TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

本の紹介

変幻自在のイリュージョニスト果心居士は戦国時代に実在した人物だった!?

私の「心のお師匠様」吉川英治の作品に 「神州天馬俠」 という少年向けの冒険時代小説があります。 神州天馬侠(一) (吉川英治歴史時代文庫) 作者: 吉川英治 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1989/12/05 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログ …

彼岸花の咲く季節になると、北原白秋の「曼珠沙華」というちょっと怖い詩を思い出します。

彼岸花の美しい季節ですね。 秋のお彼岸の時期(9月半ば過ぎ頃)に咲く事から名づけられた「彼岸花」という名称には 毒草であるために 「これを食べたら彼岸(あの世)に行ってしまう」 ということに由来している ──── と言う説があります。 また この花が水田の…

阿仏尼「十六夜日記」~タイトルの美しさとは裏腹な和歌名家のドロドロした相続争い

今回は 鎌倉時代後期の弘安3年(1280年)ごろに成立したと考えられている 阿仏尼の 「十六夜(いざよい)日記」 をご紹介いたします。 この日記が書かれた背景を一口で申しますと 歌道の大家亡き後に勃発した 嫡男VS側室(年少の息子の代理) の 相続争いという…

モーパッサン「脂肪の塊」の感想~たしかにこのタイトルではヒロインが可哀想。いっその事「ムッチリ姐さん」とかにしちゃったらどうでしょう。

今回は19世紀フランス文学を代表する作家の一人 ギィ・ド・モーパッサン(1850-1893)の 「脂肪の塊」 の感想を書かせていただきます。 脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選 (古典新訳文庫) 作者: モーパッサン,太田浩一 出版社/メーカー: 光文社 発売日…

「滝の白糸」で知られる泉鏡花「義血侠血」について~これは師匠・尾崎紅葉とのコラボ作品と言ってもいいかも~

今回は舞台の方でも有名な「滝の白糸」の原作 泉鏡花の「義血侠血」のご紹介をいたします。 明治27年に読売新聞紙上に掲載されたこの作品は 鏡花が21歳の時の作。 彼はこの前年 師匠である尾崎紅葉の斡旋によって 「冠弥左衛門」を京都日出新聞に連載し、作…

「遠野物語拾遺」から~芸達者な猫が逆上して取り返しがつかないほどブチ切れてしまう話の紹介

「遠野物語」に収めきれなかった話などをまとめて 昭和10年(1935) その続編のような形で出版されたのが 「遠野物語拾遺」です。 伝承の収集に多大な貢献をしてくれていた 協力者の佐々木喜善は その2年前 1933年に46歳の若さで病没してしまっていました。 「…

「遠野物語」の河童のお話~人間の娘と恋愛したり、悪さして村人に捕まったり。

「遠野物語」には幽霊だけではなく 天狗や座敷童、雪女なども語られているのですが 中でも有名なのが 河童の話です。 そこで今回は 「遠野物語」に語られている河童のお話 をご紹介しようと思います。 一般的に思われている河童の顔色は緑色ですが 遠野の河…

「遠野物語」とか「耳嚢」とか読むと幽霊って本当にいるんだろうなあって思います……。

今回は柳田国男(1875-1962)の名著 「遠野物語」と 江戸時代に書かれた巷話集 「耳嚢」とに ちょっと似通った幽霊譚 がありましたので それをご紹介いたします。 まずは「遠野物語」の概略と感想を ─── 民俗学者柳田国男が35歳(明治43年)の時に著したこの説話…

「機長の心理学」(デヴィッド・ビーティ著)の紹介~ほんのわずかな心の動きが重大事故をひき起こす!!

今回は 航空機事故の原因となる 「ヒューマンファクター(人的要因)」について 英国海外航空(ブリティシュ・エアウェイズの前身)の元機長であり心理学者でもある デヴィッド・ビーティ氏(1919-1999)が書き著した 「機長の心理学」 という本の ご紹介をいたし…

戦前の「缶詰ラベルコレクション」を見たことをきっかけにして、つい先ごろまでスズメが普通に食べられていた事を知りました。

今回ご紹介いたします本 「缶詰ラベルコレクション」 は日本缶詰協会が所蔵する2500点あまりもの缶詰ラベルの中から 1877(明治10)年~昭和初期までに国内で製造された 550点分のラベルを選り抜いて掲載したものです。 この頃の日本にとって 缶詰は主要な輸出…

吉川英治「松のや露八」の紹介と感想~幕末期、幕臣から幇間になった武士がいた!

今回は 私が最も尊敬している小説家吉川英治の作品 「松のや露八」のご紹介 をいたします。 昭和9年にサンデー毎日誌上で連載されたこちらの作品 主人公は幕末から明治にかけて生きた 実在の人物となっております。 その人物とは 土肥(どひ)庄二郎(1834-1903…

色男をめぐって繰り広げられる美女たちの愛憎劇~為永春水「梅暦」ワールド

今回は 江戸の天保年間に出版されて大評判となり 当時の女性達を熱狂させたという 為永春水作の人情本 「梅暦」(うめごよみ)シリーズ のご紹介をいたします。 -------------- 「春色梅児誉美」 (しゅんしょくうめごよみ) あらすじ 遊女屋「唐…

「耳嚢」から~江戸時代、箱根の山上に未確認飛行物体が現れたという話

今回もまたまた お奉行様根岸鎮衛(やすもり)が集めた江戸時代の巷話集 「耳嚢」から不思議なお話 をご紹介いたします。 今回はなんと 根岸鎮衛本人が怪しい未確認飛行物体と遭遇した!? とも取れる内容となっております。 参考文献は角川ソフィア文庫から出…

「耳嚢」から~ネズミの健気な罪ほろぼしのお話。

今回も 江戸時代のお奉行様根岸鎮衛(やすもり)が集めた巷話集 「耳嚢」(みみぶくろ)からのお話をご紹介いたします。 今回ご紹介いたしますのは ネズミと人間の間にうまれた美しい絆の物語。 参考文献は角川ソフィア文庫刊の 「耳袋の怪」です。 耳袋の怪 (角…

大学生たちが手作りヨットで日本一周!!「ヤワイヤ号の冒険」のご紹介。

昭和36年6月30日 小さな一艘のヨットが福井県小浜の港を出港し 東へと漕ぎだしていきました ─── そこに乗り込んでいるのは 高校時代の友人達で作った 「冒険クラブ」のメンバーである大学生たち。 それまで主に登山を中心として活動していた彼らは前年の秋 …

谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」の感想~結局の所にゃんこの可愛さにはかなわない!

今回は 谷崎潤一郎が昭和11年に発表した長編小説 「猫と庄造と二人のおんな」 のご紹介をいたします。 ------ あらすじ 人柄は穏やかだが、ボンヤリとしていてほとんど生活能力が無い 荒物屋の一人息子庄造。 彼は前妻の品子を離縁して 従妹の金持ち娘…

「耳嚢」から~「粗暴すぎる侍と狐の神様のお話」のご紹介

今回もまた お奉行様根岸鎮護(やすもり)の集めた巷話集 「耳嚢」から怪異譚をご紹介いたします。 ───とは申しましても、今度のお話は怪談話ではなく 神として崇められる霊獣であっても粗暴過ぎる者にはかなわないという 稲荷狐にまつわるお話です。 ーーーー…

夏なので怪奇話をご紹介~お奉行様がしたためた巷話集「耳嚢」より「菊虫の話」

江戸時代の中頃 根岸鎮衛(ねぎしやすもり) という旗本がいました。 佐渡奉行、勘定奉行、南町奉行を歴任した彼は 天保から文化まで 33年もの月日をかけて 知人や古老などから巷に伝わる話を聴き取り それを 「耳嚢」(みみぶくろ)という書物にまとめあげまし…

マゾッホ「毛皮を着たヴィーナス」の感想~乗せられ煽られ人格崩壊していくのがコワい!

今回は 「マゾヒズム」 という言葉の語源ともなっている レオナルド・フォン・ザッヘル=マゾッホ(1836-1895)の小説 「毛皮を着たヴィーナス」のご紹介をいたします。 あらすじ----- 青年貴族のゼヴェーリンは保養先の下宿の庭で 大理石のヴィーナス像…

新感覚派の感覚には、正直ついていけない部分がある~横光利一「上海」のご紹介。

今回は 大正時代末期から昭和20年代初頭にかけて活躍し 川端康成と共に新感覚派と呼ばれた作家 横光利一の「上海」 のご紹介をいたします。 内容はざっくり言うとこんな感じ。 -------- 時は1925年(大正14年) 舞台は日本や欧米列強の植民地となって…

アラン「幸福論」を読んで思った事~幸福のカギって外的要因よりも、いかに「楽観主義」でいられるかという所にあるのかも。

今回はフランスの哲学者であり思想家 そして教育者であった アラン(1868~1951)の著書 「幸福論」のご紹介をいたします。 どうしようもなく悲しい 気分が晴れない イライラする…… そんな精神状態の時 人は往々にして 他人の言動のせいだ とか 運命のせいだ …

トルストイ「人生論」を読んで思った事~理念は立派だけど一般人にはハードル高過ぎる。

今回はロシアの文豪 レフ・トルストイ(1828-1910)の著書 「人生論」(1889年刊)のご紹介をいたします。 ロシアの文豪トルストイ!と聞くと 条件反射的に 「取っ付きにくそう!!」 なんて思われてしまう向きもあるかもしれませんが 親しみやすく、面白い作品…

スコット・フィッツジェラルド「華麗なるギャツビー」~打算だけの人間関係って虚しすぎる…。

今回は、アメリカの作家 スコット・フィッツジェラルド(1896-1940)の代表作 「華麗なるギャツビー」(野崎孝訳) のご紹介をいたします。 -------- あらすじ ニューヨークの海岸沿いに大豪邸を構え 週末ごとにド派手なパーティーを開いて 大勢の有名人…

簡潔で絶妙な文章で恐怖を表現!~「童話ってホントは残酷」という本のご紹介

今回は、文学博士三浦佑之先生監修 「童話ってホントは残酷」という本のご紹介をいたします。 グリム童話などを始めとして 「童話って本当はこんなに怖い話だったんだよ~」 というような事を紹介した本や漫画は 現在、いろんな出版社からわんさか出版されて…

猫好きミュージシャン・山田稔明さん

今日は GOMES THE HITMANの ボーカリストにして ソロミュージシャンとしても活躍しておられる 山田稔明さんについて 語らせていただきます。 杉真理さんの大ファンである私は GOMES THE HITMAN というバンド名だけは 杉さん関連として知っていたのですが い…

島崎藤村の詩にうっとり

せわしない日々を送りながら 心が 「ふっ」 と、安らぎを求めるとき。 そんな時には 島崎藤村の詩をおすすめします。 まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり 「初恋」 「破戒」「夜明け前」などを書いた小説家…

アベ・プレヴォー「マノン・レスコー」~少年騎士グリュウの愛と転落の物語

今回は18世紀フランス文学の名作 アベ・プレヴォー(1697-1763)の 「マノン・レスコー」をご紹介いたします。 僧院から何度も脱走したり 軍に入隊したり 外国に逃亡したりと いささか血の気の多すぎるカソリックのお坊様 アントワーヌ・フランソワ・プレヴォ…

「世界初のジャーナリスト」と言われるピエトロ・アレティーノの世にも珍しい死に方。

「世界で最初のジャーナリスト」 って みなさん、一体どんな人だと思いますか? 19世紀のスイスの歴史家 ヤーコプ・ブルクハルト(1818-1897) によると 15世紀末のイタリアで文筆家として活躍した ピエトロ・アレティーノ(1492-1556) という人が ジャーナリズ…

柳生宗矩「兵法家伝書」からの教え〜心は常に平常心を保つべし。決して感情に影響されるべからず。

生きていると 色々理不尽なことや不愉快なことに行き当たったりして 心がザワザワ波立つことが避けられませんよね。 もう、どうしようもない位に腹が立ったときなど その怒りの勢いで ついつい人にキツい事を言ってしまったり とんでもなく乱暴な事をやって…

ジーン・ウェブスター「あしながおじさん」~可愛らしくロマンティックな物語

今回は、アメリカの女性作家 ジーン・ウェブスター(1876-1916)の名作小説 「あしながおじさん」(1912年刊)をご紹介いたします。 生後間もなく両親に捨てられ 孤児院で育った17歳の女の子ジュディは 孤児院の評議員をしている一人の紳士に見いだされ 孤児院を…