TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

ニャンコさんって本当にしょっちゅう、時間も場所もかまわずに吐きますよね……。

猫を飼っていらっしゃる方にはよくわかる事だと思いますが

ニャンコさんって本当にしょっちゅう吐きますよね。

 

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毛づくろいをする時にどうしても毛を飲み込んでしまうから、それを吐かなきゃならないのは仕方がないのですが

 

それにしても

 

絨毯の上だろうが畳の上だろうが

所構わず吐きまくるので

 

後片付けは結構大変です。

 

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朝のバタバタ忙しい時とか

これから出かけようというタイミングとかにやられたりすると

本当に参ってしまうのですが

 

愛猫の健康を思うと怒るわけにもいきません。

(吐いてる姿も何だか可哀想ですしね)

 

ニャンコさんは健康体でピンピンしている時にも

日常的に吐いているので

飼い主の方は

彼らが吐くことには慣れっこになってしまうのですが

 

 

我が家のミータは春先に

嘔吐と下痢から脱水状態を起こして

危篤状態にまでなったので

近頃、私はちょっと神経質になっています。

 

 

嘔吐に下痢が重なると

本当にあっという間に脱水してしまうので

すぐにお医者さんに連れて行った方が良いですよ。

 

 

また

 

ミータは糖尿病でインシュリンを打っているので

食べたものを全部吐かれてしまうと

低血糖が怖いんですよね。

 

なので

吐いたらすぐに、食べさせるようにしています。

 

それにしても

 

吐きたい気分の時って

ニャンコさんなりに何か感じるものがあるんでしょうかね。

 

 

うちのミータはそういう時

 

やたらと蛇口の水を飲みたがったりします。

 

 

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洗面台にのぼって蛇口から直接水を飲むのは

いつでも大好きな彼なのですが

 

殊更しつこくニャーニャー鳴いてそれをせがむときは

たいがい吐きたいときだったりもします。

 

我が家には一階と二階にそれぞれ洗面所があるのですが

ミータが好きなのは

二階の洗面所

 

今朝も二階まで上って行き

「水を飲ませろ」

としつこくニャーニャー鳴き続けるので

しょうがないなあ、と思いながら

洗面台に乗せて蛇口の水を飲ませてやったら

 

しばらくピチャピチャ飲んでいて

満足そうな顔でぴょんと飛び降り

 

それから階段下に向けて

 

ピャーッと勢いよく

ゲロを噴射したのでした。

 

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階段リバースは……

 

フローリング部分である分

 

絨毯リバース

畳リバース

をされるよりは

まだいくらかマシなのですが

 

被害面積が広くなる分

 

やっぱり結構

後片付けが大変です(泣)

 

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愛するニャンコ様が健康維持のためにする事なので

 

リバースされる事は仕方が無いんですけれど

 

時も場所も関係ナシですからねぇ……。

 

いやはや~

忙しい朝には勘弁してほしいです~……。

 

 

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 こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

 

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台風スウェル

台風スウェル

 

 

 

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モーパッサン「脂肪の塊」の感想~たしかにこのタイトルではヒロインが可哀想。いっその事「ムッチリ姐さん」とかにしちゃったらどうでしょう。

今回は19世紀フランス文学を代表する作家の一人

ギィ・ド・モーパッサン(1850-1893)

「脂肪の塊」

の感想を書かせていただきます。

 

 

 

この作品

 

昔から「脂肪の塊」という

ちょっと可愛げのないタイトルで知られているのですが

 

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こちらの本を翻訳された太田浩一さんによりますと

 

原題の「ブール・ド・スュイフ」

「脂肪のボール」くらいの意味で

現代でも、丸々と太った人をこう呼ぶことがあるそうです。

 

この物語の主人公であるエリザベート・ルーセ

むちむちした肉感的お色気美女

なので

こんなニックネームが付けられている……

 

──── というわけなので

 

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「脂肪の塊」なんて言うと

ちょっとグロテスクなイメージを抱いてしまいかねないけれど

 

本来的にはもう少し可愛いらしい

愛のあるニュアンスが含まれているようです。

 

 

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あらすじ

 

普仏戦争に負けてプロイセン軍に占領されているルーアンの街から

10人の旅行客たちが乗合馬車に乗り込み

ル・アーヴルまで逃れようとしていた。

 

馬車に乗った面々は

金持ち上流階級の夫婦もの6人と、2人の修道女革命家のコリュニュデ

そして

「ブール・ド・スュイフ(脂肪ボール)」と綽名されている

むっちりと色っぽい娼婦である。

 

金持ち上流階級の旦那衆は革命家のコリュニュデを暗に軽蔑し

ご夫人連はブール・ド・スュイフを小馬鹿にした会話を交わし合っている。

 

上流階級の6人衆は、そんな風にして車中の親睦を深め合っていくのだが

雪の降り積もった道。

馬車はなかなか思うようには進まない……。

 

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到着時間を大幅に過ぎているにもかかわらず

宿にはまだまだ当分着きそうにない様子である。

 

そのうち

 

彼らは耐えられない位の空腹に襲われ始めてしまった。

けれども

周囲に食べ物を調達できるような店や民家は、全く見当たらない。

 

そんな中────

 

ブール・ド・スュイフが

弁当にと持参してきた大量の食糧を取り出し

一人でムシャムシャと食べ始めた。

 

 

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全員の視線がことごとく女のほうへ向かった。

やがて、車内にいい匂いがひろがると、乗客たちの鼻孔はふくらみ、口のなかが唾液でいっぱいになって、耳の下の顎の筋肉が痛くなるほど引きつってきた。

この娼婦にたいする婦人たちの侮蔑の念は頂点に達し、この女を殺してやりたい、もしくは、カップやバスケットや食べ物ともども、馬車の外の雪の上に放りだしてやりたいと思うほどだった。

 

空腹のため、彼らは気絶してしまいそうな位なのだが

奥様方などは最前からさんざん彼女を小馬鹿にしていた手前

「お願いだから、それを分けてください」

などとは

到底、言い出すことが出来ない。

 

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そんな彼らに向かって

ブール・ド・スュイフは、おずおずと申し出た。

「よろしかったら、みなさんも一緒に召し上がりませんか?」

 

そして彼女は

乗客全員に食べ物と飲み物を振る舞ったのである。

 

 

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地獄に仏のような彼女の態度に

一同の態度は次第に打ち解けていった。

 

会話を交わしているうちに

この娼婦が実は気高い愛国者であったことがわかり

人々の態度は少しばかり「一目置くような」感じになって来た。

 

すっかり夜になってから

馬車はようやく

中継地点であるトートの街に到着した。

 

彼らは宿屋に入ったのだが、トートの街もプロイセンに征服されていて

重要な事は全て若いドイツ人士官が仕切っていた。

 

そして

このドイツ人士官

ブール・ド・スュイフを一目見るなり気に入ってしまったのである。

 

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しかし彼女は

プロイセン嫌いのバリバリの愛国者

 

言い寄ってくるドイツ人士官に対し

「あんたの相手なんかまっぴらごめんよ!」

とはねつけてしまう。

 

彼女のその態度に、旅の面々は皆

「アッパレだ」喝采を送るのであったが ────

 

これに対し

ドイツ人士官は

 

ブール・ド・スュイフが自分の相手をしない限り

乗客全員の出発許可を出さない!

と言って

 

何日も何日も

彼らに足止めを食らわせてきたのである。

 

彼女の態度を

始めのうちこそ支持していた人々だが

 

いつまでたっても出発できないことにいら立ち

次第にうんざりし始めてしまう。

 

「もういい加減に妥協してもらいたいなあ……」

「どうせ玄人なんだから良いじゃないか……」

 

人々はもはや

これ以上の足止めは我慢出来なくなっていた。

 

頑として士官の相手を拒み続けるブール・ド・スュイフを

何としてでも士官の元に送り込まなくては!

 

────こうして彼らは

一同で作戦を練るのである……。

 

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--------

 

この先は話のキモであり

ネタバレになってしまうので

ここでストップしておきますが

 

「脂肪の塊」というタイトルや

「古典的名作」といった重々しいイメージとは違って

かなり軽快な語り口で、面白く読める群像短編小説です。

 

 

ただ

ここから先のラストにかけての展開は

さすがに「名作」と呼ばれるだけあって凄いです!

 

 

人々がさらけ出す身勝手さ偽善っぷり

自分の中にも

そんな部分が、決して無いとは言えないだけに

(また、そう思わせるほど自然な流れで彼らの心理や行動が描かれているだけに)

非常に身につまされるような気がします……。

 

また

上流人士たちが持つ鼻持ちならない

そして

どうにも抜きがたい選民意識。

 

こういうのって

どこの国でも、いつの時代でもありますよねぇ……。

 

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「セレブざんす!」

 

 

人間性の伴わない、身分経済力による

「私たちは偉い」感なんかに引き比べて

 

ヒロインの行動を通して見えて来る

 

 人間の本当の立派さ高潔さ────

 

そしてまた

それが必ずしも報われないという理不尽さ……。

 

そんな事を色々と

考えさせてくれるような

味わい深ーい名作です。

 

 

 

 

 

その他の記事のご案内

 

 マゾッホ「毛皮を着たヴィーナス」について

todawara.hatenablog.com

 

トーマス・マンヴェニスに死す」について

todawara.hatenablog.com

 

 

 

 

こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

 

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台風スウェル

台風スウェル

 

 

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短編小説「MOON LIGHT SERENADE -月影小夜曲-」

ようやく秋らしい涼風が吹き始めてきました。

 

今回は

「ザ・秋!」

という感じの短編小説を書いてみました。

 

 

 

 

MOON LIGHT 

SERENADE

 -月影小夜曲-

 

 

 

 

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 月影仄かな青い夜。

 繁華街の喧騒から遠く離れた川沿いの小道に、くすんだ煉瓦造りの建物が並んでいる。

 通称「ガス灯通り」──その昔、このあたりで初めてガスの明かりが点ったところである。

 今は電球に変わった街路灯が、暗い川面に橙色の明かりを揺らめかせている。

 

 

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 二階にあるバーの窓から、舗道の柳や街路灯を見下ろしながら、かつてモダンボーイ、モダンガールを誇っていた老人たちが、思い思いにグラスを傾けていた。

 

「ここは、いつまでも変わらんねえ」

 グレーのチョッキを着た絵描きのタイジさんがカウンター席でしみじみと呟くと、隣で八百屋のゲンさんが相槌を打つ。

「ここは五十年前のまんまだよ。このカウンターも、マスターも、窓から見える橋のあたりも」

 琥珀色の明かりの中、彼らはふと、古びた硝子窓に目を向ける。

 彼らの視線の先では、藍色の夜に抱かれながら、川をまたいだ石造りのアーチ橋が人気もなくひっそりと佇んでいた。

 

    

 

 石橋の上で、透明な秋風がつむじを巻いている。

 会社帰り風の青年と娘は、橋のたもとまで来たところで、ふと、歩みを止めた。

「…………不思議だな」

 ぼんやりとした顔で青年が呟くと、その横で娘が怪訝そうに白い首を傾げた。

「どうしたんですか?」

 再び歩き出した青年は、

「ここでいつか、君と二人で、こんな風に星を見上げていた事があったような気がするんです」

 そう言いながら欄干に寄りかかると、瞳を藍色の夜空に彷徨わせた。

 案の定。

 娘は困ったような笑顔を浮かべ、呆れたように肩をすくめている。

「なに言ってるんですか。私たち、今日会ったばっかりじゃないですか」

 サァッと空気を掠めながら、二人の横を車が通り過ぎていく。

 川辺に伸びた柳の枝が、風にさらさら揺れている。

「そうやって、いつも新入りの派遣社員を口説いてるんですね?」

「ち、ちがうって。僕はただね…………」

 あたふたと慌て始めた青年を見つめながら、娘は白い手で口元を抑え、ふふふふふ……と笑い出した。

 

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「あの橋のあたり、昔はよく野良猫たちが逢引きしていたものよねえ」

 カウンターに頬杖をつきながら、葡萄色のカーディガンを羽織った老婦人──マドンナ格のサユリさんが、思い出すような瞳で言うと、マスターを始め、そこにいた老人たちは

「そうそう」

「そうだったねえ」

と相槌を打った。

  くぐもるような音で流れ始めた曲は「I'm Getting Sentimental Over You(センチになって)」。

 年季の入ったレコード盤はボツボツと雑音だらけである。

 けれど、それに文句をつけるものなど、ここには誰もいない。

 

 

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「昔は野良猫だらけだったよなあ」

 タイジさんが言うと、ゲンさんが苦笑いをした。

「春になるとニャーゴニャーゴうるさくってよ」

「今はずいぶん静かになったねえ」

 三つ揃えで洒落こんでいる洋品店のトクゾウさんが、水割りグラス片手に、

「いつ頃からか……もう、二、三十年ぐらいにはなるかね、あいつらもパッタリ見なくなったねえ」

 首を傾げると

 タイジさんは、

「猫の世界にも流行ってもんがあるんだろう。この街はノラ猫どもにとっても時代遅れっていう訳さ」

 そう言って肩をすくめた。

 老人たちのほろ苦い笑いが、琥珀色の店内に漂う。

 

 

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 シャカシャカシャカ……

 シェーカーを振りながら、マスターが苦笑した。

「時代遅れ……。そう、だからもう、ここも店じまいってわけさ」

 一同の驚いたような目が、彼に集中した。

 

 ここ数年間に進められている再開発の波は、昔ながらの街並を、モダンで合理的で無機質な未来都市へと塗り変えていく。

 「おれもいい加減、歳だしね。そろそろ隠居して遊んで暮らす事にするよ」

 マスターがそう言いながらグラスにマティーニを注ぐのを見つめながら、ゲンさんは低く呟いた。

「……寂しいねえ」

 

 ふつっ……と会話が途切れる。

 老人たちはそれぞれの過去に思いを馳せた。

 

 

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 この街が活気に溢れていた時代。

 色とりどりの紙吹雪が舞う中、大通りで行われた映画スター達の大パレードには、誰もが仕事を途中で放っぽり出して、飛んで見に行ったものだ。

 ダンスパーティーは毎晩どこかしらで開かれていたし、このガス灯通りでも、大道芸人たちのジャグリングや軽業に、人だまりがいくつも出来ていたのだ。

 

 

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  何時の頃からか、百貨店が、映画館が、一つまた一つと消えていき、人々の足は遠のいて、通りを駆け抜けるものは、ただ、落ち葉と風ばかりになっていた。

 

    

 

「おや」

 ゲンさんが外を見ながら呟いた。

「今夜は珍しく、猫が二匹来てるじゃぁないか」

 かなり酔っているらしい彼の背中を、タイジさんが呆れながら叩く。

「ゲンちゃん、ありゃぁ人間の若い衆だよ。猫じゃぁない」

 一同の間にさざ波のような笑いが広がった。

「ゲンちゃんたら、ボケがきちゃってんじゃないの?」

「いやだねェ」

 

    

 

 藍色の空に、ぽっかり浮かぶ白く月。

 

 欄干に肘を乗せながら、青年と娘は先ほどから、あれやこれやと他愛のないおしゃべりを交わし合い、互いの心を急接近させていた。

 

 

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「本当なんだよ。この場所も君も、何だか不思議と懐かしいんだ」

 ふと、青年は月を見上げる。

 同じように月を見上げながら、娘はうっとりとした瞳で頷いた。

「私もそんな気がしてきたわ……。あなたといると、橋も川も月も星も、なぜだかみんな懐かしい……」

 

 川面に魚がポチャンと跳ねた。

 

 石橋の上に落ちている二人の影には、

 ピンと立った三角耳と長い尻尾が付いていた……。

 

 

        おわり

 

 

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夏の終わりのショートラブストーリーはいかがですか?

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 ちょっとビターな物語詩です。

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  短歌、俳句、川柳を詠んでみました。

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どんな物語になるかは貴方の選択次第!!

読者参加型時代小説「お江戸の若旦那」

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 こちらは私の長編小説です。よろしくお願いいたします。

 

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台風スウェル

台風スウェル

 

 

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10年以上も乗っていた子供乗せ自転車が壊れてしまったので、今度は電動アシスト自転車に買い換えました。

今日

買い物から家に戻り

乗っていた自転車から下りてスタンドを掛けようと思ったら

スタンドが壊れてしまい

後輪がうまく収まりませんでした。

 

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なんとか力づくで後輪を収めたのですが

スタンドが壊れたままでは困るので

そのまま自転車屋さんに行って修理を頼んだのでした。

 

ところがそこで

 

「スタンドが壊れているのはもちろんだけれど

長年の使用で自転車自体がかなりゆがんじゃってますね。

ハンドル幅が20センチも狭まっちゃってる。

この自転車をこのまま乗り続けるのは危険ですよ

 

と言われてしまい

 

それならと

自転車を買い替えることに決めました。

 

壊れてしまった自転車は

子供が赤ちゃんだった頃に買った

子供乗せ専用自転車

 

私はこれを

もうかれこれ10年以上乗り回していたんです。

 

子供を乗せることなんか

もうとっくに卒業していたのだから

もっと早くに買い替えておいても良かったんですけど

 

まだ赤ちゃんだった子供を

前カゴ座席に乗せていた時の思い出とか

後ろの座席に子供を乗せて

雨の日も風の日も毎日送り迎えをしていた幼稚園時代のこととか

 

そんな思い入れがいっぱいあったので

 

ちょっと手放し難い気持ちのまま

オンボロになってからもずっと

使い続けていたんです。

 

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それに

 

子供乗せ自転車の前カゴって

赤ちゃんが座れるくらいに大きいから

猫を病院に連れていく時なんかにも

ソフトケージを縦にすればすっぽり収るし

 

後ろの座席の背もたれ部分にも

買い物袋とかエコバックとかを引っ掛けられるから

かなり大量の荷物が運べたりして

使い勝手が良かったんですよね。

 

でも周りのママ友達は

みんなとっくに新しい自転車に乗り換えてたから

 

子供がもう大きいのに

いつまでもこんな自転車乗ってちゃ

変かもなあ……。

 

とは思いつつ

 

買い替えの踏ん切りが

なかなかつかなかったのでした。

 

でも

もう修復不能なまでにゆがんでしまっていると言われてしまったら仕方がありません。

 

これを機会にと

リニューアルすることにしました。

 

 

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とはいえ

 

ちびっこママ専用ともいうべき子供乗せ自転車を

10数年間も乗ってしまう私ですので

次に買う自転車もきっと同じくらいか

もしくは

それ以上長い期間乗るに間違いありません。

 

そうであるならばと

 

思い切って

 

以前からずっと気になっていた

電動アシスト付き自転車に乗り換えることにしちゃいました!!

 

 

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買い替えるにあたり一番重要なのは

 

ニャンコがケージごと乗せられるくらいの大きな前かごが付いていること。

 

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そこで

大きな前カゴが付いていた

パナソニック

ビビDXという自転車に決めました。

 

そして

今までの自転車と同じくらい大量の物が載せられるように

後ろにも大きなカゴを取り付けてもらいました。

 

私は以前一度だけ

ホームセンターで電動アシスト自転車を試乗させてもらったことがあり

上り坂でもすいすい難なく走れてしまう

その性能に感激していたのですが

 

今回も

店員さん曰く

「バッテリー満タンにすれば

三浦半島一周だって出来ちゃいますよ!」

との事。

 

長年苦楽を共にした愛車と別れる寂しさが

一辺に吹っ飛んでしまうような

夢のあるお言葉です。

 

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「これに乗ったら逗子とか楽に行けちゃいますか?」

と聞いたら

店員さんは笑って

「行けます行けます。逗子なら余裕で行けちゃいます

 

私の脳裏にぱぁぁぁーっ

キラキラ光る逗子の海が広がったのでした。

 

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新しい自転車に乗っての帰り道。

 

いつもなら国道沿いの平坦ルートを通るところ

「電動アシストの力とやらを見てやろうじゃないか」

と思い

 

あえて急坂の上り下りがあるルートを通ってみました。

 

 

電動アシスト自転車って

普通の自転車とは乗り心地が全く違うんですね。

進み方が、ぎゅん、ぎゅん、っていう感じで

ペダルにかかる力が格段に軽くて

なんだか新鮮な驚きです。

 

今までだったら必死の全力で

立ちこぎでしなきゃなきゃならなかった上り坂が

普通に座ったまま

余裕のよっちゃんで上れてしまいました。

 

 

 

素晴らしい~!!

 

今さらなんですけど

 

これって革命的じゃないですか!?

 

 

坂道だらけの横浜に住んでいる身としては

これはかなり重宝する事間違いなしですよ。

 

これからこの自転車に乗って

色々な所に行くのが楽しみです。

 

そして

 

今まで苦楽を共にしてきた子供乗せ自転車よ

 

長い事頑張ってくれて本当にありがとう。

 

 

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 関連記事

 

 

買った電動自転車でサイクリングをしてみた感想です。

todawara.hatenablog.com

 

 

 

 

 

こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

 

台風スウェル

台風スウェル

 

 

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純喫茶に「純」が付いているのは、「不純」喫茶と区別するためだったらしいですよ。

突然ですが

スパゲティナポリタンとかプリンアラモードとか

昔ながらの喫茶店に置かれているメニューって

時々無性に食べたくなりませんか?

 

私、ナポリタンに目が無いんですよねえ。

 

自分でも時々作るけど

お店で食べるのとは、なんか微妙に違う……。

 

 

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トーストみたいに

「パンを焼くだけ」のシンプルメニューでも

お店で食べるのはまるで別物みたいに美味しいのが不思議です。

 

 

近頃はスターバックスとかのシアトル系コーヒーショップとか、おしゃれなカフェもたくさんありますが

街歩きをしている時に

ナポリタンとかを出している昔ながらの喫茶店を見たりすると

 古い友達に会ったかのように

ちょっと嬉しくなったりします。

 

そういう喫茶店の名前には良く

「純喫茶」って冠がついていたりするのですが

 

「純喫茶」ってどういう事?

って気になったことありませんか?

 

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「純喫茶」なんて、あえて言うからには

「不純喫茶」があるって事なんでしょうか……。?

 

いやいやいや~。

 

「純文学」の反対が

「不純文学」じゃなく

「大衆文学(エンタメ)」

であるように

 

「純喫茶」があるからって

「不純喫茶」があるってわけじゃないんじゃないの~?

 

そんな風にも思ったのですが

 

実際の所はどうなんでしょうね。

 

 

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気になりましたので

今回はそこの所をちょっと調べてみました。

 

 

一般客に向けてコーヒーを振る舞う店は

明治の初めごろからポツポツあったらしいのですが

 

日本での本格的喫茶店第一号

1888年(明治21年)に上野に作られた二階建ての洋館

「可否茶館」だそうです。

 

外務省を退官した鄭永慶(ていえいけい)が始めたこの喫茶店には

国内外の新聞や書籍が置いてあり

トランプやビリヤードなどを楽しむ娯楽室

シャワールームなども備えられていました。

 

 

「コーヒーを飲みながら知識を吸収し、文化交流をする場として広めよう!」

鄭永慶にはそんな志があったらしいのですが

 

経営は振るわず、残念ながら5年で閉店してしまいました。

 

 

その後の

明治44年(1911年)

銀座に

カフェー・プランタン

「カフェー・パウリスタ

「カフェー・ライオン」

「カフェー」を称する店が相次いで誕生しました。

 

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これらの店にはそれぞれに個性があり

 

カフェー・プランタン

知識階級の人々のサロンとして流行

 

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常連客たちが壁に書いた詩や似顔絵などの落書きが名物だった「カフェ・プランタン」

 

「カフェー・パウリスタ

文化人だけではなく学生や一般の人々にも愛される庶民的な店

 

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パウリスタの「銀座でブラジルコーヒーを」から「銀ブラ」という言葉が生まれたという説もあり。

 

そんなカラーがあったのですが

 

 築地精養軒が出した

「カフェー・ライオン」

洋酒や洋食を提供し

和服にエプロン姿の若い女給が客の話し相手になる事で人気を博していました。

 

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関東大震災

 

「カフェー・ライオン」

はす向かいに

 

料理も酒も二の次だという

「カフェー・タイガー」という店が出店してきました。

 

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この店は

「美人女給と濃厚サービス」を売りにして

「ライオン」と張り合ったのですが

 

 

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その後さらに関西から

ユニオン、赤玉などの

エログロ好みの店 (どんなだよ!) が多数進出してきて

 

 

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「銀座は今や

大阪エロの洪水!」

とまで言われる状態になり

 

「タイガーのサービスも

おとなしいぐらいに感じるよ~」

などと言われたそうです。

 

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不純だー!

 

もはやコーヒー全く関係なーい!

 

(でも当時の文化人の多くが、このような「カフェー」を大変お好み)

 

 

これらお色気をメインとした店は

この後「バー」とか「クラブ」とかに発展していくのですが

 

この当時はこれらの店も

「カフェ」「喫茶店を名乗っていたので

普通の喫茶店と名称上ゴッチャになってしまっていたのですね……。

 

 その後

 

酒やお色気を売りにしている店

特殊喫茶店」とされ

昭和に入ってから「特殊飲食店取締規則」などで規制されるようになりました。

 

これらの店と区別をつけるために

 

コーヒーや甘味を出すという本来の喫茶店

「純喫茶」と呼ぶようになったんだそうです。

 

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なーるほどーーーー。

 

「純喫茶」という言葉の裏には

そんな経緯があったんですねえ……。

 

ブログネタを探しつつ

また一つ勉強になったような気がいたします。

 

 

 

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こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

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台風スウェル

台風スウェル

 

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「滝の白糸」で知られる泉鏡花「義血侠血」について~これは師匠・尾崎紅葉とのコラボ作品と言ってもいいかも~

今回は舞台の方でも有名な「滝の白糸」の原作

泉鏡花「義血侠血」のご紹介をいたします。

 

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明治27年に読売新聞紙上に掲載されたこの作品は

鏡花が21歳の時の作。

 

彼はこの前年

師匠である尾崎紅葉の斡旋によって

「冠弥左衛門」を京都日出新聞に連載し、作家デビューを果たしています。

 

しかし

「冠弥左衛門」の評判は散々なものでした。

 

新聞社は打ち切りを要請してきたのですが

紅葉が一生懸命にとりなして

鏡花に助言を与えながら、どうにか作品を完結させました。

 

そんな経緯があっての

この「義血侠血」

 

愛弟子をなんとか一人前の作家として立たせてやりたい!

 

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そんな師匠の親心により

大幅に添削が入れられております。

(新聞掲載時は匿名で発表され、後ほど単行本に収録された時は、奥付の作者名は尾崎紅葉になっていたんですよ)

 

 

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あらすじ

 

乗車賃の安い乗合馬車の出現により、客を奪われてしまい面白くない人力車夫たち。

乗合馬車と人力車とはライバル同士であり、ことあるごとに張り合っていた。

 

そんなある日

乗合馬車の呼び込みが、一人の美女に声を掛けた。

「人力車よりも安い上に、早く到着できますよ」

 

声を掛けられたのは

水芸で人気の太夫滝の白糸24歳。

姉御肌で豪気な性格の娘である。

 

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彼女が乗り込み、満席になった馬車が出発した。

 

この時、御者をしていたのは

学問好きの青年、欣弥(きんや)26歳。

 

彼は士族の出身だが、父を喪ったために学業を途中で断念し、母子二人の生計を立てるため御者の仕事をしているのである。

 

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人力車との競争など特に意識していない欣弥だったのだが、走者を代えながらリレー状態で勝負を挑んでくる人力車と、抜きつ抜かれつをしているうちに、興奮してきた乗客たちは彼を煽り始めた。

「兄さん、絶対に人力車なんかにゃ負けるなよ!」

 

「競争なんかしませんよ」

そういう彼に、乗客たちは迫る。

「呼び込みの奴は、さっきこの姉さんに『人力車より早く着く』って約束してたぞ」

 

「そうさ、あたしゃ約束したんだよ。どうしてくれんのさ」

 

そこで欣弥は馬車から馬を一頭外し、それに白糸をかき抱くように乗せると、猛烈な勢いで目的地まで駆けはじめた。

あまりの速さに人力車を追い抜いたのはもちろんのこと、白糸はついに気を失ってしまう。

 

彼は茶店の座敷に彼女を預けると、再び猛烈に馬を飛ばしながら、乗客たちが待っている所へと戻って行った。

 

そして

白糸が我に返った時 ────

 

彼女はすっかり

欣弥に恋をしてしまっていた……。

 

しかし

この競争に負けた人力車夫の会社は怒り出し、乗合馬車の会社に言いがかりをつけて来た。

そのあおりを食らい、欣弥は会社をクビになってしまった。

 

そんな彼が、職を求めにやって来た金沢で

思うに任せぬ職探しに疲れ、橋の欄干にもたれながら、うとうとうと眠りかけていた月夜の晩 ────

彼は白糸と邂逅する。

 

欣弥の方では彼女の事を忘れかけていたのだが

白糸にとっては、これは非常に嬉しい再会であった。

 

彼が御者をクビにさせられたと聞くと、白糸は少なからず責任を感じてしまった。

そして、向学心に溢れながらも学問の道を諦めざるを得ないという欣弥の身の上に、すっかり同情し

「そんならあたしが貢いでやるよ!」

───と、申し出たのだった。

 

人並外れた美貌の上に水芸の技は神業級。

超売れっ子芸人である白糸は金など唸るほど持っている。

 

「縁もゆかりもない人から貢いでもらういわれなんかない」

断る欣弥に、白糸は迫った。

 

「私はお前様だから貢いでみたいのさ。いくら否だとお言いでも、私は貢ぐよ。後生だから貢がして下さいよ。

ねえ、可(い)いでしょう、可いよう!応(うむ)とお言いよ。

構うものかね。遠慮も何も要るものじゃない。

私はお前様の希望(のぞみ)というのがかないさえすれば、それで可いのだ。それが私への報恩さ。

可いじゃないか。私はお前様はきっと立派な人物(ひと)に成れると想うから、是非立派な人物にして見たくッて耐まらないんだもの。

後生だから早く勉強して、立派な人物に成ッて下さいよう。」

 

キッパリと、激しく迫ってくる彼女の態度に、欣弥の心は打たれる。

 

こうして彼は

彼女の申し出を有難く受けることになったのだ。

 

だが男たるもの、ただ恩に甘えるだけというわけにはいかない。

この恩返しはどうしたら良いだろう。

 

─── そう言う欣弥に、白糸はこう答えた。

 

「私の望みはね、お前様に可愛がってもらいたいの」

 

愛の告白ともいうべきこの言葉に欣弥は

 

「よろしい。決してもう他人ではない」

 

ここに彼らの愛は成立し

二人は心の上で

夫婦同然となったのである。

 

欣弥はそれからすぐに上京し法律を学ぶことに専念し始めた。

 

白糸はせっせと彼に仕送りを続けた。

 

それまでの彼女は、金も稼ぐが金遣いも荒いといった生活ぶりであったのだが、欣弥の学費と彼の母の生活費を仕送りするために、別人のように真面目になった。

それはまるで、世話女房そのものの献身ぶりであった。

 

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そうして三年がたった。

 

見世物の世界は春と夏とが稼ぎ時。特に水芸などは夏に好まれる。

雪に閉ざされる北陸の冬。白糸は少しばかり経済的に困りはじめていた。

 

彼女はパトロンに頼み込み、金を前借りする。

「これで欣さん親子の半年分の生活費は何とかなった……」

ホッとした彼女は兼六園での興行後、疲れからついうとうと寝入ってしまった。

 

その時。

 

他に誰もいなくなった楽屋に、出刃包丁を持った大男が五人現われて、彼女を取り巻き凄みながら脅しつけた。

「姉さん、懐にある金を出しな!」

それは「出刃打ち」という、包丁を使った芸をしている連中だった。

 

「これはやれないよ!」

必死の抵抗をする白糸だったが、さすがに豪気な女でも凶器を持った屈強の男たちにはかなわない。

 

彼女は傷つけられた上、ついに金を奪われてしまったのである。

「ああ、欣様に渡す金が……」

 

警察に訴えようか……?

だが、警察に訴えた所で、金が取り返せるかどうかはあやしいものだ。

パトロンはもう、これ以上金など貸してはくれないだろう。

ぐずぐずしていては、欣様親子が食うに困ってしまう。ああ、どうしたら……。

 

彼女は地面に賊の出刃包丁と、必死の抵抗をした時にちぎった賊の浴衣の袖が落ちていてる事に気が付いた。

 

包丁の柄を浴衣の切れ端で包み、フラフラと歩きだす。

 

そんな彼女の目に入って来たのが、兼六園で貸席をしている金持ちの隠居夫婦の屋敷であった。

 

こんな事をしてはいけない……

いけない……と心の葛藤をしながらも

気が付けば ───

 

彼女は隠居夫妻を惨殺し

百円の金を盗み出していたのである。

 

現場に残されていた出刃包丁と浴衣の袖から、出刃打ちの男が殺人容疑で警察に捕まった。

 

しかし彼は必死になって主張した。

「人殺しなんかしていません!水芸の滝の白糸から金は奪いましたけれど、あの屋敷の前なんか通ってもいません!」

 

そこで白糸が呼びだされ、取り調べを受けた。

彼女は頑なに

「あたし、金なんかとられてません」

と言い張った。

 

裁判所での公判の時がやって来た。

 

人気芸人が関わった凶悪殺人事件というセンセーションで、傍聴人は山のように押しかけている。

 

毅然とした態度を崩さない白糸。

だが、入廷してきた裁判官たちに続き、いちばん最後に現れた検事代理の顔を見て───彼女は途端に顔が青ざめ、震えだしてしまった。

 

───それは新任の検事代理としてこの地に赴任してきた

欣弥その人だったのだ。

 

審理が始まった。

相変わらず白糸は

「あたしは金なんかとられちゃいません」

と主張する。

 

欣弥はその主張を目を閉じながら黙って聞いていたのだが、やがて声を励ましこう言った。

 

「其方(そなた)も滝の白糸といわれては、随分名代の芸人ではないか。それが、仮初にも虚偽などを申しては、その名に対しても実に愧(は)ずべき事だ。

人は一代、名は末代だぞ。

また其方のような名代の芸人になれば、随分多数(おおく)の贔屓(ひいき)もあろう。その贔屓が、裁判所において其方が虚偽を申し立てて、それがために罪なき者に罪を負わせたと聞いたならば、ああ、白糸は天晴な心掛けだと云って誉めるか、喜ぶかな。

もし本官が其方の贔屓であったなら、今日限り愛想を尽かして、以来は道で遭おうとも唾もしかけんな。

雖(しかし) 長年の贔屓であって見れば、まず愛想を尽かす前に充分勧告をして、卑怯千万な虚偽の申立てなどは、命に換えてもさせんつもりだ。」

 

その途端……。

 

「……そんなら、本当の事を申しましょうか」

 

白糸はすらすらと凶行を自供しはじめた。

彼女は懐かしい検事代理のために、喜んで罪の告白をしたのである。

 

検事代理の欣弥は

断腸の思いをこらえながら

大恩人である白糸を殺人犯として起訴した。

 

そして

 

彼女が死刑の宣告を受けた夕べ ───

 

欣弥は自殺を遂げたのだった。

 

   (完)

 

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「滝の白糸」という言葉は聞いたことがあるけれど、そのお芝居を見たことが無いので

 

私はこの話を

しっとりしたロマンチックな話なんだろうな~

 

と、勝手にイメージしていました。

 

なので

最初にこの小説を読んだ時には正直言って

「なんだこの突飛な話は!!」

と面食らってしまったのですが

 

ブログを書くために再読してみると

心理描写はかなり丁寧で

 

白糸が欣弥に貢ぎたいと思う気持ちも、戸惑いながらも殺人を犯してしまう場面も

「なるほど~、そうであれば、まんざらわからないでもないなぁ」

という気持ちになりました。

 

 

一度読んだ話でも、再読してみるとまた違う発見があるものですね。

 

 

ほとんど知らないような相手に、いきなり

「貢がせて!」なんて迫ったり、殺人を犯したり

欣様が自殺しちゃったり。

 

そんなエキセントリックな所はまさに

鏡花ワールド

炸裂!!

といった感じなのですが

 

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不自然な展開を

読みやすい文体や丁寧な心理描写によって

「うんうん、わかるよ~その気持ち」

と思わせてくれる所などは

かなーり紅葉先生の手が入っている事を思わせます。

 

これはもはや

鏡花&紅葉の師弟コラボ作品と言った方が良いかもしれません。

 

 

当初、鏡花が書いた原稿では

 

欣弥は裁判長だったそうですが紅葉先生によって検事代理に直され(そんなにすぐに裁判長になんかなれませんよね)

 

裁判の場面では

欣弥は証拠品の包丁を自分の両目に突き立て、血を吹き出しながら

「こうして盲目になった以上は、もはや知り合いとか言っても『眼中』に無い!」

と言って、その場で死刑宣告までしちゃってたらしいのですが

 

それも紅葉先生によって直されています。

 

ガッツンガッツン思いっ切り添削しながら紅葉先生

 

「なにこのグロ展開!こんなんじゃ全然読者の共感得られないからね!」

 

とか突っ込み入れてたんでしょうか。

 

鏡花のこのぶっ飛んだ発想

私は結構好きですけれども

 

とりあえずこの作品に関しては

 

直してもらって

大正解だったね!!

と思いました。

 

 

 

「義血侠血」はこちらの本に入っています。

外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫)

外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫)

 

 

 

 

関連記事のご紹介

 

 

妖しく美しくブッ飛んでいる鏡花世界について

todawara.hatenablog.com

 

 

鏡花の尊敬するお師匠様・尾崎紅葉について

todawara.hatenablog.com

 

 

 

 

 こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

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台風スウェル

台風スウェル

 

 

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台風の影響で仕事が休みになった時には、家でおとなしくしていた方が良いですね。

昨晩(2019年9月8日)首都圏を直撃した台風は凄かったですね……。

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こちらは横浜なのですが

一夜明けたら

あっちこっちに千切れた葉っぱやら枝やらが落ちてるし

 

国道沿いのプラタナスの街路樹も

根元からごそっと倒れているのが複数あったりして

 

「こんなに強い台風だったんだ~

今さらながらビックリしてしまいました。

 

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こちらは夜明け前に数時間

停電してしまったのですが

 

暑い時期の停電は

冷房も扇風機も止まってしまうのがきつい所ですね。

 

冷蔵庫の中のものが傷んじゃうんじゃないかと

気が気じゃなかったんですが

 

開け閉めするのを極力控えたのと

 

なんとなく捨てずにおいた保冷剤が

冷凍庫にはいっぱい入っていたので

なんとか大丈夫でした。

 

保冷剤とっておいて良かった~!

(単に貧乏性ゆえに捨てなかった

というだけなのですが)

 

 

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あと

 

停電中トイレに行きたくなった時には

いつも枕元に置いている

この電池式ランタンがすごく活躍してくれました。

   ↓

 

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雑貨屋さんで見かけた時に

一目ぼれして買ったものなんですが

 

こんな可愛い姿をしていながら

真っ暗闇の中

意外なくらいの頼もしさを見せてくれました。

 

 

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ところで

 

 

我が家の旦那さんは今日

交通大混乱のために

急遽、仕事が休みになったのですが

 

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「せっかく休みになったこの際だから

あれもこれもやっておこう」

とばかりに

 

日ごろ溜まっていた雑用的な用事を

いっぺんに済ませようと考えたみたいです。

 

 

用事先の事業所が皆ことごとく

台風のために休業になっていたり

定休日にあたったりしていたため

 

結局何一つ

済ますことができませんでした。

 

 

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とはいえ

 

せっかく降ってわいたように

ポカッと休日になったというのに

何もしないでいるのはもったいない!

 

なんて風に思うのか

 

「せっかくだからペットボトルの水を安売りスーパーに買い出しにでも行こう」

 

と私を誘ってきたんです。

 

 

車に乗り込み、少し離れた所にあるスーパーに向かおうとしたところ

 

あっちもこっちも渋滞だらけ。

カーナビもいたるところ真っ赤っか。

 

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多分

街路樹が倒れていたり

道路上にもまだ枝や物が落ちているからなんでしょうね。

道端にゴミ箱とかも転がってたし。

 

そんなこんなで

結局のところ

 

出発してから二十分くらいで

そのまま家に

戻ってきてしまったのでした。

 

 

ふう~~~

 

疲れただけだった~~~

 

 

こういう普通じゃない時は

お店だって道路だっていつもの通りじゃないんだから

 

あんまり

あれもやろうこれもやろう

なんて

 思わない方が良いですね。

 

 

 

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こちらは私の小説です。よろしくお願いいたします。

 

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台風スウェル

台風スウェル

 

 



 

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