TODAWARABLOG

戸田蕨です。小説書いてます。よろしくお願いします。

文学のこと

徳冨蘆花「不如帰」の薄幸のヒロイン、浪子さんの面影を求め、逗子を歩いてきました。

明治時代の大ベストセラー小説として、幾度となく舞台化、映画化されてきた、切ない悲恋の物語 徳冨蘆花(1868-1927)の 「不如帰」(ほととぎす) 「もう、もう、二度と女なんかに生れはしない……」 先日それを読み、案の定 「浪子さん、可哀想だぁ……」(´;ω;`)…

「直木三十五伝」~甥御さんが伝える文豪・直木三十五の素顔とその生涯

今回は、戦前のスター作家 直木三十五の生涯を 甥御さんにあたる元㈱テレビ東京社長 植村鞆音さんがお書きになった本 「直木三十五伝」の ご紹介をいたします。 直木三十五伝 (文春文庫) 作者:植村 鞆音 発売日: 2008/06/10 メディア: 文庫 その名の冠せられ…

島崎藤村の「若菜集」から、「鶏」という詩をご紹介いたします。

以前、島崎藤村の詩のご紹介記事を書いた時に 「この詩が、ものすごくドラマチックで良いんですよぉぉ~!」 と言っておススメしたものの ブログに引用して載せるにはちょっと長すぎるかなあ? と思ったため タイトルだけのご紹介になってしまっていた 「鶏…

唐代の詩人、李益の「江南曲」にも出て来る中国伝統のサーファー「弄潮児」について

先日、私のスマートフォンに THE SURF NEWSというサイト発の 「中国の意外なサーフィン歴史が明らかに」 という情報が入って来ました。 それは イタリア人で中国のサーフィン代表チームのコーチも務めたことがある ニック・ザネラ氏が、中国の波乗りの歴史に…

井原西鶴「諸艶大鑑/好色二代男」から~長山太夫が恋人の敵討ちを果たすお話「惜しや姿は隠れ里」のご紹介

今回は井原西鶴が 1684(貞享元)年、43歳の時に世に送り出した遊里説話集 「諸艶大鑑/好色二代男」 をご紹介いたします。 これに先立つこと2年前 1682(天和2)年に出版された西鶴の小説デビュー作 「好色一代男」は それまで俳諧師であった西鶴を41歳にして小…

ゴーリキー「どん底」の感想とご紹介~人の世を「どん底」にしてしまうものは、多分、人の心なんだと思います。

今回はロシア(ソビエト)の文豪 ゴーリキーの名作戯曲 「どん底」 のご紹介をいたします。 今どきは「ゴーリキー」などと言いますと プロレスラーみたいな姿をした 紫色のポケモンを思い浮かべる人の方が多いようですが こちらの「ゴーリキー」は文筆家で社会…

与謝野晶子自選「与謝野晶子歌集」のご紹介〜散りばめられた雛罌粟の花の記憶

今回は 与謝野晶子(1878-1942)が自らの歌を選び 昭和13年(60歳の時)に刊行した 「与謝野晶子歌集」 のご紹介をいたします。 本名は「志よう」。大阪の和菓子屋「鳳」家の三女として生まれました。 与謝野晶子と言えば 「みだれ髪」 での情熱的、官能的な歌や…

「サキ傑作集」の感想~予測不能のアッと驚く展開がクセになってしまいそう。

今回はイギリスの小説家 サキ(本名ヘクター・ヒュー・マンロー1870-1916)の短編小説を集めた 岩波文庫の 「サキ傑作集」河田智雄訳 のご紹介をいたします。 まず感想から述べさせていただきますと これ めちゃめちゃ面白いです! 短編の名手サキの「傑作集」…

小説ってなかなか読んでもらえないし全然稼げない。それでもやっぱり小説はサイコーに良いものだと思います。

漫画や実用書と比べると 売れやすさにおいて完全に引けをとってしまうのが 小説というジャンルです。 ほとんど売れないかもしれない…… 誰にも読んでもらえないかもしれない…… それなのに どうして小説を書くのか? と言えば 私の場合それは やはり 小説とい…

小説は売れなくて当たり前のものですから、たとえ出した本が売れなくても、焦らず腐らずぼちぼちやって行きましょう。

たった1冊だけど 小説本を出版したんだから 小説家! なんて 言っちゃっていいのかな……。 いや、でもやっぱり 多少なりとも (本当にごくごく僅かですが) それで収入を得ることが出来ているのだから 小説家って言っちゃっても 良いんじゃないの!? などと自…

モリエール作「ドン・ジュアン」ダイジェスト~世界一有名な色男の末路は、かなり悲惨なものでした。

今回は ルイ14世時代のフランスで 王様お気に入りの芝居座長として活躍していた モリエールの戯曲「ドン・ジュアン」 の、ご紹介をいたします。 女性をメロメロにさせる物語上の色男と言えば わが国では 光源氏や在原業平 そして現代ではちょっとマイナーに…

吉報!!吉川英治記念館が2020年9月に再オープンする見通しとなりました!!

(※こちらは2019年12月11日の記事です) 2019年3月20日 多くのファンに惜しまれながら閉館した 吉川英治記念館が このたび青梅市営となって 2020年9月7日(吉川英治の命日)に 再びオープンされる 見通しと なりました!! 東京都青梅市にあるこちらの記念館(旧…

堤中納言物語~ホントウは「堤中納言兼輔」とは全く関係のない10編の短編小説集

今回は 平安時代から南北朝時代までにつくられたお話10編を 1冊の本にまとめた短編物語集 「堤中納言物語」 をご紹介いたします。 「堤中納言物語」と言えば 毛虫好きの風変わりなお姫様の話 「虫愛ずる姫君」 が収載されている事で良く知られているのですが…

鶴屋南北「東海道四谷怪談」~怨霊パワーで悪人どもをやっつける!お岩&小平の最恐タッグ!!

今回は 1825年(文政8年)に 鶴屋南北(当時71歳)が 江戸中村座のために書き下ろした芝居台本 「東海道四谷怪談」 をご紹介いたします。 「四谷怪談」と言えば お岩さんが出て来ることで非常に有名な怪談話ですが 「お岩さんという女性が伊右衛門という夫に浮気…

直木三十五「南国太平記」~幕末薩摩藩のお家騒動を描いたダイナミックな群像劇

今回は 戦前の大衆小説の花形作家 直木三十五の代表作 「南国太平記」 のご紹介をいたします。 ------- 内容 時は幕末 舞台は南国薩摩藩。 藩は目下 老藩主島津斉興(なりおき)とその愛室お由羅の方が率いる 保守派 と 40歳になっても家督を譲ってもら…

吉川英治と直木三十五~大衆小説花形作家同士のライバル心と友情!!

今回は 直木三十五と吉川英治の交流 について書こうと思います。 吉川英治の名作 「宮本武蔵」 が生み出されるきっかけには 直木三十五が唱えていた 「武蔵非名人説」 というものがありました。 剣道の歴史について非常に熱心に研究していた直木が 「宮本武…

大衆小説のレジェンド・直木三十五の墓所と旧宅跡をたずねに行きました。

先週末、横浜市内にある 直木三十五の住居跡とお墓のある長昌寺 をたずねてきました。 直木三十五といえば 芥川賞と並ぶ小説界のビッグタイトル 直木賞の由来となっている 戦前の人気小説家であり 私が尊敬している吉川英治とも 同じ大衆小説家同士として 盟…

ウィリアム・サローヤン「ディア・ベイビー」の感想~人生って切ないですね。人間って愛おしいですね。

今回はアメリカの作家 ウィリアム・サローヤン(1908-1981) の短編作品をあつめて ちくま文庫から出されたこちらの本 『ディア・ベイビー』 のご紹介をいたします。 ディア・ベイビー (ちくま文庫) 作者: ウイリアムサローヤン,関汀子 出版社/メーカー: 筑摩…

恋多き才女がどうしても書き残しておきたかった、若き日の美しい恋の思い出「和泉式部日記」

今回は 平安時代中期の女流歌人・和泉式部による恋物語 「和泉式部日記」 のご紹介をいたします。 -------- 「和泉式部日記」 あらすじ 恋人だった為尊(ためたか)親王が26歳という若さで亡くなってしまった後 和泉式部は傷心と追憶の日々を送ってい…

トーマス・マン「ヴェニスに死す」の感想~美に殉じた芸術家の物語ですが、現代だったらまず間違いなく不審者として通報されてしまう事でしょう。

今回は ドイツ人のノーベル文学賞作家 トーマス・マン(1875-1955)による1912年発表の作品 「ヴェニスに死す」 の感想を書かせていただきます。 ※ネタバレあり。 1971年に映画化もされているこの物語 ──── ベニスに死す [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクショ…

彼岸花の咲く季節になると、北原白秋の「曼珠沙華」というちょっと怖い詩を思い出します。

彼岸花の美しい季節ですね。 秋のお彼岸の時期(9月半ば過ぎ頃)に咲く事から名づけられた「彼岸花」という名称には 毒草であるために 「これを食べたら彼岸(あの世)に行ってしまう」 ということに由来している ──── と言う説があります。 また この花が水田の…

阿仏尼「十六夜日記」~タイトルの美しさとは裏腹な和歌名家のドロドロした相続争い

今回は 鎌倉時代後期の弘安3年(1280年)ごろに成立したと考えられている 阿仏尼の 「十六夜(いざよい)日記」 をご紹介いたします。 この日記が書かれた背景を一口で申しますと 歌道の大家亡き後に勃発した 嫡男VS側室(年少の息子の代理) の 相続争いという…

モーパッサン「脂肪の塊」の感想~たしかにこのタイトルではヒロインが可哀想。いっその事「ムッチリ姐さん」とかにしちゃったらどうでしょう。

今回は19世紀フランス文学を代表する作家の一人 ギィ・ド・モーパッサン(1850-1893)の 「脂肪の塊」 の感想を書かせていただきます。 脂肪の塊/ロンドリ姉妹 モーパッサン傑作選 (古典新訳文庫) 作者: モーパッサン,太田浩一 出版社/メーカー: 光文社 発売日…

「滝の白糸」で知られる泉鏡花「義血侠血」について~これは師匠・尾崎紅葉とのコラボ作品と言ってもいいかも~

今回は舞台の方でも有名な「滝の白糸」の原作 泉鏡花の「義血侠血」のご紹介をいたします。 明治27年に読売新聞紙上に掲載されたこの作品は 鏡花が21歳の時の作。 彼はこの前年 師匠である尾崎紅葉の斡旋によって 「冠弥左衛門」を京都日出新聞に連載し、作…

吉川英治「松のや露八」の紹介と感想~幕末期、幕臣から幇間になった武士がいた!

今回は 私が最も尊敬している小説家吉川英治の作品 「松のや露八」のご紹介 をいたします。 昭和9年にサンデー毎日誌上で連載されたこちらの作品 主人公は幕末から明治にかけて生きた 実在の人物となっております。 その人物とは 土肥(どひ)庄二郎(1834-1903…

色男をめぐって繰り広げられる美女たちの愛憎劇~為永春水「梅暦」ワールド

今回は 江戸の天保年間に出版されて大評判となり 当時の女性達を熱狂させたという 為永春水作の人情本 「梅暦」(うめごよみ)シリーズ のご紹介をいたします。 -------------- 「春色梅児誉美」 (しゅんしょくうめごよみ) あらすじ 遊女屋「唐…

谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」の感想~結局の所にゃんこの可愛さにはかなわない!

今回は 谷崎潤一郎が昭和11年に発表した長編小説 「猫と庄造と二人のおんな」 のご紹介をいたします。 ------ あらすじ 人柄は穏やかだが、ボンヤリとしていてほとんど生活能力が無い 荒物屋の一人息子庄造。 彼は前妻の品子を離縁して 従妹の金持ち娘…

マゾッホ「毛皮を着たヴィーナス」の感想~乗せられ煽られ人格崩壊していくのがコワい!

今回は 「マゾヒズム」 という言葉の語源ともなっている レオナルド・フォン・ザッヘル=マゾッホ(1836-1895)の小説 「毛皮を着たヴィーナス」のご紹介をいたします。 あらすじ----- 青年貴族のゼヴェーリンは保養先の下宿の庭で 大理石のヴィーナス像…

作品に普遍性を持たせるためには「真善美」について自分なりの考えを深める事が大切だと思う。

普段、ぼや~っとしている私ではありますが 時折、ふとした拍子に 「文学のあるべき姿とは!?」 みたいなモードに入ってしまう時があります。 今回の私はそんな 「文学モード」に入っていますので 文学について 「これが重要だ!」 と気づいたことについて…

新感覚派の感覚には、正直ついていけない部分がある~横光利一「上海」のご紹介。

今回は 大正時代末期から昭和20年代初頭にかけて活躍し 川端康成と共に新感覚派と呼ばれた作家 横光利一の「上海」 のご紹介をいたします。 内容はざっくり言うとこんな感じ。 -------- 時は1925年(大正14年) 舞台は日本や欧米列強の植民地となって…