァ

ヒンドゥー教においては

創造神ブラフマー、世界維持の神ヴィシュヌとともに

中心的かつ重要三神として並び称される存在で

 

超ワイルド破壊神として

有名かつ大人気の存在です。

そして

お母さんのパールヴァティー

 

ヒマラヤ山脈の神ヒマヴァットの娘

母性愛優しさの象徴とされる

金色の肌の美しい女神様です。

 

彼女はシヴァの最初の妻・ティーの生まれ変わりだともいわれています。

 

この父と母とを同じくする子供(ガネーシャ)には

軍神スカンダ(韋駄天)がいます。

 

 

ある日の事です。

 

お母さんのパールヴァティーが沐浴をする時に

「誰かに覗かれないように、ちゃんと見張りしててね ♥」

ガネーシャに命じました。

 

彼が見張りをしていると

お父さんのシヴァが帰って来て、沐浴場に入って行こうとしました。

 

 



ガネーシャが必死に彼の入室を阻んだところ

彼を我が子だと気が付かなかったシヴァは怒り狂ってしまい

 

いきなり彼の首をちょん切って

ブンッ!

と遠くに投げ捨ててしまいました。

 

その後パールヴァティーから

「彼は息子のガネーシャよ!」(ノД`)・゜・。

と聞かされたシヴァは (@_@;)

 

象の首を切り落として持ち帰り

ガネーシャの頭として

ポンッ!

とくっつけ、彼を復活させてあげました。

 

こうして

ガネーシャは象の頭を持つようになったんだそうですよ。

 

 

ガネーシャの災難物語

もう一つあります。

 

シヴァがカイラーサ山で昼寝をしている時のこと。

聖仙のパラシュラーマ(世界維持神ヴィシュヌの化身で、シヴァの直弟子)が面会にやってきました。

 

「父上の眠りを妨げたらいかん」

と思ったガネーシャが彼を阻止した所

 

ムカッ!

と来たパラシュラーマが

いきなり斧を投げつけ

 

それがガネーシャ右の牙

ガキッ!

と直撃。

 

牙がポロッ

欠けてしまいました……。(T_T)

 

欠けてますねぇ……。


また

こちらの本には書かれていなかったのですが

 

「ブラフマヴァイヴァルタ・プラーナ」には

彼が象頭になったエピソードの別バージョンとして

こんな災難話が書かれているそうです。

 

 

パールヴァティーガネーシャの誕生を祝うパーティーを開いた時のことです。

 

土星(凶星)の神であるシャニ

最初、招待を断ったのですが

「是非来てくださいよ~」

と言われたので出席することにしました。

 

───ところが

 

シャニに見つめられた途端

ガネーシャの頭は───

なんと

灰になってしまいました……

 

 

そこで

ヴィシュヌが急遽、かわりに白ゾウの首を持ち帰り

それを彼の首に挿げ替えた───という話です。

 



いやあ……

生れた直後から色々と気の毒なほどに

災難続きですねえ……。(^^;)

 

そんなガネーシャさんですが

聖仙ヴィヤーサが語るマハーバーラタを筆記し完成させたことから

 

学問の神

そして

商売繁盛の神

として人々から篤く信仰されています。

 

 

ガネーシャ仏教に取り入れられたのちには

歓喜天(かんぎてん)

大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)

と漢訳され

 

日本では中世以後

商売繁盛の神

「聖天(しょうてん)様」

として信仰されるようになりました。

 

日本における聖天様の像

二体の象頭人

ヒシッ ♥

ハグし合っている姿というのが一般的です。

 

 

これは

ガネーシャが父シヴァ怒りを

抱いて鎮めた

というインド神話に由来しています。

 

そして

LOVEを感じさせるその姿から

いつしか聖天様

遊郭の経営者などに信仰されるようになっていきました。

東京の浅草には

待乳山聖天(まつちやましょうでん)

というお寺がありますが

 

ここの西側には江戸時代

吉原の遊郭がありました。

 

 

この待乳山聖天

推古天皇の時代(在位593~628年)

十一面観音の化身ともされる聖天様を祀ったものです。

 

浅草寺(せんそうじ)を創立したメンバーの内の一人

土師真中知(はじのまつち) 飛鳥時代の官吏・中知(なかとも)ともいう

という人の館があった丘の上に建てられました。

 

江戸時代になり

聖天信仰が盛んになると同時に

 

二体でハグし合っている聖天様の像に

LOVE&SEXYなイメージが加味され

 

「まつち」

「待乳」の字が

当てられるようになったんだそうです。

 

……しかし

乳を待つって……(-_-;)

 

 

 

 

聖天様大根が大好物。

ということで

交差させた二本の大根がシンボルマークのように描かれ

宝前には大根がお供えされます。

 

インドには大根を持つガネーシャ───っていうのもあるそうですよ。

 

 

大根の持つ解毒作用が

心身を清浄にさせてくれるという

聖天様を象徴しているんだそうです。

 


ガネーシャさん(聖天様)って

頭を切られたり

牙を折られたりと

結構ひどい目に遭っているけれど

 

なんとなく

ホンワカとして福々しい

ユーモラスな感じがありますよね。

 

 

最後に

 

ヒンドゥー教の神様たちは

様々な動物たちを乗り物(ヴァーハナ)として使っています。

 

シヴァの乗り物は

ヴィシュヌの乗り物は神鳥ガルダ(迦楼羅)

といった感じで。

 

ところで

ガネーシャの乗り物って

一体、だと思いますか?

 

 

答えは

 

なんと

ネズミなんですよ。(^^;)

 

「潰されるって!!!!」

 

 

 

 

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