TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

川上未映子さん「黄色い家」(読売新聞朝刊連載小説)の感想。

読売新聞朝刊紙上で連載されていた

川上未映子さんの「黄色い家」先日、完結しました。

 

毎日、ハラハラドキドキ、固唾を飲みながら楽しみに読んでおりましたので

終わってしまった今、なんだか虚脱感のようなものがあります。

 

 

物語は

主人公であるの語りで綴られています。

 

ある日の事

彼女は数十年間音信不通であった年上の知人・黄美子さん

「自宅に若い女性を監禁していた」

という容疑で逮捕された───

そんな事件報道を目にして、激しく動揺します。

 

そこから回想される

二十数年前の日々───

 

水商売のシングルマザーの元で、半ば放置気味に育てられていた幼い頃の

ある日突然目の前に現れた謎の中年女性・黄美子さんに優しくしてもらい

生まれて初めて、やすらぎのようなものを感じられるようになりました。

 

その後すっかり黄美子さんに懐いた花は

色々な経緯があって、彼女と一緒に暮らすことになるのですが

 

そこで一体、どんな事があったのか?

 

黄美子さんは、一体どういう人だったのか?

 

後年、彼女が監禁容疑で逮捕されるという事がわかっているだけに

そのあたりへの興味が非常に大きな吸引力となって

思わず知らず、物語世界にグイグイと引き込こまれてしまいます。

 

 

連載中は、とにかく

この後、一体どうなるの!?

というのが

毎日、気になって仕方がありませんでした。(^^;)

 

まるで自分が花と同一化したかのように

彼女と一緒に悲しくなったり、嬉しくなったり、不安になったり。

 

川上未映子さんは

感情描写と言うか心理描写と言うか

を描くのが恐ろしいほど巧い!

 

人間心理の、ものっすご〜く深い所まで突っ込んで、鋭くグリグリ抉り込んでくるような花の独白には、凄絶なものがありました。

 

ひしひしと迫る心理描写

作品世界のリアルな空気感

───といったあたりもすごいんですけど

 

物語の内容的にも

色々とあれこれ思いを巡らせたくなってしまうような

大変に深みのある素晴らしい作品でした!

 

 

花が体験していく事の中には

かなり犯罪臭の強い、異常な事があったりもするのですが

 

その時々の彼女の心境自体は

私たちが普段、友達や仕事に対して思っているようなものに、すごく近かったりして

「ああ、わかるよ。その気持ち!」

なんて思っちゃうのが、なんだか不思議。

 

なんて言うか……

「普通の事」「異常な事」

意外と境界線があいまいなんだなあ……と感じたりもして。

 

一歩間違えば、犯罪方面の深みにどっぷり落ちてしまったり、凄惨な事態が引き起こされることになりかねないんだけれども

ギリギリの所で、かろうじて「普通の人」の括りに留まっている───

 

精神的や環境的に

そういう所にいる人って

実はものすごく多いのかも知れませんね……。

(パッと見にはわからないだけで)

 

 

花から見た黄美子さんの印象は

年月とともに微妙に変化していきます。

また

他の人から見た黄美子さん像も

花が感じるのとは若干違うものだったり……

 

確かに

人物像って、関わる人や、関わり方いかんによって、全く印象が変わってきますよね。

 

───そんな風に考えると

 

事件だとか物事真相

なんていう物は

関わった人の数だけ、それぞれに違う真実があり

三者には、容易に掴み得ない物なのかもしれませんね……。

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

 

角田光代さん「タラント」の感想

todawara.hatenablog.com

 

中島京子さん「やさしい猫」の感想

todawara.hatenablog.com

 

「大正時代の身の上相談」~新聞の人生相談コーナーについて

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

 

 

三浦の海辺で見つけた謎の花〜ワレモコウの仲間でしょうか……?

先日(10月頭頃)

三浦の江奈湾(松輪漁港)の奥にある広い岩場で、磯遊びなどをしてきたのですが

 

その時、崖下の草地で

不思議な花を見つけました。

 

それがこの花なのですが……

 

 

大きさといい

形といい

まるでツクシンボのようなのですが

 

季節は

 

しかも良く良く見てみると

先の方に

まるで花冠でもかぶっているように

すごーく小さな花をつけています。

 

これが生えていた環境は

江奈湾の海を臨む広ーーーい岩場の

陸側の方にある崖下の草地です。

 

 

近くには

こんなフジツボの大群も見られます。

 

 

こんな場所に生えているって事は

きっと

潮風には強い植物

って事なんでしょうね。

 

 

家に帰ってから、ちょっと調べて見たのですが

結局正体はわからずじまいでした。(-_-;)

 

季節がら、なんとなく

吾亦紅(ワレモコウ)の仲間かな……?

と思ったりもしたのですが

 

吾亦紅にしては

丈が低すぎるような気もするんですよねぇ。

 

なにせ、ツクシンボみたいなサイズですから……。

 

こちらはワレモコウ(バラ科・ワレモコウ属)の花。ひょろっと茎が長いです。

ちなみにこちらはツクシンボ(トクサ科・トクサ属)。サイズ的にはこっちに似ています。


正体が皆目分からないので、いささかモヤモヤするのですが

 

可愛いっちゃ可愛いお花ですよね。

なんかちょっと奇妙な感じだけど……。

 

まるで

花冠を被った小人さん

みたいです。

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

 

この花の正体がついに判明しました!

todawara.hatenablog.com

 

今年のサバも大変美味しかったです!

(今回もサバを食べに行って、そこの海辺で、この花を発見したんです)

todawara.hatenablog.com

 

海辺って、不思議なものが色々ありますよね。

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

 

 

注ぎ口のついた鍋からうまく注げない。なぜかいつもこぼれてしまう。

注ぎ口が付いた鍋って

お玉を使わなくても汁が注げるから

とっても重宝しますよね!

 

 

 

とは言うものの

 

「いざ液体を注ごう」

という段になって

 

この滝みたいに

液体が綺麗に注がれてくれれば問題ないんですけど

 

 

どういうわけか

 

ダバダバダバ~……

こぼれてしまい

上手く注げないってありませんか?

 

 

ちゃんと注ぎ口から注いでいるのに

なぜか知らんけど

こぼれてしまう。

 


私などは

人並外れた超絶ぶきっちょですので

 

そんな事が

しょっちゅうあるのですが

 

どうも

この部分を汁が通過するように……と意識し過ぎると

むしろ

ダバダバとこぼれやすいような気がしてならないんですよねえ……。

 


それよりかは

 

少し上

この辺りのところを意識して注いだ方が

私は失敗が少なくて済んでいる感じです。

 


「なんとなくそんな感じがする」

という曖昧な個人的感覚なので

必ずしも100発100中でうまく注げるというわけではないのですが

 

もし私と同じように

「注ぎ口のある鍋から上手に注げない!」

とお悩みの方は

ぜひ一度お試しになってみて下さい。

 

(おまけ)

三浦の海辺に遊びに行った時に正体不明の謎の花を発見しました。

 

 

関連記事のご案内

 

 

ワイドパンツでトイレに入る時はこうしたらいいですよ!

todawara.hatenablog.com

 

ヨークマートのセルフレジって楽しいですよね。

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になりますよろしくお願いいたします。

 

 

ハギに似た可憐な花・コマツナギ(駒繋ぎ)。

我が家の近くに

草木が鬱蒼と生えている崖があって、その下には涼しげな小川が流れているのですが

 

その場所に、初夏頃から初秋にかけての間

萩に似た、葛のミニチュアのような小花がたくさん咲いていました。

 

 

とても可憐で、可愛らしいお花なのですが

 

「この葉っぱの形状……これは、もしや……?」

 

私の中では、とある疑念が浮かんでいたのでもありました。

 

「これはもしや……退治しても退治しても我が家の敷地にしつこく生えて来る、あの雑草成長した姿なのではあるまいか……?」

 

これが我が家の敷地内で生えている雑草です。何度除草剤で枯らしても、ほとぼりが冷める頃にはまた大量に生えてきます。まったく、すごい生命力です……。

 

これがその雑草なのかは、まだ不明なのですが

 

この、萩に似たカワイイ花をつけた植物は

 

コマツナギ (マメ科コマツナギ属)

という落葉低木だそうです。

 

日本、朝鮮半島、中国が原産

日本では

本州、四国、九州と広く分布しているそうです。

 

 

コマツナギかあ……

 

「小松なぎ」って

なんだか人の名前みたいですが

 

 

このお花の漢字表記は

「駒繋ぎ」

 

それには

茎で馬を繋ぎとめることが出来るから

という説と

この葉っぱを馬が食べ始めると、この場を離れられなくなってしまうため

という

二つの説があります。

 

 

いやぁ、

こんなナヨナヨした木

到底、馬なんて繋ぎ留められないでしょ~

 

という感じですので

 

馬の好物説の方が有力みたいですよ。

 

 

コマツナギの学名

Indigofera pseudotinctoria

 

Indigoという言葉が付いているとおり

仲間の

イワンコマツナギ(台湾駒繋ぎ)

ナンバンコマツナギ(南蛮駒繋ぎ)からは

藍色の染料(インディゴ)が取れるんだそうです。

 

え?

それじゃぁ

普通のコマツナギではどうなの?

と思って調べて見たのですが

 

普通のコマツナギでインディゴ染めをしている

という方は

全く見当たらなかったので

たぶん無理なんでしょうね……。(^^;)

 

 

さて

そんなコマツナギ

 

花言葉

「希望をかなえる」

だそうですよ。

 

なんだか縁起良さそうですね!!

 

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

 

漢字の上で萩と紛らわしい荻(オギ)には「風聞き草」っていう別名があるんですよ。

todawara.hatenablog.com

 

ドクダミは名前とは裏腹に無毒でエライ植物!

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

 

 

 

飛行機ニャンコ事件簿

これまで、以下の記事

 

カメ、犬、鹿、サル、タヌキ、キツネなどが

空港に侵入して騒ぎになったり

飛行機にぶつかってきたり

 

といった

動物によるアクシデントの数々を書いてきましたが

 

todawara.hatenablog.com

todawara.hatenablog.com

 

今回は

飛行機空港に紛れ込んで大騒動!

という話題をお届けしようと思います。

 

まずは

猫がコックピットに侵入してしまった!

というお話から。

 



2021年2月24日

 

ハルツーム国際空港(スーダン)からドーハ国際空港(カタール)へ向けて

ターコー航空(ターコーアビエーション)のボーイング737型機(3T-234便)が飛び立ちました。

 

その直後

 

コックピットの中に突如

ニャンコが現れました!

 

※イメージです

 

この猫

前夜、格納庫の中で機体をメンテナンスしている最中に、うっかり入り込んできてしまった野良ネコさんだったようですが

 

いい気分で居眠りをしていた所

いきなり飛行機が動き出したことに

ビックリ仰天して狂暴化してしまったようです。

 

フーフーシャーシャー

クルーに威嚇をし始め

捕まえようとしたところ、ニャンコの興奮はさらにヒートアップ!

 

 

大暴れの果てに

ついには機長にまで襲いかかってきてしまったために

 

「危険すぎるから引き返すぞ!」

 

ということで

離陸してから30分後に、再びハルツーム国際空港にUターン。

 

緊急着陸を余儀なくされてしまったそうです。

 

 

【コックピットに猫が侵入して大暴れ

といえば

イスラエルエル・アル航空が所有するボーイング737型機

駐機中にヒドイ目に遭った事もあるんですよ。

 

 

2021年2月7日

 

ベン・グリオン国際空港(イスラエル)で整備中だったエル・アル航空ボーイング737のコックピットから、猫が発見されました。

 

格納庫で駐機されている間に入り込んでしまったニャンコさん

発見されるまでの間

かなりやりたい放題に大暴れしていたようで

 

コックピットの内部は

あちこち、ひっかき傷やら咬み跡だらけだったそうです……。(-_-;)

 

 

色々な動物が

空港敷地内に侵入してくる

という話はよく聞くんですけど

 

コックピットの中に入って来て暴れる

というのは

ニャンコさんならではかもしれませんね……。(^_^;)

 

それ以外に

猫の場合には

 

乗客が貨物として預けた子がウッカリ脱走してしまい

空港で迷子になってしまう

というケースも多いようです。

 

【インディラ・ガンディー国際空港で迷子猫】

 

それは2020年9月1日のこと

 

インドのバンガロールに住むアスタ・シャーさんは、西部にある都市アフマバードに行くためエア・インディアの飛行機に乗っていました。

彼女の2匹の愛猫はキャリーケースに入れられ、同じ飛行機の貨物室に。

 

やがて飛行機は乗り継ぎ地

インディラ・ガンディー国際空港(デリー)に到着しました。

 

ところが

 

なんとここで

彼女の愛猫のうち

ナーラちゃん(生後8か月)が

行方不明になってしまったのです!

 

どうしてそんな事に!?

 

飼い主としては

血の気が引いてしまうような事態ですよねえ……。

 

どうやら

キャリーケースの扉が開いてしまっていたようなんですよ……。

 

着陸後の飛行機から脱走してしまったナーラちゃん

「空港のターミナルビルで歩き回っている猫がいたよ」

そんな情報がよせられてきました。

 

いてもたってもいられない飼い主さんは

この先乗る予定の飛行機をキャンセルし

愛猫を探すことに専念する事に決めました。

 

とは言っても

巨大インディラ・ガンディー国際空港

この中で、一匹の子猫を探し出すのは容易な事ではありません。

 

空港当局者や野生生物の保護活動を行うNGO「Wildlife SOS」も加わり

大捜索作戦が始まりました。

 

そうして4日目にして

ついに

空港の貨物保管区域にいるナーラちゃんを発見!

 

極度の空腹と恐怖心からシャーシャー威嚇してしまうため、かなり苦戦したようですが

数時間後ようやく捕獲に成功!

 

ナーラちゃんは無事

飼い主さんの元に帰ることが出来ました。

 

めでたしめでたし。

 

 

ところが

それからちょうど1年後 ───

 

これとソックリ同じような話が

アメリカでも起こってしまいます。

 

 

ジョン・F・ケネディ国際空港で迷子猫】

 

インドでナーラちゃんの迷子騒動が起こってから1年後の

2021年9月21日のことです。

 

舞台はニューヨーク

ジョン・F・ケネディ国際空港

 

サルバトーレ・ファツィオさん

イタリアに行くために、愛猫をカウンターで預けたのですが───

 

飛行機に積み込まれる途中で

Oh my God!

猫ちゃんがケージから飛び出してしまい

滑走路に逃げ出してしまったではありませんか!

 

すかさず空港職員が追いかけたものの、ついに愛猫は行方不明に。

 

そして、そのまま

二週間も経過してしまいました……。

 

愛猫が心配で心配でならない飼い主のファツィオさん

どうにもたまらずに

この件をフェイスブックに投稿

 

すると

 

「迷子のペットを探す仕事をしている」というデバッカーさんという方が、それを見て

「猫ちゃん探しに協力するよ!」

と申し出てくれたのです。

 

……とはいうものの

広大JFK空港の敷地内……

しかも

失踪から二週間以上も経っています……

 

愛猫がまだ滑走路の近くにいるかどうか

それさえも皆目わからない……

───という状態での捜索です。

 

そんな中

空港職員が猫のものと思われる首輪滑走路上で発見しました!

 

 

そこで

カメラを設置して観察してみた所 ───

 

録画開始から10時間後

猫の姿がカメラに収められているではありませんか!

 

さっそくその周辺に捕獲用のカゴを配置。

 

こうして

迷子になってから18日後

ようやく猫ちゃんは身柄を確保されたのです。

 

猫ちゃんは身体にいくつもの傷を負っていて、体重も1.5キロほど痩せてしまっていたそうです……。

 

でも

飼い主さんの元に戻ってからは

元気を取り戻したそうですよ。

 

よかったですね!( ;∀;)

 

 

これ

どちらのケースとも

 

猫を入れていたクレート(キャリーケージ)の扉が、なぜか開いてしまっていた

というパターンなんですが……

 

ペットを飛行機に預ける際には

クレートの扉がきちんと施錠されているか

しっかり確認しておかないと怖いですねぇ……。

 

 

ペットを飛行機に乗せる場合のクレート

航空会社からレンタルできる場合もあるのですが

 

ペットのコンディション的にも

なるべく自前で用意しておいて、居心地に慣れさせておいたものを使った方が良いみたいですよ!

 

その場合

IATA(国際航空運送協会)の規定に沿ったクレートを使ってください」

と言われるケースが多いんですけど

 

IATA国際航空運送協会の規定

って一体どういうもの?

───とお思いの方は

 

こちらのユナイテッド航空の説明を参考にしてみてください。

ペットの輸送のための準備: クレートの要件 (united.com)

 

 

ちなみに

ANA Cargoのページには

このように書かれております。

 

1. 材質は変形、破損しない物で、中の動物の重さに耐えられる容器であること。

 

2. 動物は容器の中で方向転換でき横になれるスペースが確保されること。

 

3. 空気の流入が十分にあり、最低3方向に通気口がある構造となっていること。

 

4. 容器の出入り口は不用意に開かないよう、施錠等が施されている構造であること。

 

5. 通気口より動物の一部がはみだしたりしないよう、目の細かい網で覆われていること。

 

6. 接合金具が中の動物に壊されない構造であること。

 

7. 容器の隙間や継目から動物が逃げないような構造であり、他の動物に害を及ぼす恐れのないこと。

 

8. 容器の内側に動物を傷つけるような突起物がないこと。

 

9. 容器の中は常に清潔に保たれていること。

 

10. 吸水剤の下敷きなどがあって、液体や汚物などが外に漏れないようになっていること。

 

11. 必要に応じて取手が付いていること。

 

このほかにも

 

・圧力がかかっても変形しない頑丈な硬質プラスチック製、木製、または金属製。

・上面は一枚板で、扉あるいは換気口が付いていないこと。

 

などといった条件があったりもするようです。

 

ネットで買う時には

「IATA航空輸送基準ペットクレート

で検索すると

色々出てくると思いますよ!

 



 

 

関連記事のご案内

 

 

飛行機にぶつかる熊!シャケ!鹿!鳥!

todawara.hatenablog.com

 

空港に侵入してくる亀!犬!猿!鹿!

todawara.hatenablog.com

 

 

 

 こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

牛車の乗り心地は結構悪い~「今昔物語集」から頼光四天王の面々が牛車で酷い目に遭った話

平安時代の貴族などが使っていた

牛車(ぎっしゃ)

という乗り物がありますよね。

 

なんとなく

まったり・のんびりしたイメージがありますが

実際の所乗り心地はどうだったんでしょう?

 

現代のようにきちんと平らに舗装されているわけではない

平安時代のボコボコ道ですので───

 

───と

 

その辺りの所が窺い知れるエピソードが

平安時代の説話集

今昔物語集にありましたので

今回はそちらのお話をご紹介しようと思います。

 

 

こちらは

今昔物語集第24巻の第56話

に収録されているお話です。

 

平安時代の中期に

源頼光(みなもとのよりみつ)という

英雄的な武人がおりました。

 

清和源氏の三代目にあたり

摂津源氏の祖でもある頼光は

時の権力者藤原道長に仕え、勢力を伸ばしておりました。

 

大江山にいた酒呑童子(しゅてんどうじ)という酒好きで誘拐犯な悪い鬼を退治したり

土蜘蛛という巨大な蜘蛛の化け物を退治したり

といった武勇譚のある人で

 

中世文学のなかでは

坂上田村麻呂藤原利仁藤原保昌らとともに

伝説的武人ベスト4のうちの1人とされています。

 

 



その頼光には

四天王と呼ばれる

いずれ劣らぬ剛勇な部下たちがおりました。

 

そのメンバーというのが以下の4人。

 



四天王の筆頭格嵯峨源氏の末裔

京都の一条戻り橋の上で茨木童子(酒呑童子の子分の鬼)の腕を切り落としたことがあるイケメン武者の

渡辺綱(わたなべのつな)

 

 

弓の名手。糸で下げた針をも射ることが出来てしまう。

川で産女(うぶめ)という女妖怪に出会ったこともある

卜部季武(うらべのすえたけ)

※平季武(たいらのすえたけ)ともいう

 

四万温泉を発見したり、碓氷峠で巨大蛇を退治をしたり、足柄山で金太郎をスカウトしてきたりした

碓井貞光(うすいさだみつ)

※平貞道(たいらのさだみち)ともいう

 

幼い頃は金太郎として山で熊と相撲の稽古。

その赤ら顔にちなんで、えんじ色の食べ物が「金時」と呼ばれるようになり(例・宇治金時)、息子の金平(かねひら)は「金平(きんぴら)ごぼう」の語源にもなっている

坂田金時(さかたのきんとき)

 

 

先にお話ししました

酒吞童子土蜘蛛などといった化け物

源頼光はこの部下たちと力を合わせて退治しております。

 

 

 

───で

 

今昔物語集」第24巻・第56話のお話に出て来るのは

この四天王の中から渡辺綱を除いた

 

卜部季武(平季武)

碓井貞光(平貞道)

坂田金時

御三方となっております。

 

 

いずれも堂々としたルックスは申し分なく

武芸に優れ、胆力も知力も思慮深さも兼ね備えた

非常に立派な勇士たち。

 

そんな三人が

ある年の四月

 

賀茂神社の祭礼の二日目に大行列が行われるんですが、それを

「われらも見に行こうじゃないか ♪」

って事で、盛り上がっていたんです。

 

 

「でもなあ、馬で連れ立って行くってのも、なんだか無骨すぎて野暮ったいし、顔を隠して歩いて行くってのもダサいし……。さて、どうしたらよかろう?」

 

「俺が知り合いの坊さんから牛車借りて来るよ。それで行ったら良いべ!」

 

「いやいやいや。俺ら風情が牛車なんか乗って、途中でお偉い殿上人なんかに出くわしてみ?武士風情が無礼千万!とかなんとかイチャモン付けられて引きずり降ろされかねないぞ。あげく、蹴り殺されでもしたらとんだ犬死にだぜ」

 

そうだ!牛車の内側に絹の布を垂らして、いかにも女車です~♡って感じにして見物したらいいんじゃないか?」

 

「おお、そいつは名案だ!」

 

ということで

 

早速知り合いの僧侶から牛車を借りて来て

簾の内側に目隠しの布を垂らし

ヨレヨレの水干&袴姿で乗り込んだ三人でありました。

 

自分達の袖などは外に出さないように、極力気を付けたので

見た目だけはなんだかちょっと

奥ゆかしい女車みたいに見えたのでありました。

 

 

さあ、いよいよ

行列を見物するために

紫野(京都市北区)へGO!

 

ところが

 

なにせ三人とも牛車に乗るのは初めてだったので

この後、大変な騒ぎとなってしまいました。

 

実は

牛車に乗る時には

左右の横板に付けられた窪みの部分を握って、体を安定させなければならないのですが

 

そんな事は全く知らない面々ですので

牛車の中でゴロンゴロンゴロンゴロン転げまわってしまいました。

 

 

横板に頭をしこたまぶつけたり

お互いにゴッツンゴッツンぶつかり合って仰向けにひっくり返ったり

うつむいて目をグルグル回したり……

 

そんな風に

車の中でさんざん揺さぶられているうちに

三人はもう完全に車酔い。

 

出入口の踏み板にゲーゲー吐くわ

烏帽子も落とすわという

惨憺たる有様。

 

 

しかも車を引いている

体力抜群のツワモノだったもんですから

ぐわらんぐわらん

車は速度を増して進んでいきます。

 



 


「そったら速ぐ行ぐんじゃねぇ~!」

 

東国なまり丸出しで叫ぶ、その大騒ぎを聞いて

後からついてきている他の車の人々や、そのお供たちは

 

「あの女車に乗ってるのは、どんな女房なんだろう?まるで東国の雁が鳴き合っているように騒がしいなあ。……いやしかし変な車だね。東国の娘たちなのかな?……声は男みたいに野太いけど」

 

怪しむことしきりです。

 

 

そうこうしているうち

やっとのことで紫野へ到着

 

ところが

着いたのがいささか早すぎて

行列が来るまでには、まだまだだいぶ時間がありました。

 

車酔いですっかり参ってしまっていた三人は

尻を持ち上げる変な姿勢でうつぶせに臥せったまま

いつのまにか眠り込んでしまいました……。

 

 

やがて

きらきらと美しく飾りたてた祭りの行列が賑々しくやってきます。

 

ところが

三人の武士たちはぐっすりと眠り込んでしまっていたために、それには全然気が付かないまま

行列は通り過ぎて行ってしまいました……。

 

 

見物を終えた周囲の車が帰り支度を始める物音で、三人はようやく目を覚ましました。

 

けれども

相変わらず具合は悪いままだし

行列は見過ごしてしまったし

腹が立つやら悔しいやらで

気分は最悪。

 

「これでまた帰り道で猛スピード出された日にゃ、とても生きて帰れる気がしねえ。

千人の敵のまっただ中に馬で飛び込む、なんてのはへっちゃらだけど、貧乏くせえ牛飼い童一人にこんな酷ぇ目に遭わされるなんて、堪ったもんじゃねえ。

このまま他の連中がすっかりいなくなるまで待っていて、人がいなくなったら、牛車を降りて歩いて帰るべ」

 

こうして彼らは

周囲に人気の無くなったあと、車だけを先に帰し

烏帽子を鼻先までズリ下げた上で、扇で顔を隠し

スゴスゴと頼光公の屋敷まで歩いて帰ったのでありました。

 

後日

季武はこんな風に話していたそうです。

 

「どんなに勇敢な武者だって牛車には敵わんよ。

もうあの一件ですっかり懲りたから、俺はもう牛車の近くには一歩たりとも近づかないようにしてるんだ」

 

いやはや……。

 

勇気や思慮分別を兼ね備えた立派なお侍さん方でも

一度も乗ったことが無い牛車に乗ったら

こんなに悲惨な事になるんですね。

 

 

───となむ

語り伝へたるとや。

 

平安時代末期に成立したと考えられる「今昔物語集」ですが、編者はわかっておりません。仏教界にいた人なのではないかとか、宇治大納言源隆国とか、その子の鳥羽僧正だとか、その編者には色々な説がささやかれています。

 

 

 

 

 

 

関連記事のご案内

 

 

遣唐使の任務を「嫌だ」と拒否した小野篁と、遂行して悲惨な目に遭った藤原常嗣のお話。

todawara.hatenablog.com

 

堤中納言物語」~実は堤中納言とは全然関係ありませんでした。

todawara.hatenablog.com

 

源頼光と並ぶ英雄・藤原保昌の奥さん、和泉式部なんですよ。

todawara.hatenablog.com

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。

 

 

ハイネのロマンチックで素敵な詩のご紹介

今回は

愛と革命の抒情詩人

ハインリヒ・ハイネ(1797-1856)の詩の中から

私が特に「素敵だな」と思うものをご紹介いたします。

 

 

ハイネと言いますと

 

「♪ 春を愛する人は ~」で知られる

『四季の歌』(作詞・作曲 荒木とよひさ)

という歌の中で

愛を語るハイネのような僕の恋人」

と歌われている事から

 

なんとなく

ロマンチックな感じの詩人なんだろうな……

というイメージを抱かれている方が多いのではないか、と思いますが

 

まさしくそのとおり

とっても甘美幻想的うっとりしてしまうような作風ですので

 

メロメロにロマンチックな気分に浸りきりたい時などには

彼の詩は大変お薦めかと思います。(^_^)

 

ということで、まずは

「月空にさし登り」

「炉辺の詩」

の二篇からご紹介いたしましょう。

 

こちらの翻訳者は

詩人で文学者の片山敏彦(1898-1961)です。

 

 

月空にさし登り

 

 

月空にさし登り

波の面(も)にあまねく照れり。

われ君に寄り添いて

君とわれ心波立つ。

なつかしき腕(かいな)にもたれ

わが憩(いこ)う浜に人居ず。

「吹く風に何の聞ゆる?何ゆえに

君が白き手のかくもふるえる?」

 

「吹く風の音(おと)にはあらじ。

人魚らが波に歌えり。

わだつみに呑(の)まれて死にし

わが姉ら人魚と成りて歌えるなり」

 

 

最後のほう

「そう来るか~!」

って感じですよね……。(◎_◎;)

 

ロマンチックでありながら、もの哀しく、なんか怖い……。

いろいろと物語を空想させられるような詩です。

 

 

炉辺の詩

 

 

外には夜目に白々と雪の羽毛が飛んでいる。

はげしい風が吹いている。

だが室内は空気が乾いて

暖かくしずかな、したしい気持ち。

 

肘掛椅子に身を投げて、わたしは想いに耽っている。

ぱちぱち燃える古い炉ばた。

煮える湯のつぶやきを聴いていると

忘れていた昔の歌を、それが歌っているかのよう。

 

そして一匹の子猫が脇にすわって

足先を火で温めている。

炎が揺れるさまを見つめていると

うっとりとした気持ちになる。

 

ほのぼのと明るみながら見えてくる

遠い昔のさまざまなもののすがた、

とりどりな仮面仮装の

色褪せたきらびやかさを見せながら。

 

聡明な顔(かん)ばせの美しい婦人たちが

神秘に優しく、私に目くばせをする。

そしてそのあいだに立ち交って

道化者(アルルカン)らが陽気にはねたり笑ったり。

 

はるばるとわたしに挨拶をするギリシャの神々の大理石像。

それらの脇には夢のように

物語(メールヒェン)の花々が咲いていて、

その花びらが月の光に照らされて揺れる。

 

また、揺れて漂うて来るのは

数々の古い魔法の城、

そのうしろから馬に騎(の)って追(つ)いて来る

立派な騎士と従者たち。

 

誰も彼も急いで通過する、通過する、

まぼろしの行列───

おや! 湯が煮えこぼれたぞ、

こぼれた湯がはねて、悲鳴をあげる子猫。

 

 

 

炎を見つめながら空想している幻想世界のきらびやかさ。

そこから一転、現実世界に引き戻されるところが、可笑しくも可愛らしい詩です。

ニャンコに怪我が無かったらいいですね。(^^;)

 

 

1797年(日本は江戸時代の寛政9年)

ドイツのデュッセルドルフ

ユダヤ商人の子ハリー・ハイネ(Harry Heine)として生まれた彼は

 

ユダヤ人であることや

「ハリー」という名が、何だかイギリス人みたいだということで

少年時代にはからかわれたりした事もあったそうです。

 

そんなこともあってか

27歳の時に名前をハリーからハインリヒ(Heinrich)に改め

同時に信仰の方も

ユダヤ教からプロテスタントに改宗したりしています。

 

 

ロマンチックな作風で人気の高いハイネですが

実は、彼は社会問題にも大変関心が深く

「自由と解放の詩人」

と呼ばれるような側面も持っているんですよ。

 

そのため

ハイネの本は1835年

ドイツ語圏において全てが発禁処分にされてしまったことがあります。

 

そんな息苦しいドイツから

彼は1831年出国し

フランス・パリに移住して一生を終えています。

 

 

お次にご紹介しますのは

1844年

シレジア(現在はポーランド領)の地で起こった

貧しい織物工たちの労働蜂起を歌った詩です。

 

これは、ドイツで最初の大規模労働蜂起だったのですが

軍の発砲により鎮圧されてしまい

そのことに対する激烈な憤りを歌ったものです。

 

こちらの詩はドイツ文学者で俳人檜山哲彦さんの翻訳となります。

 

 

 

シレジアの職工

 

 

暗い眼に涙なく

みなは機(はた)に就いて歯をむき出す

老いぼれドイツよ、俺たちが織るのはおまえの死装束

三重(みえ)の呪いを織り込んでやる───

織る、俺たちは織る!

 

ひとつの呪いは神に

飢えと寒さに責められて祈りをささげた神に

望みをかけて俺たちは待ちに待ったが

さんざからかったあげくあいつはあざむいた───

織る、俺たちは織る!

 

ひとつの呪いは王に、邦々(くにぐに)をたばねる王に

この苦しみを知りながら心やわらげもせず

さいごの小銭までむしりとり

俺たちを犬のように射(う)たせる王に───

織る、俺たちは織る!

 

ひとつの呪いは腹黒い祖国に

うすぎたない恥ばかりはびこり

時いたらぬうちに花は手折(たお)られ

腐敗が蛆(うじ)をふとらせる国───

織る、俺たちは織る!

 

杼(ひ)は飛び、機(はた)はとどろき

俺たちは日に夜をついで織り続ける───

老いぼれドイツよ、織るのはおまえの死装束

三重の呪いを織り込んでやる

織る、俺たちは織る!

 

 

「三重(みえ)の呪いを織り込んでやる」

と怒りの矛先を向けられている

「神」「国王」「祖国」

 

これは、かつて

プロイセン(ドイツ)がナポレオンからの解放戦争の時に掲げた愛国スローガン

「神と共に国王と祖国のために」

にちなんでいます。

 

そのような美辞麗句で煽り立て、祖国のために戦わせてきた国民に対し

今お前たちは平気で銃口を向けるのか!

───という悲憤ですね。

 

 

ハイネの本は受難が多くて

その死からずっと後年になるナチス政権下には

ユダヤ人の作品だ」

ということで焚書され

禁書の対象とされてしまいました……。(T_T)

 

しかし

 

すでにドイツの人々にとって馴染み深い唱歌となっていた

ローレライだけは「作詞者不詳」ということで

ドイツ国内で出版される本にも載せられ続けていたんだそうです。

 

 

ローレライ

ドイツのライン川に伝わる伝説をうたった作品です。

 

ライン川の中ほどに

ローレライという岩山があるのですが

 

この岩の近くを船が通りかかった時

岩の上からうっとりとするような乙女(=精霊)の美しい歌声が聴こえてくるそうです。

 

そこで

歌声に心奪われてしまった水夫が

舵取りもおろそかにボンヤリしている間

 

船が事故を起こして沈没してしまう……


───そんな言い伝えがあるんだそうですよ。

 

 

こちらがその

唱歌ローレライ

 

作曲フリードリヒ・ジルヒャー

日本語の訳詞近藤朔風

 

日本では明治時代から広く親しまれ、合唱などでよく歌われています。

 


www.youtube.com

 

そしてこちらが

片山敏彦訳によるローレライとなります。

 

ローレライ

 

 

わが心かく愁(うれ)わしき

その故(ゆえ)をみずから知らず。

いと古き世の物語、

わが思うこと繁(しげ)し。

 

夕さりて風はすずしく

靜かなりライン河

沈む日の夕映に

山の端(は)は照りはえつ。

 

巌(いわお)の上(え)にすわれるは

うるわしき乙女かな。

こんじきに宝石(いし)はきらめき、

こんじきの髪梳(す)く乙女。

 

 

金の櫛、髪を梳きつつ、

歌うたうその乙女。

聞ゆるは、くすしく強き

力もつその歌のふし。

 

小舟やる舟びとは

歌聞きて悲しさ迫り、

思わずも仰ぎ眺めつ。

乗り上ぐる岩も気づかず。

 

舟びとよ、心ゆるすな、

河波に呑まれ果てなん。

されどああ歌の強さよ、

甲斐あらず舟は沈みぬ。

 

 

 

魔性の乙女が

清楚系の美少女っぽいところ

歌の曲調が

やけに明るく爽やかなところ

 

そんなところが、かえって

ラストシーンの残酷さを引き立たせているような気がします……。(+_+;))

 

 

 



 

関連記事のご案内

 

 

シャミッソー「影をなくした男」について

todawara.hatenablog.com

 

バルザック谷間の百合」について

todawara.hatenablog.com

 

ランボーの詩のご紹介

todawara.hatenablog.com

 

 

 

こちらは私の本になります。よろしくお願いいたします。