日本文学(近現代)
読売新聞の夕刊紙上にて連載されていた 柴崎友香さんの 「遠くまで歩く」が先日完結しました。 毎日楽しく読んでいましたので、その感想を書こうと思います。 お話の内容を簡単にご紹介しますと 以下のようになります。 ------------------ 時は2020年から20…
読売新聞の朝刊で連載されていた 木内昇さんの時代小説 「惣十郎浮世始末」が完結しましたので 今回はそのご紹介と感想を書こうと思います。 毎日少しずつ進む小説欄を読むひとときが 「ずっとこのまま続けばよいのになぁ……」と 愛おしく思えてくるような と…
「忍法」という言葉を初めて使ったのは吉川英治である ────という説は 今ではWikipediaをはじめ多くの所で語られ 広く知られている事ではありますが 今回は吉川英治大ファンの私がその辺のところを もうちょっと詳しくお伝えしたいと思います。 講談社刊の「…
読売新聞朝刊紙上で連載されていた 川上未映子さんの「黄色い家」が先日、完結しました。 毎日、ハラハラドキドキ、固唾を飲みながら楽しみに読んでおりましたので 終わってしまった今、なんだか虚脱感のようなものがあります。 物語は 主人公である花の語り…
吉川英治の 「剣の四君子」(昭和17年刊) という短編小説集の中で 私の心に非常に強く 印象に残っているエピソードがあります。 それは 柳生家と並んで徳川将軍家の剣術指南役となった 小野派一刀流の開祖 小野次郎右衛門忠明が まだ若き修行者で 御子神典膳(…
ギリシャ生まれの作家 小泉八雲こと ラフカディオ・ハーン(1850-1904) 彼が1894(明治27)年に著した 「知られぬ日本の面影」(Glimpses of Unfamiliar Japan) という本の中には その当時、日本各地に伝えられていた さまざまな神話や伝説が収録されているので…
エッセイって良いですよねぇ。 自分以外の他人が 何について どんな風に感じているのか? とか どんな風に思考を巡らせているのか? って なかなか興味深いものがあるのですが そういう所を サラッと気楽に窺い知ることが出来るのがエッセイの良い所! 私は…
今回は 吉川英治が昭和16年に朝日新聞に連載した中編小説 「梅里先生行状記」(ばいりせんせいぎょうじょうき) のご紹介をいたします。 タイトルにある梅里先生とは 徳川家康の孫にして常陸水戸藩の2代目藩主でもある 徳川(水戸)光圀(1628-1701)のことです。 …
毎日楽しみに読んでいた朝刊連載小説 角田光代さんの「タラント」が、今日、遂に完結しました。 本当に素晴らしい物語で、読んでいる時には何度も心が震え、終章を読み終えた時には涙が滲んでいました。 この先書籍化されて、より多くの人の元に届けられるべ…
今回は漂泊の俳人 種田山頭火(1882-1940)の、俳句とその人生のご紹介をいたします。 大酒と自堕落に身を持ち崩しながらも 俳句の道に全霊を注ぎ 九州から東北までの日本各地を行乞して歩いた、明治生まれの俳人 種田山頭火 漂泊の俳人であった事から 世間的…
今回は 吉川英治の初期の長編伝奇小説 「江戸三国志」 のご紹介をいたします。 この作品は英治35歳の 1927(昭和2)年10月から 1929(昭和4)年春までの間 報知新聞(当時はスポーツ紙ではなく一般紙だった)に連載され 連載中から映画が作られるほどの 大人気作と…
我が家は読売新聞を購読しているので 私は毎日、朝夕刊に連載されている小説を読むのが日課になっているのですが 昨日、夕刊で連載されていた 中島京子さんの 「やさしい猫」 が最終回となりました。 いきなり感想言っちゃいますが この小説 すっっっっごく …
本屋さんだけではなく、いまやネット上の世界でも たくさんの小説に出会える時代となりましたが 小説の良し悪しの判断って、 正直ちょっと良くわからない所ありますよね。 さすがに てにをはが滅茶苦茶だとか、誤字や言葉の間違いが多すぎる、なんてレベルだ…
今回は 装丁家、陶器の鑑定家として知られた 青山二郎(1901-1979)の随筆集 講談社文芸文庫刊の 「鎌倉文士骨董奇譚」 という本のご紹介をいたします。 鎌倉文士骨董奇譚 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:青山 二郎 発売日: 1992/12/03 メディア: …
師走も半ばになり、黄色や赤に色づいた木の葉が、風に吹かれて散っています。 自転車に乗っていたら、その光景があまりにも綺麗だったので 「あかしやの 金と赤とが ちるぞえな……」 という 北原白秋の詩が心に浮かんできました。 片恋 あかしやの金と赤とが…
上下黒ぞっきの着流しに 顔を覆ったお十夜頭巾 チャラリチャラリと雪駄で歩く 剣の達人にして女好きの辻斬り浪人 お十夜孫兵衛 ──── 吉川英治の出世作 「鳴門秘帖」 に出て来るダークヒーロー お十夜孫兵衛ですが 彼の服装の描写でよく出てくる 「黒ぞっき」…
先日、岩波文庫から出ている幸田露伴の 「幻談・観画談」 を読みました。 幸田露伴(1867-1947)と言えば 「風流仏」(明治22年) 「五重塔」(明治24年) などを書いていた青年期には 尾崎紅葉と並ぶ人気作家で 「紅露時代」と呼ばれたほどの一時代を築いたお人。…
今回は 思想家岡倉天心が1906年に英文で著し 「The Book of Tea」 として出版された名著 「茶の本」(村岡博訳) のご紹介をいたします。 「茶の本」というタイトルではありますが こちらの本は、茶道の細かい作法を記したものではなく 茶道というものを通して…
今回は 私が一番好きな小説家であり 心のお師匠様でもあります 吉川英治の大正14年の作品 「剣難女難」 のご紹介をさせていただきます。 小学生の頃から文学好きで 自作の文章や俳句などを熱心に投稿していた吉川英治が 初めて小説を書いて送り、当選を果た…
人はだれしも 幸せになりたいと願っているのでしょうが みなさんは「幸せ」って どういう状態だと思いますか? 私は今のところ 幸せって 心が穏やかで、満ち足りている状態 なんじゃないかな……と 漠然とですが思っているところです。 でも、この 「心が満ち…
今回は 終戦直後に「無頼派」として一躍脚光を浴び 流行作家として活躍中に、34歳の若さで亡くなってしまった 織田作之助(1913-1947)が 戦前に発表した出世作 「夫婦善哉」(めおとぜんざい)(1940年発表) のご紹介をいたします。 金遣いの荒いボンボン育ちの…
大正から昭和の始めくらいに撮られた写真を見ると 着物の上にエプロン風の前掛け をしている幼児が映っていることがありますよね。 大変に愛らしいこのスタイル 大正から昭和の初めごろまで広く愛用されていたもので 「西洋前掛け」というそうです。 小学校…
先日、 私は直木三十五が書いた 「大衆文芸作法」 という論文を読みました。 直木三十五と言えば エンターテインメント小説に贈られるビッグタイトル 直木賞の由来ともなっている 戦前の花形大衆小説家。 いわば エンタメ小説の レジェンド 的存在です。 こ…
冒険家の植村直己さんが 犬ぞりによる北極点到達を世界で初めて成し遂げ さらに、犬ぞりによる単独でのグリーンランド縦断を成し遂げた1978年 私はまだ子供だったため 植村さんに対するイメージは 「犬ぞりの人」 として心に焼き付いていました。 実際の植村…
今回は 私が最も尊敬している小説家 吉川英治の作った詩歌 をご紹介いたします。 吉川英治と言えば 「宮本武蔵」や 「三国志」 「新・平家物語」などの 大河小説を書いた作家として有名ですが 彼の文芸創作への入口となったのは 幼い頃から親しんでいた俳句…
今回は 明治32(1899)年にアメリカで出版され 世界中の人々に日本人の精神性を理解させる一助となった 新渡戸稲造(1862-1933)の名著 「武士道」 のご紹介をいたします。 新渡戸(にとべ)稲造 と言いますと 1984(昭和59)年から2007(平成19)年までの間 5千円札に…
明治時代の大ベストセラー小説として、幾度となく舞台化、映画化されてきた、切ない悲恋の物語 徳冨蘆花(1868-1927)の 「不如帰」(ほととぎす) 「もう、もう、二度と女なんかに生れはしない……」 先日それを読み、案の定 「浪子さん、可哀想だぁ……」(´;ω;`)…
今回は、戦前のスター作家 直木三十五の生涯を 甥御さんにあたる元㈱テレビ東京社長 植村鞆音さんがお書きになった本 「直木三十五伝」の ご紹介をいたします。 直木三十五伝 (文春文庫) 作者:植村 鞆音 発売日: 2008/06/10 メディア: 文庫 その名の冠せられ…
以前、島崎藤村の詩のご紹介記事を書いた時に 「この詩が、ものすごくドラマチックで良いんですよぉぉ~!」 と言っておススメしたものの ブログに引用して載せるにはちょっと長すぎるかなあ? と思ったため タイトルだけのご紹介になってしまっていた 「鶏…
今回は 与謝野晶子(1878-1942)が自らの歌を選び 昭和13年(60歳の時)に刊行した 「与謝野晶子歌集」 のご紹介をいたします。 本名は「志よう」。大阪の和菓子屋「鳳」家の三女として生まれました。 与謝野晶子と言えば 「みだれ髪」 での情熱的、官能的な歌や…