TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

映画「PERFECT DAYS」の感想~お金やドラマチックさが無くとも「なんか良い」生き方。

主演の役所広司さんが

第76回カンヌ国際映画祭

最優秀男優賞を受賞されたことで話題の映画

「PERFECT DAYS」(監督 ヴィム・ヴェンダース)を観て来きました。

 

「幸せってなんだろう……」とか

「よき生き方とは……」などといった所について色々と考えさせられる

しみじみと静かな味わいの、素敵な作品でした。

 

 

【内容(ネタバレ無し)-----------------

 

主人公は、東京の下町で古いボロアパートに一人暮らしをしている初老の男、平山

 

彼は公衆トイレの清掃を委託されている会社に勤める清掃人で、仕事にやりがいと誇りを持っています。

 

趣味はもっぱら、古本屋で買った本を読む事と音楽鑑賞。

インターネットはやらず

使っているのはガラケーのみ。

 

独自の工夫を凝らした清掃道具をどっさり積んだマイカーで、作業場所に向かいつつ、カセットテープから流れる渋い洋楽を聴くのが好き。

 

 

仕事が終わると銭湯で汗を流し

行きつけの居酒屋で食事。

 

地味で無口で

たいがいの場面、一人きりでいる彼ですが

纏っている雰囲気は、なんだか幸せそう。

 

そんな彼の元に、ある日突然

家を飛び出してきたという10代の姪っ子ニコが現れ

つかの間、生活を共にするようになります。

 

彼女の登場によって次第に見えて来る

主人公、平山の背景とは。

 

彼はなぜ

今、こういう暮らしをしているのでしょう?────

 

------------------------------------------

 

────と

このような物語なのですが

 

お金地位名誉

広い家良いクルマを持っている事が幸せ

そうでない事は不幸せ

 

必ずしもそうとは言えませんよね。

 

同じような境遇にあっても

不幸だと感じている人もいれば

幸せだと感じている人もいる。

 

人それぞれの性格や捉え方の違いもあるし

自らの意志で

「やっている」のか

それとも

他の様々な要因から、仕方なしに

「やらされている」のか

その違って結構大きいんじゃないでしょうか。

 

つつましく暮らしている平山さんが、幸せそうに見えるのは

彼が自らその生き方を

「選んでいる」からであって

否応なしにその境遇に放り込まれているわけではないから……かもしれません。

 

 

とはいえ

 

トイレ掃除をしていようと

ボロアパートに住んでいようと

平山さんは役所広司さんだという時点で、外見的には充分カッコイイですし

 

読んでいる本(知的な文芸書)といい

聴いている音楽(通好みの渋い洋楽)といい

ことごとくセンスが良いですから

 

実は、元々彼自身に人から

「いいなあ……」

と思われる要素がたくさんあるんですよね……。(性格も良いし、品も良い)

 

その上、彼の周囲にも

ガラの悪い人粗暴な人

精神を削って来るような厄介な人は、ほとんど見当たりませんから

 

この暮らしは、ちょっと

ファンタジーかもしれないな……

とも思えてしまう部分も、あるっちゃあるんですよね……。

 

 

それはともかく。(^^;)

 

平山さんのように

「今」を大切に生きるという事が

幸福の実感というものに繋がってくるのかな……

ということを考えさせられたりはしました。

 

一般的に私たちって

将来とか老後とかいった、先々の事に不安を抱き

その不安を解消するために、現在の時間を使っている

────みたいなところがありますよね?

 

商店のディスプレイなんかにしてもそう。

 

常に季節を先取りしていて

クリスマスイブが終わったら正月ムード

正月が明けたら節分────ってな具合で

「今現在」の季節は見ていない。

 

せめてクリスマス当日の12月25日には

まだ正月飾りを出さないでおいてほしいですけどねぇ……。

 

先の事なんて

どうなるかわからない。

長い老後が来る人もいるけど

老後が無い人だって、実は結構な割合でいる。

 

未来への備えも確かに、ある程度は考えておいた方が良いでしょうけど

それに全振りして、今をおろそかにし続けていては、なんだか本末転倒

だって

人生「今」の積み重ねで出来ているんですから。

 

「今」をちゃんと実感しながら大切に生きて

死ぬときに

「楽しかった!悔いはない!」

と思って死ねるのが

良き人生ってもんじゃないかと思います。

 

 

最後に

この映画を観るにあたって

ひとつご注意を。

 

映画の終わりの所で

この物語にこめられた思いを知る一助となるような

ある言葉が示されますので

 

エンドロールが終わりきるまでは

席を立たない方が良いですよ!(^_-)-☆

 

 

 

関連記事のご案内

 

映画「ゴジラ-1.0」の感想(面白かったよー!)

todawara.hatenablog.com

 

「幸せ」に関して色々と考えてみました。

todawara.hatenablog.com

 

ラッセル「幸福論」のご紹介

todawara.hatenablog.com

 

「幸せ」について考えていたら、立原道造の詩が沁みてきました。

todawara.hatenablog.com

 

アラン「幸福論」を読んで思った事

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。